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大場健史 アーカイブ

2008年03月01日

U-16秋田国民体育大会 エピソード1 

「立ち上げ」

2006年2月に神奈川県サッカー協会の先生方から打診がありました。それは「来年の(2007)秋田国体に向けて監督としてU-15(中3)セントラルトレセン(神奈川トップレベルの選手たち)を立ち上げてほしい」との事でした。

国体は私自身高校時代に神奈川県代表として経験がありました。なぜU-15の時からスタートしなければならないか、以前国体は高校3年生のカテゴリーの中から県を代表とする選手が出場していましたが、それではユースレベルは上がらない、大切な高校1年生の時期に拮抗としたゲームを経験することで県のレベル、全国のレベルが上がってくる、日本サッカー界そして世界へと繋がるすばらしいプレーヤーを育てることができる、だからU-15の時期に(2年間を掛けて)選手を強化していく、このような機会に携わることが出来て本当に光栄だと思っています。

そしてもう一つは、高校時代に色々なところで先生方にお世話になったこともあり、いつか恩返しをしたいと思い直ぐに返事をしました。ユース年代を指導することで、今現在どのような状況で、どのくらいのレベルなのか、自分が指導しているジュニアユースの選手たちに伝えることができる。「全国のトップレベルのユース選手たちはこれが出来なければだめだ、ここから各代表の道へと繋がる可能性がある。」と選手たちも把握し、目標となり、日々のトレーニングにも更に向上心が芽生えてくる。

スタートは選手の選考から始まり、中体連、Jクラブと選手をピックアップしました。自分の中での理想像は個人戦術と多くのアイデアがあり一番大切な戦う意欲のあるプレーヤーを集めることです。しかし指導していくうちに何かが足りなかった、個人での突破、守備は非常に良いのだがグループとしてチームとして何をしたいのか、何を伝えたいのかがハッキリ出来ていない、失点されてもお互いが何も要求しない、タダ漠然とプレーしているシーンが多くあった。これではどんな大会にも簡単に負けてしまう、彼らに要求したことは、「何の為にこのピッチにいるのか、負けて悔しくないのか、目的は、目標は、自分自身をもっとアピールしなければいけない、失敗したら引きずらずに直ぐに修正しなければいけない、それが出来なければここに居るな」と怒鳴ったこともありました。 そこで合宿やトレセンリーグなど限られた時間の中で各ポジションごとにミーティングをさせました、コミュニケーションへの積極性がなければ各代表候補に今後選ばれても自分をアピールできずに終わってしまう。

ここに面白い台詞があります「あしたやろうはバカやろう」耳にした人も居ると思うが、テレビドラマの中にでてきた台詞、非常に印象に残っています。これが全てではないけれど、この意味は私なりに思うには、「あしたやろう」はその日に100%の力を出していない、「失敗してもいいや明日があるから」とサッカーの世界ではゲーム中、常にめまぐるしく状況が変化します。誰でもミスはあるが、次ミスしない為に瞬時に考えてプレーしなければならない。トップレベルの大会で、一つのミスが失点に繋がる、多ければ試合に負けてしまう世界。上に行けば行くほどにもっと厳しさが増してくる。監督によっては使えない選手は次の日、試合に出場すらできなくなる、チームに居られなくなる、そういう世界だ!だから常に危機感を持ちながら、100%で悔いの無いように日々努力しプレーしなければ絶対に個人のレベル、日本のレベルも上がらない、世界のトップ10なんて遠い目標に過ぎない、だからこそ選手もスタッフも命がけでやらなければいけない、常に危機感を持ちながら。

U-15トレセンリーグでは、神奈川県は優勝することができました、限られた日数、時間の中で選手、スタッフ共に100%のプレーで臨んだからと思います。

この気持ちを忘れずに次の目標であるU-16関東大会を勝ち抜き、必ず本大会出場を決めたいと思います。

2008年05月01日

U-16秋田国民体育大会 エピソード2

「ミニ国体・そして秋田へ」

今年は、なんとしてでも本大会に出場したい。
そのためには、8月の関東ブロック大会(ミニ国体)を勝ち抜かなければいけない。この大会は関東から4チーム(8チーム中)が出場でき、一発勝てば本大会へ、負ければ敗者復活戦へ回らなければいけない。

