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2007年11月 アーカイブ

2007年11月01日

こだわり

「これからは足先だけの技術ではなく、心身を鍛えていきたいです」 これは僕が小学生の時に卒業文集で書いた1文です。

僕がプロで14年間やってこられたのはこの気持ちがあったからだと思います。
僕がずっとこだわってきたのは、強い気持ちです。そして指導者になった今も気持ちの重要性を伝えていきたいと思っています。

僕の場合、身長も低く身体能力にも恵まれなかった。それでも気持ちでは絶対に負けないというこだわりだけでプロとしてやってこられた。小学生の時に心で感じた事。それを現役が終わる時まで持ち続け14年間プロとしてやってこられた事に自信を持てました。 そして深いこだわりは、自分の自信と支えにもなるのだと今も思っています。だからこそ、選手達には小さい頃から色々な事にこだわってほしいのです。

メンタル・技術・体力、色々ありますが1つ1つにこだわりを持ってトレーニングに励んでほしいのです。 そのこだわりが多ければ多いほど、大きければ大きい程、選手として成長すると思います。 人よりこだわった事によって自信を持ってプレーでき、試合でも良いプレーを生み出してくれるのだと思います。

今僕は、指導者の立場として選手達にどうしてもこだわってほしい事があります。
それは基本技術の向上です。これは僕がもっとこだわるべきだったと14年間で1番感じた事です。
そしてそう感じさせてくれたのがジーコです。
後にも先にもジーコより基本技術の優れている人とは出会わなかった。だから彼はスーパースターだったのだと僕は思っています。スピード・パワー・スタミナ、特別なものはなかったと思います。ただケタ外れの技術をもっていました。

その技術はボールを止めたい所に止める。蹴りたい所に蹴れる。
とてもシンプルなものです。しかしこれがどんな状況でも出来るから凄かった。

わかってほしいのは、このシンプルな技術が色々な可能性を引き出してくれるという事です。
逆にこれができなければ、先に進めないのです。

この技術があって初めて想像性溢れるプレーや観客を魅了する事ができるのだと思います。
だからサッカーを本気で楽しむ為にも、トッププレーヤーになる為にも、基本技術の向上にはこだわってほしいのです。

2007年11月10日

僕が感じる世界との違い

TVでよく見る世界のスーパープレー。
あのようなプレーは失敗を恐れていては出きません。

僕自身、練習でなかなか成功しないプレーがたまに試合で成功したり、一瞬のひらめきでやったことのないようなプレーが出てきた時、全身に鳥肌が立つような幸せを感じます。
若い頃に何度かありましたが、年を重ねるたびにそのプレーは減っていきました。だんだんと確実なプレーを選んでしまうようになり、いつのまにか、チャレンジするプレーより、手堅いプレーを選ぶようになってしまいました。

引退してまだ一年も経ちませんが、失敗を恐れず、チャレンジするプレーを数多くできたらどんなサッカー人生だったのかと、ふと考える時があります。
このような経験から世界で活躍する選手との違いを僕なりに考えてみました。

世界の選手を見て感じる事は、やはりチャレンジするプレーが多いという事です。それは決して自分勝手ではなく、チームのために判断したプレーです。難しいプレーほど成功する確率は低くなりますが、それがチームのためなら迷うことなくプレーしています。
この判断こそが世界との違いだと僕は感じます。良いアイデアがあっても、それをやってみなければ良いプレーは生まれません。これは選手だけの問題ではなく、指導の仕方にも原因があると思います。

指導者が失敗した事ばかりを選手に言い過ぎたり、プレーの制限を多くしてしまえば、チャレンジするプレーはもちろん、発想まで奪ってしまう可能性があります。このような事から今教えている子供達には、まずチャレンジしたプレーに対し、それがミスであってもなるべく誉めるようにしています。それと得意なプレーはどんどんやってほしいと言っています。失敗したプレーばかりを反省するのではなく、成功したプレーが、何故成功したのかをもっと考えてほしいと思っています。

僕は以前ある指導者から、良い選手とはミスの少ない選手だと聞きました。確かに僕もそう思いますが、選手によっては、ミスをしないために確率の高いプレーばかりを選び、自分のアイデアを出せず、気付いた時には決まった事しか出来ない選手になってしまう可能性があります。それぞれの選手が感じている責任や、チームの戦術の中でも、ミスを恐れず自分の判断でプレー出来る事もとても大切な事です。

このような考え方がはたして正しいのか、正直僕には分かりませんが、選手達には、指導者に作られた選手ではなく、自分が目指す選手になってほしいと思っています。それが幸せなサッカー人生につながると僕は信じています。

