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OB'sコラム

Ready,Betty,Go!

2007 / file03

セットプレー

久野智昭
Kuno,Tomoaki

1996年、東京農業大学よりフロンターレの前身、富士通川崎に加入。本職のボランチに加え、サイドもこなすユーティリティープレーヤーとして9年の長きにわたりフロンターレを支える。2005年12月、惜しまれつつも引退。現在、フロンターレ強化部スカウト担当として人材発掘に邁進中。
1973年9月25日生まれ、静岡県出身。170cm、68kg。

今回はセットプレーの重要性について書いてみたいと思う。
現代のサッカーでは、組織的に守備してくるチームが多く、流れの中から点を取ることが昔に比べて難しくなっている。よって、セットプレーの重要性が高まっている。

例えば、日韓ワールドカップでのセットプレーの得点は28%、ドイツワールドカップは36%と増えている。最近では、ボールの改良によって「ブレ球」と呼ばれるシュートが生まれるなどあらゆる変化をもたらしゴールが生まれている。その「ブレ球」を子供達がよくマネをするのをよくみかける。いろいろな種類のキックに興味を持ちチャレンジすることはとても大切なことだと思うが、足への負担などを考えると少し怪我など怖い気がしている…。

ここで、自分が1999年、最初にJ1に昇格したときにセットプレーのキッカーを任されていたときのことを少し書いてみようと思う。この年は、すべてのセットプレーは自分に任されていた。この当時の監督に信頼を受けているという思いで自信を持って蹴っていた。その中で、フリーキックのトレーニングをして、結果、直接フリーキックで5ゴールあげることができた。

自分が、まず蹴る前に考えることは、ピッチ状態、雨でボールが水を含んでいるか、審判が壁との距離をどのくらいとってくれるか、壁の高さ、壁のどの場所が低いのか、キーパーのポジションはどうなのかなどを考え、イメージした軌道、角度、スピードを頭に刻みこませる。そして、普通GKとの駆け引きのために左右のキッカーを並べるが、自分は1人集中したいために誰も隣りには立たせなかった。

フリーキックで自分が重要視していたのは、助走の距離と角度だった。ゴールまでの距離と角度によって助走の距離と角度を変えて強いボールを蹴るという自分なりの蹴り方をトレーニングの中から身体で覚えさせゲームで蹴っていた。 しかし、後半になって疲労がたまりパワーがなくなってくると自分の思っていた角度や助走ではボールが思っていた以上に浮いてしまったりして、思うようなキックができないこともありました。それも試合の中で蹴っていくことで経験し、プレッシャーにも慣れ自信を持って蹴っていた。

これからのサッカーでは、より優れたキッカーがあらわれてくると思う。そうするとゴール前でファールを与えると失点という場面が増えてくる。攻撃側はそれを、利用してファールをもらいにいったりシュミレーションする選手がでてきたりし、守備側はファールに過剰に敏感になり激しくボールを奪いにいけなくなったりする可能性もある。そうなるとサッカー本来の面白さが少し消されていくようなきもしている。もちろんファールをもらってすばらしいフリーキックを見てみたいが、やはり個人的には流れの中からのゴールというほうがサッカーらしいと僕は思う…

でも、これから先、更なるボールの改良によりセットプレー最大の武器になることは間違いない。優れたキッカー一人で試合を決められる時代がくるかもしれない。

2007年08月10日 久野智昭

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