神奈川県の対戦相手は千葉県。千葉はタレント的にはかなり多くJクラブ、高体連と質の高い選手が多く、フォワードに190cmの選手がいて、そこを基点としての攻撃が多い。われわれは、その日に向けての準備を進めた。4月、5月に高校2年生の早生まれの選手たちをセレクトし(国体は早生まれの出場が可)月2回のトレーニングそしてゲームをこなしていった。
去年の神奈川のゲームを分析し、勝つためには何をすればいいかスタッフでミーティングをした。攻撃は一人一人が多くのアイデアを持ち、ボール支配率は非常に高いのだが、守備が不安定でカウンターでの失点が多かった。トレーニングは攻撃よりも守備重視で多くの時間を費やした。彼らに要求したのは、「奪われた瞬間に誰が最初にボールにアタックに行くかここを曖昧にすると失点をしてしまう、だから常に頭を働かし次への予測をしなければいけない。」8月は猛暑の時期で、普通にしていても頭がボーッとし集中力が無くなってしまう、だからプランをしっかりとたてなければ勝つことが出来ない。トレーニングとゲームをこなしていくうちにプレーの質は非常に高くなってきた。選手間でのコミュニケーションも多くお互いが何を要求しゲームを支配していくのか明確になってきた。全て調子いいがこうゆうときこそ落とし穴があるので気が抜けない。

ミニ国体はそんなに甘くない、一発勝負、猛暑、プレッシャーとの闘い。彼らに話したことは、「プライド、ポジティブ」。チームの代表として、神奈川の代表としてのプライドとこのピッチに立つことに感謝すること、しかしそれはサッカー人生の一つの通過点に過ぎない、君たちはここから日本代表そして世界に行かなければいけない、だから立ち止まってはいけない、前に前に進むべきだと伝えた。
今年のメンバーは非常に戦術的な理解力があり能力も高い。チームでやることに素早く反応しゲームで表現してくれる。そして何よりも戦う意欲がある。全国にはうまい選手はたくさんいるが貪欲に戦う選手は少ない、これではただのサッカー選手で終わってしまう。サッカーで飯を食うなら、しっかりとした目標そして強い意志を持ちプロで活躍できる選手にならなければいけない。彼らにはその可能性がある。だからメンバーとして選んだのだ。

2007年8月21日、いよいよ関東代表を決める一戦が始まる、ここで必ず勝って本大会へ行きたい、この気持ちは両チームとも同じ、しかしどれだけその気持ちを多く持ち、結束力を高めることが出来るかが勝利へのカギとなるか。私たちは必ず勝つ、勝つためにメンバーを決め、勝つためにトレーニングをしてきた。

場所は埼玉スタジアム第二グランド。天然芝のピッチコンディションは最高の状態、気温は35℃、グランドレベルは40℃に達するだろう。しかし負けるわけにはいかない。
更衣室の中では選手たちがミーティングの時間まで色々なことをやっていた。音楽を聴く者、スパイクをチェックする者、入念にストレッチをする者、仲間と話している者、目を閉じてイメージトレーニングをしている者(寝てはいないよ!)。この光景は現役時代を思い出す。私も同じ事をやっていた(懐かしい)。
全体のミーティングでは、選手に伝えたことは、「今までやってきたことを、どれだけ表現できるか、そして強い気持ちを相手より多く持つことが出来るか、そして一つになれるか。この3つが今日の試合のポイントだ」と。彼らは必ず出来ると私は信じていた。

キックオフの時間が刻一刻と迫ってきた。選手のリラックスした顔から勝負の顔に変わってきた。手をつなぎ円陣を組み、目を瞑りゲームのイメージを最大限に頭にやきつけ、そして気持ちを一つにピッチに入っていった。
AM10:00。前半がスタート。さすがにピッチ場は暑い、40℃はいっていると思う。そんな状況でも選手達は一つのボールを懸命に追いかけていた。スタートから2分。横浜FMユースのFW榎本が味方のスルーパスから相手DFの裏を取りキーパーと1対1。冷静にゴール右隅に決め先制点を決めた。選手、スタッフみんながこのゴールに喜んだ。その後は、千葉県の190cmのFWを基点に攻めてきたが、そこは川崎FユースのDF大和田、セカンドボールに対して川崎FユースのMF岩渕が対応し相手の攻撃を阻止していた。われわれの攻撃は、グランドを広く使い、テンポよくボールを動かし、サイドからの攻撃を多くして相手のゴールに襲い掛かった。狙い通りに前半21分に日大高校の早生まれの2年生MF大貫が豪快に決め2点目。同じくMF大貫が33分に3点目を決め前半を折り返した。

