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OB'sコラム

over the pitch

2008 / file05

U-16秋田国民体育大会 エピソード4(Final)

大場健史
Oba,Kenji

1967年8月14日生まれ、神奈川県出身。 Jリーグ創設時の鹿島アントラーズのメンバーとして活躍。その後、柏レイソル、当時JFLの川崎フロンターレに移籍し、闘争心あふれるアグレッシブなプレーでチームを鼓舞し続けたDF。引退後、U-13からU-18まで幅広い年代の強化・育成に携わり、子供たちからの信頼も厚い。現・川崎フロンターレU-15監督。

神奈川の勢いは止まらない、準々決勝で兵庫県を1-0、準決勝で宮崎県を3-0で倒し、決勝の舞台へと駒を進めた。選手のモチベーションは非常に高い。決勝の相手は東京都、以前トレセンリーグで負けている相手だ。このリベンジに選手たちは燃えている。

決勝当日の朝、私は朝早く目が覚めたので他のスタッフがまだ寝ているところを邪魔しないで、トレーニングウェアに着替え、朝のランニングに行った。外はうっすらと明るくなっていた。ランニングを40分走り宿舎に戻ると選手たちが朝の散歩に出るために玄関前に集合していた。選手たちの表情は非常に明るい。散歩を終え、朝食を済ませ、出発の準備に備えた。グランドでは、決勝を観に多くの観客が足を運んでくれた。選手たちはいつものようにグランドをチェックし、各々のスパイクを磨きキックオフの時間を待っていた。

選手たちに伝えた事は各ポジションへの要求とチーム戦術、そしてどれだけ相手より勝ちたい気持ちがあるか。選手たちは必ずやってくれると信じている。

試合が始まった。神奈川はグランド広く使いボールを動かした、サイドから有効に崩すがなかなかゴールまで行かない。東京も必死になってゴールを守る。前半0-0。後半はメンバーを変えずに挑んだ。東京は前半とは違い前に前にボールをけるように仕掛けてきた。
後半15分、前線に放り込んだボールをディフェンスがクリア、そのボールを拾われ2列目から飛び出してきた選手にスルーパスを出し神奈川GK奥山(川崎F)と1対1。ボールに食らい付くがかわされ左隅に決まり東京が先制。私はメンバーを代え、攻撃的な選手を入れて猛攻に出たが、なかなかゴールを決めることができない。負けているときは時間が速く過ぎてしまう。私は時間が無いので、前線に高さのあるDF大和田(川崎F)を上げパワープレーに出た。しかし点を入れることができない。そして試合終了のホイッスル。
選手たちはグランドに倒れこんだ。全員が涙を流し、なかなか立ち上がれない。私自身その場から動く事が出来なかった。本当に一瞬の隙を疲れた失点。選手たちは守備面でしっかりと対応していたが、サッカーは何が起こるかわからない世界。しかし選手たちは非常に良く戦ってくれた。
U-15の時から2年間一緒にプレーして戦術面、メンタル面で色々なことを要求し、時には厳しいことを言ったりもしたがそれでもみんな一つの目標に向かって精一杯努力した。これからはそれぞれ自チームに戻るが、この経験を活かし未来に向かって頑張ってほしい。本当にありがとう。

2008年11月30日 大場健史

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