2007年11月20日

臥薪嘗胆

11月3日、国立競技場。傾きかけた陽の光の差し込むピッチで、スタンドで、流した涙を忘れてはいけない…。

2007年Jリーグナビスコカップ決勝は、スタンドでもちろんフロンターレを応援しながら観戦していました。ですが、これを読んでいる皆さんもご承知のように、0-1でガンバ大阪に破れ、2000年に続いて2度目の準優勝ということになりました。

選手たちもクラブスタッフも、そしてサポーターも熱い気持ちでこの決勝に臨んでいました。ACL、リーグ戦とタイトルの可能性を失ってしまった中で、なんとしても初タイトルを川崎に、等々力に、持ち帰りたかったと思います。ですが、その強い気持ちがほんの少し裏目に出てしまっていたのかなと、スタンドで見る私の目には映っていました。

やはり決勝という舞台の持つ特別な雰囲気なのでしょうか。どこかいつものフロンターレらしくないな、と感じていた人は決して僕だけではなかったのではないでしょうか。もちろん、序盤の猛攻の中で1点でも取れていれば、まったく違った展開になっていたでしょうし、その1点がいつものフロンターレらしさを引き出してくれていたことでしょう。ですが、これが一発勝負の怖さであり、決勝戦の怖さでもあるのです。

僕も現役時代、多くのタイトルを獲らせてもらいました。プロとしては8つの勲章を獲得しました。ですが、決勝まで行きながら敗れ去ってしまったことも、もちろんありました。1997年Jリーグチャンピオンシップ、1999年ナビスコカップ、2003年ナビスコカップと、いずれも決勝という舞台で敗れてしまっています。特に1999年のときは、ロスタイムまでリードしておきながら、柏レイソルDF渡辺毅に劇的な同点弾を決められ、PKにまでもつれ込んだ末、敗れてしまいました。勝利が掌から零れ落ちるとは、まさにこのことです。このゲームのことは今でも強く印象に残っているゲームでもあります。それこそ優勝したときと同じぐらい、いやそれ以上に強い思い入れがあるゲームとなったわけです。

きっとこの前の決勝での敗戦は、選手たちの心に強く残ることでしょう。もちろんサポーターの心にも。ですが、この悔しさを忘れないということが、一番大事なのです。「臥薪嘗胆」という言葉をご存知ですか?中国の故事から生まれた言葉ですが、敗れた悔しさを、薪の上で寝て痛い思いをしたり、苦い肝を嘗めることで忘れないようにしたという故事から、敵を討とうとして苦労し、努力することや、目的を達するため苦労を重ねることを意味しています。
「臥薪嘗胆」
今のフロンターレに関わる全ての人びとにとって、決して忘れてはならない言葉だと思うのです。

僕が2004年1月にフロンターレのクラブハウスに入ったとき、ミーティングルームに張ってあった、この「臥薪嘗胆」の張り紙に釘付けとされました。「Mind1」という言葉を生み出した2003年の「勝点1の悔しさ」を忘れないという意味で、武田社長がシーズンインの挨拶に贈ってくれた言葉でした。

でもこの言葉は僕にとって初めてではありませんでした。実は高校選手権を夢見ていた清水東高時代、この言葉は僕と常に一緒にあった言葉でした。選手権もインターハイも県予選決勝、それも延長まで行って敗れる(それもいつも清水商業に)という悔しさを、何度も味わっていたのです。そうしたこともあって、僕のサッカー部の合言葉は「臥薪嘗胆」でした。まあできすぎた話ですが、3年最後の選手権では県予選を突破して出場したのですから、この「悔しさの持続」のエネルギーは身を持って体験したことでもありました。そうしたこともあってこの言葉は、僕の心にスーッと染み入ってきたのです。

そう考えてみると2004年は、チーム全体、サポーターも含めたクラブ全体がこの「悔しさの持続」を成し遂げたからこそ、ぶっちぎりでのJ2優勝、そしてJ1復帰があったのだと思います。僕自身は2003年の悔しさを経験していなかったのですが、選手たち、そしてサポーターから「決して同じ轍を踏まない」という強い思いを感じていたのを覚えています。

もう、ナビスコ決勝は終わりました。決してその結果を取り替えることはできません。次に進んでいくしかないのです。この「臥薪嘗胆=悔しさの持続」をどれだけできるかにかかっているのだと思います。あの傾いた陽の差す国立のピッチから表彰式を見る悔しさを、決して忘れてはなりません。
その思いを具現化すべく、フロンターレは素晴らしいリスタートを切りました。直後の水曜に行われたセレッソ大阪との天皇杯4回戦は3−0の圧勝でした。選手たちは、あの悔しさを晴らす場を、心底求めている証だと思います。

「2007年11月3日を忘れない」
再度、決勝の舞台に立ち、あの表彰台の上で優勝カップを掲げる日が来るまで…。

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