ハーフタイムの更衣室。選手の顔には安心感が見えた。選手たちは「これで決まった」。「千葉県はぜんぜんだね」と話している選手。私は選手たちの話している会話を聞いて激怒した「お前らサッカー甘く見るな。まだ終わっていない。ひとりでもそんな気持ちがあるならそこから穴が空き、攻められ崩され失点してしまう。今までやってきたことが全て無駄になる、それでもいいのか、終了のホイッスルがなるまで、体がぶっ倒れるまで走り通せ、ボールを追い掛け回せ。」と私は言葉に力が入った。選手たちの顔は、硬直していた。キャプテンである横浜FMユース中田がみんなに声をかけ「スタート時の気持ちで行こう」とみんなを盛り上げた。

10:50、後半スタート。千葉県は攻守共に激しかった。必死になって神奈川のボールを奪い、早くゴール前に運んできた。そして後半4分神奈川県のDFのクリアーミスを拾いシュート、失点。スコアは3-1。まだ千葉県の猛攻は続く。なかなか神奈川県のリズムが作れない。そして9分にサイドから崩されゴール前にクロス、中で競り合ったが相手が一歩早く触りゴール。スコアは3-2。
サッカーは何が起こるかわからない世界。だから見ているほうは面白いかも知れない。しかしピッチ上は命がけ。これ以上の失点はしたくないので川崎FユースGK奥山とDF陣に「マークをしっかり付け」キャプテンに「あわてるな、しっかりと声を掛け合え、ボールを動かせ」とコーチングをした。彼らには修正する能力はあるので必ずリズムを変えられると思った。それから10分間は非常に激しいゲーム展開となった。相手のDFに疲れが見えてきたところに私は選手の交代を命じた。横浜FMユースの俊足、塩田を投入し彼には「相手DFはかなり疲れが見えてきた。背後を多く狙え」と伝えてピッチに送った。彼は持ち前のスピードを活かし、相手DF陣を翻弄した。そして25分にFWの榎本が個人技で相手DFを抜き去りゴール。スコアは4-2とした。千葉県のリズムが落ちてきた。そして30分、FW榎本がこの日3点目となるゴールを決めてくれた。この瞬間はスタッフもガッツポーズを披露。残り10分、うまく交替選手を入れながら時間を使った。そして試合終了のホイッスル。
スタッフもサブのメンバーも大喜び。われわれは念願の本大会出場を手にしたのだ。結果は大差だが、内容は苦しかった。よく選手たちは最後まであきらめないで頑張ったと思う。一瞬緩んだメンタルをしっかり自分たちで修正して得た勝利。やはり彼らを選んでよかった、誇りに思う。

いよいよ1ヵ月後の9月29日。秋田国体がスタートする。この大会は、トーナメント方式で一発負けたら神奈川に帰らなければいけない。最後の決勝まで行くには、もう一度課題を修正して全員の心を一つに準備をしていく。

2008年07月10日

U-16秋田国民体育大会 エピソード3

「秋田へいざ出陣」

いよいよ秋田国民体育大会が始まる。
私は選手たちより一足先に試合会場である秋田TDKグランドと宿泊先である鳥海荘をチェックする為に出発した。ジュニアユースのトレーニングが終わり川崎を出たのが午後9時近く、道のりは長いので途中山形で一泊して秋田に入ることにした。高速を走っているときに色々と考えた。トーナメントなので1発負けたら神奈川に帰らなければいけない。昨年の神奈川は2回戦で敗退したことを考えるとどうしても負けるわけにはいかない。必ず決勝まで行き優勝をして帰ってきたい。タレント的には申し分ない、戦術理解度も高い。とにかく彼らに伝えることは、常にポジティブにプレーすること、ポジティブにコミュニケーションをとること、100%の力を発揮すること。

