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OB'sコラム

Soma's Eye

2006 / file02

Vamos Jogar mais

相馬直樹
Soma,Naoki

清水東高、早稲田大学を経て1994年、鹿島アントラーズに加入。その後、2002年、東京ヴェルディ1969、2003年鹿島アントラーズを経て、2004年、川崎フロンターレに加入。豊富な経験値でJ1リーグ昇格を支え、2005年12月引退。現在、川崎フロンターレ・クラブアシストパートナー。
国際Aマッチ通算59試合4得点。1971年7月19日生まれ、静岡県出身。175cm、72kg。

先日初めてフロンターレ試合の解説をしました。4月16日のJリーグ第8節対大宮アルディージャ戦です。試合の方は序盤こそ少しもたついたところがあったものの、20分過ぎからは圧倒的に我らがフロンターレペース。そこから先制するまでに時間がかかってしまったのですが、後半17分に箕輪の今季初ゴールが出るとあれよあれよと3得点。その直後に与えてしまった1点はちょっといただけませんでしたが、全体的にはすばらしい内容。開幕戦以来となるホームでの勝利を見届けることができました。久しぶりに訪れた等々力競技場は満員とまではいかないまでも、ようやく暖かくなってきた陽気もあってかまずまずの入り。そしてあの“Gゾーン”の盛り上がり、雰囲気の良さも健在で、我が家に帰ってきたかのような気持ちになりました。

そんなスタジアムで向島さんと久しぶりにお会いしました。向島さんといえば交互にこのOB'sコラムを担当しているのですが(ベティも忘れてないですよ)、そのコラムの中での向島さんの『愉しんで!』という内容にとても共感できることが多かったので、その楽しむということについて今回は書きたいなと思います。

その『Tatsuru's Check』の中でトリノオリンピックでの荒川選手のことを取り上げていたのですが、楽しむ姿勢というのはスポーツ全般において実際にとても重要なことだと思います。国のためとかそういったことは抜きにして、まず自分が楽しむということ。そもそもの話ですが“スポーツ(sport)”という言葉には“遊び、楽しみ”といった意味があります。例えばサッカー、フットボールというものは元々大衆の娯楽でした。プレーすることにおいても見ることにおいてもです。この“プレーする(play)”という言葉にも“遊ぶ”という意味があります。また試合のことを“ゲーム(game)”とも呼びますよね。“ゲーム(game)=遊び”でもあります。実はスポーツというのは遊びであり楽しむべきものなのです。

観戦する皆さんにとってのいいゲームというものにはふたつの要素があると思います。選手たちが一生懸命プレーする姿というのは心を打つものですね。まずはこういったピリピリと緊張感のある試合がひとつ。そしてもうひとつにワクワクする試合というのがあると思います。常にアイディアを駆使し、次にはどんなプレーをしてくれるんだろうと思わせてくれるゲームです。こうしたゲームには選手たちに相手をやっつけるアイディアが溢れ出てきます。「こんなフェイントで抜いてやろう」とか、「こんなパス通されたら相手は嫌がるだろうな」といったアイディアです。こういったものは楽しんでいるからこそ出てくるものだと僕は思ってます。選手としてもサポーターとしても、緊張感とワクワク感が程よくブレンドされた試合というのは最高のものだと思います。

そうした楽しんでプレーするということが身に付いているのがブラジル人選手です。彼らはどんなにプレッシャーをかけられようともビビりません。そこをこじ開けてやろうとします。僕はプロ生活12年間をずっとブラジル色の濃いクラブでプレーしてきました。その中で感じたことのひとつに、ブラジル人はミスを怖がらないということがあります。さらには自分がミスしても次にまた自分によこせと周りに要求できる強さ、図太さもあります。普通上手くいかなくなるとどうしても消極的になり、自分からボールを触りにいくことができなくなるものです。僕も現役時代、何度もそういうことがありました。しかし彼らは違います。何回失敗しようとも自分で相手をやっつけてやろうとするわけです。自分がプレーするのです。自分で相手をやっつけようとするのです。

昨年まで一緒にプレーしていたアウグストもそうでした。明らかにコンディションが良くないという時でも自分からフェイントかけて勝負して、ボールを取られても取られても仕掛けて、最後には一発得点に絡んで結果を残す。サッカーに対する姿勢です。怖がらないで、楽しんで、アイディアを出すのです。多くのブラジル人監督とも一緒に仕事しましたが「自分からプレーしなさい」ということをよく言っていたのを思い出します。それから「自分のパーソナリティを出せ」とも。きっとそういうことを重視しているし、そうした姿勢が身体に染み付いているのでしょう。

そういった意味では先日のフロンターレのゲームは見ていて楽しい試合でした。ワクワクさせてくれたと思います。みんなが仕掛けていって、たくさんのアイディアがピッチの上に散らばっていました。フロンターレの等々力でのホームゲームでは、ワクワク感で盛り上がって勝つことが、僕がいたころからも多かったと思います。きっと選手もサポーターも「ともに楽しもう」という気持ちで戦いに臨んでいるのです。それがあのスタジアムでのワクワク感につながっているのではないでしょうか。

2006年04月29日 相馬直樹

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