この3つを伝えることに私は全力を尽くすと誓った。フロンターレ号(アルファード)は東北道を順調に北上した。この車は高速安定性が非常に高く運転していても疲れない、エンジンもパワフルでストレスを感じることがない。ロングドライブに最適な車だ。宮城県に入ったあたりから、普通車の数が減り、逆に大型トラックの量が増えてきた。都心で見る車より外見が派手。とにかくボディーのあちらこちらにイルミネーションが光り暗い高速道なのでひときわ目立っていた。車は順調な走りで東北道村田ICから山形自動車道に入り途中の山形北ICで降り一泊することにした。時間はPM11:45。ナビで調べて近くのビジネスホテルに泊まることにした。部屋に入り、疲れがどっと出たので、シャワーも浴びずにそのままベッドに入り熟睡。翌朝6:00に目が覚めて、暑いシャワーを浴び、一応ひげも剃った。その日は13:00から監督会議があるのでビシッとスーツに着替え、朝食を済ませ、秋田に向けてフロンターレ号を走らせた。山形自動車道の終点である酒田みなとICに到着。そこからは一般道。左側に日本海を眺めながら車は北上しやっとのことで秋田県に入った。片道の距離550km。途中のガソリンスタンドで給油した時にスタンドの若い従業員に「サッカーのフロンターレだ、何処にいぐ」と秋田弁でそのあとが何を言っているのか解からずに「わか杉国体に行くんだよ」と一言。「がんばれ」と励まされた。昔と違って今フロンターレは全国に名前が知られている。非常に嬉しいこと。私はこのクラブを誇りに思う。海岸線を走ること1時間。大会開催地である秋田県仁賀保市に到着。やはり国体とあって街のあちらこちらに大会イメージキャラクターのスギッチ人形、ポスター、旗などが飾ってあった。「いよいよ明日から本番が始まる」と私自身気合も十分。試合会場である秋田TDKグランドは敷地が広く、その中にサッカー場、野球場、テニスコート、室内プール、多目的広場などがあり。サッカー場は天然芝2面でコンディションも最高である。このピッチで選手たちがどんなパフォーマンスを披露してくれるか非常に楽しみだ。監督会議を終え宿泊先である鳥海荘に向かった。宿までの道のりは山を二つ越えなければいけないのでかなりの時間が掛かった。山の頂上まで来るとそこから観る日本海はイメージしていた荒々しさとはかなりかけ離れていて本当にすばらしかった。この景色を最後の決勝まで見たいと誓った。宿泊先に着くと選手たちが丁度到着したところだった。疲れた表情は無く、非常にリラックスした状態で各部屋に入っていった。

翌日14:00からのトレーニング、動きを見れば選手のコンディションが上がってきているのが解る、明日の愛知県とのゲームが楽しみだ。夜のミーティングでは選手に伝えたことは「君たちは神奈川の代表としてこの舞台に来ている、選ばれなかった選手たちが多くいる中で私は16名を選んだ、最高の選手たちを選んだ、だから君たちは必死になって戦わなければならない。サッカー人生の中で一つの通過点に過ぎないが、それを良くするも悪くするも君たち次第、色々な人たちが君たちを見に来てくれる。力を発揮できれば代表の道にも繋がる。だから悔いの無いように精一杯やるしかない。私は君たちを信じている。」と話した。

そして試合当日。私は先にグランドへ向け出発した。グランドに着くと多くのギャラリーがピッチの外を埋め尽くしていた。サッカーは本当に人気のあるスポーツである。試合開始まで90分。ミーティングの時間だ。私はあまり難しい話はしないシンプルに彼らが理解できるように話すだけ、彼らは話せば直ぐに理解し実行してくれるから。後は選手がピッチで考えてプレーしてくれる。アップも終わり試合開始まで10分。皆で手をつなぎ一つになった。9月30日、14時40分キックオフ、対戦相手は愛知県。試合開始から2分で相手ゴールキックからDFの小椋(川崎F)がヘディングで前線にフィード、相手のDFラインの裏にボールが流れ、すかさずそのボールを狙いダッシュしたFW榎本(横浜FM)がキーパーと1対1になり左隅に決めた。この大会は35分ハーフなので先制点が非常に大事。それを見事にやってのけた。そして神奈川の攻撃は続く11分にMF関原(横浜FM)からのパスを受けたFM榎本が2点目をゲット。さすが神奈川ナンバーワンのストライカーだ。23分に1失点を食らったが、全員はあわてることなくゲームを支配。後半20分にこの日3点目をFM榎本が決めハットトリック、そしてダメ押しは25分にMF小野(横浜FM)が冷静に決めて試合を決定づけた。

スコアは4-1の勝利。すばらしいスタート。しかし失点がカウンターからだったので、そこを修正しなければならない。2回戦目は、福岡県。この試合も前半からグランドを広く使い中盤を支配した、12分にMF小野が決め先制。17分に相手のファウルでPK。冷静にMF古林(湘南)が決め2点目。選手の中で余裕が見えてきた。嫌な予感がした。ゲームの中で味方とのパスミスが徐々に出てきて簡単なシュートも外し3点目が取れない状態。福岡県もあきらめずに貪欲にプレスを掛けてきた。「このままでは逆転される」と頭を過ぎった。
なんとか前半は2-0で折り返し。私はハーフタイムに選手に怒鳴った。「相手を甘く見るな、簡単なミスが多すぎる、これでは逆転されるぞ!去年もここで終わっている、お前らいいのか、こんなところで終わって、本当に上を目指したいのか、プロになりたいのか、そんな甘い気持ちでプレーしていたらこの先は無いと思え。」と選手はびっくりした顔で私を見ていた。

後半のスタート。やはり福岡県は前からプレスを掛けてきて1点を取ろうと必死できた。それをDF大和田(川崎F)、GK奥山(川崎F)を中心に必死で防ぐ。ポストに当たったりと危ないシーンもあったが、何とかこのゲーム2-0でものにすることができた。もしあの時に失点されたらリズムは完全に相手に変わっていたに違いない。本当に勝って良かった。夜のミーティングで選手たちに今日のゲームを分析してもらった。返ってきた言葉が「相手を完全に舐めていた」と。私は選手たちに「サッカーは11人でプレーするもの。1人でも欠ければ、そこから穴が空き、攻められ、失点される。そんな気持が全員であれば優勝どころか決勝に進むことすら出来ない。もう一度原点に返って考えてほしい。何のためにこの舞台に立つのかを」。

翌朝6時に目が覚めて、部屋の扉を開けると目の前の鳥海山の美しい景色が見えた。「今日の試合も必ず勝つ」と願った。相手は兵庫県。ガンバ大阪、ヴィッセル神戸などJ下部でプレーしている選手が多く、タレント的にもレベルが高い。この試合を勝つことで決勝が見えてくると思った。チーム一丸となって、戦っていきたい。

2008年09月10日

U-16秋田国民体育大会 エピソード4

チームが一つになった勝利

「あと2つ勝てば決勝の舞台に行ける」。食事のときも、移動中でも今日の対戦相手の事ばかり話している。選手の勝ちたい意識は非常に高い。スタンドではすでに神奈川県対兵庫県の試合を観戦に700人近くの観客がもうすでにスタンドを埋め尽くしていた。

地元の小学生が両チームの旗を持ち、選手の入場を待っていた。ミーティングでは、昨日の反省点、今日のゲームの入り方、戦術、そして最後まであきらめない強い意志で戦うことを話した。ピッチ上は非常にコンディションもよく芝が太陽の光で緑に輝いていた。

12:20前半がスタート。神奈川県はテンポ良くボールを動かしグランドをうまく使い攻撃をしていくが、なかなか相手のバイタルエリアに入っていけない。兵庫県はフォワードからのプレスが無くしっかりと3つのラインを保ちゾーンディフェンスで対応。奪ったボールをカウンターでの狙いだった。前日の試合とは内容が違いかなり神奈川は研究されている。神奈川はボールを回しているというより、回されている状態。前半はシュートが2本だけ完全に相手のペースにはまっていた。

ハーフタイムに「相手の守備陣を打ち破るには、縦のポジションチェンジを多くやり、空いたスペースに3人目が入ることを要求した。後は絶対にあきらめない。こんなところで終わらない。」14:10後半戦スタート。ミーティングで話したことを選手たちは流動的にトライしてくれた。得点が生まれたのは後半6分。右サイドのスペースをサイドバックの友澤(桐光学園)が抜け出し深いとこからクロス、中に詰めていたMF古林翔太(湘南ベルマーレ)がヘディングでゴールを決め先制点をとることができた。選手、スタッフは大喜び。ここから兵庫県の猛攻がはじまる。前半とは逆に前線からボールを奪いにきた。「マークをしっかりしろ、あわてるな、声を掛け合え」と選手たちに伝えた。神奈川県のDF陣はGK奥山(フロンターレ)を中心に捨て身のディフェンスでゴールを守った。
次の瞬間チャンスがうまれた。後半27分、自陣ゴールまえでDF大和田(フロンターレ)がボールを奪い前線にフィード。トップでいつもチャンスを狙っていたFW榎本(マリノス)が前がかりになったDFの裏を付き絶妙なタイミングでボールをコントロールしGKとの1対1をしっかりと決めスコアを2-0にした。パス1本でのゴール。すばらしいゴールだった。残り5分、兵庫県もいくつものチャンスをつくるが、一つになったチームを破ることは簡単には出来なかった。そして試合終了のホイッスル。

グランドで倒れこむ選手が多い中、神奈川の選手たちは皆で抱き合い勝利を分かち合った。試合を重ねることで、選手1人1人の絆がでてきた。ゲームは当然勝ち負けがあるが、勝つことで自信が付く。勝つことで次のステップが生まれる。負けたら何も無いと思え。だから絶対に負けたくない強い意志を持ってグランドで戦わなければならない、日本人に足りないところは勝利への執着心を常に持つこと、選手も指導者も!

“あと2試合で優勝だ”気合入れて頑張るぞ!

2008年11月30日

U-16秋田国民体育大会 エピソード4(Final)

神奈川の勢いは止まらない、準々決勝で兵庫県を1-0、準決勝で宮崎県を3-0で倒し、決勝の舞台へと駒を進めた。選手のモチベーションは非常に高い。決勝の相手は東京都、以前トレセンリーグで負けている相手だ。このリベンジに選手たちは燃えている。

決勝当日の朝、私は朝早く目が覚めたので他のスタッフがまだ寝ているところを邪魔しないで、トレーニングウェアに着替え、朝のランニングに行った。外はうっすらと明るくなっていた。ランニングを40分走り宿舎に戻ると選手たちが朝の散歩に出るために玄関前に集合していた。選手たちの表情は非常に明るい。散歩を終え、朝食を済ませ、出発の準備に備えた。グランドでは、決勝を観に多くの観客が足を運んでくれた。選手たちはいつものようにグランドをチェックし、各々のスパイクを磨きキックオフの時間を待っていた。

選手たちに伝えた事は各ポジションへの要求とチーム戦術、そしてどれだけ相手より勝ちたい気持ちがあるか。選手たちは必ずやってくれると信じている。

試合が始まった。神奈川はグランド広く使いボールを動かした、サイドから有効に崩すがなかなかゴールまで行かない。東京も必死になってゴールを守る。前半0-0。後半はメンバーを変えずに挑んだ。東京は前半とは違い前に前にボールをけるように仕掛けてきた。
後半15分、前線に放り込んだボールをディフェンスがクリア、そのボールを拾われ2列目から飛び出してきた選手にスルーパスを出し神奈川GK奥山(川崎F)と1対1。ボールに食らい付くがかわされ左隅に決まり東京が先制。私はメンバーを代え、攻撃的な選手を入れて猛攻に出たが、なかなかゴールを決めることができない。負けているときは時間が速く過ぎてしまう。私は時間が無いので、前線に高さのあるDF大和田(川崎F)を上げパワープレーに出た。しかし点を入れることができない。そして試合終了のホイッスル。
選手たちはグランドに倒れこんだ。全員が涙を流し、なかなか立ち上がれない。私自身その場から動く事が出来なかった。本当に一瞬の隙を疲れた失点。選手たちは守備面でしっかりと対応していたが、サッカーは何が起こるかわからない世界。しかし選手たちは非常に良く戦ってくれた。
U-15の時から2年間一緒にプレーして戦術面、メンタル面で色々なことを要求し、時には厳しいことを言ったりもしたがそれでもみんな一つの目標に向かって精一杯努力した。これからはそれぞれ自チームに戻るが、この経験を活かし未来に向かって頑張ってほしい。本当にありがとう。

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