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OB'sコラム

Soma's Eye

2007 / file05

Jet Lag

相馬直樹
Soma,Naoki

清水東高、早稲田大学を経て1994年、鹿島アントラーズに加入。その後、2002年、東京ヴェルディ1969、2003年鹿島アントラーズを経て、2004年、川崎フロンターレに加入。豊富な経験値でJ1リーグ昇格を支え、2005年12月引退。現在、川崎フロンターレ・クラブアシストパートナー。
国際Aマッチ通算59試合4得点。1971年7月19日生まれ、静岡県出身。175cm、72kg。

先日の日本代表vsスイス代表(9月11日=日本時間12日早朝@オーストリア)のゲームを見られた方はいるだろうか?劇的な逆転勝利で3大陸トーナメント優勝を決めた試合だ。ケンゴも出場時間こそ短かったが、最後の勝ち越し点に大きく絡むなど活躍してくれた。

そのテレビ中継を見ていた人は気づいてもらえたかと思うけれども、あの試合を解説していたのは僕である。もちろんその前のオーストリア戦(7日=同8日早朝)も含めて、現地クラーゲンフルトのスタジアムから生中継していたので、10日間ほどオーストリアに行っていたわけである。それから昨日帰国したばかりのところでこの原稿を書いてるのだが、実はとにかく時差ボケがひどくて、メチャクチャつらいのだ。

7時間も時差があるんだから、時差ボケがあって当然でしょって思う人もいるかもしれないけど、僕は今まであまり時差ボケとは関係ないタイプだったのだ。選手時代、遠征でいろんなところに行ってきた。ヨーロッパ、南米、東南アジア、中東といろんなところへ行って、いろんな経験をさせてもらってきたわけである(北中米とアフリカにはいまだに行ったことがないが)。出身地がサッカーどころ清水だったということもあって、小学生のときには韓国、中学生ではブラジル、タイと、海外へ行く経験をすでに積んでいた。だけど当時から時差ボケっていうのはほとんど感じたことがなかった。

現役中も同じで、あまり気になったことはなかった。ヨーロッパはもちろん、南米のように12時間もの時差があるところでも、あまりつらくなかった。代表で駆け出しだったころ、当時の先輩たちに話すと「若い証拠だな。オレも若い頃は大丈夫だったけど、今はきつくて仕方ないよ」と言われたことを思い出す。それを考えると、「オレも歳とったのかなぁ」なんて思ったりする。

でもよく考えてみると、一番のポイントは睡眠ではないかと思うのだ。今回12時間かかった帰りのフライトで寝れたのは大体2時間ぐらい。それも朝8時に成田に着く便だったから、ほとんど徹夜状態って感じで、気持ち悪いというか、変な感じというか、嫌な感じは半端じゃない。日本に着いてからも、早く時差ボケ取りたいから昼寝しないように必死で我慢したんだけど、それがまた本当につらくて…。でも、行きの便では半分以上眠れたこともあって、オーストリアに行ったときにはあまり気にならなかった。そう考えると、いつでもどこでも眠れなくなってきたってのが、歳をとったっていう証拠なのかもしれない。

子供の頃からいろいろなところに行ってきたおかげで、移動中はどこでもどんな状況でも眠る癖がついていた僕。実はこれが大きかったんだろうなって思うのだ。バスの狭いシートでも、冷房がかからなくても、周りがいくら騒いでいようとも、いつでも眠れた。だから昔は、時差ボケになることもなかったんじゃないかなと思うのだ。

そういうわけで、今回初めてといっていいくらいきつい時差ボケに悩まされてるんだけど、帰ってきてすぐにリーグ戦を戦わなければならないという選手たちは、本当にすごいとしか言いようがない。自分が現役の時、ここまでタイトなスケジュールというのはたぶん一度ぐらいしか経験しなかったけど、そのときは後半の15分過ぎから本当に走れなくなったのを今でも覚えている。あまり時差ボケを感じない体質だった僕ですらきつかったんだから、時差ボケになりやすい人は相当つらいんだろうなと思う。

フロンターレからは今回の欧州遠征に川島とケンゴが行ってたんだけど、15日のJリーグ大分戦にもフル出場してたみたいですごいなと思う。だけど、この後がさらに大変だ。19日にイランでACLセパハン戦を戦ってきて、すぐまた日本に戻ってきて23日に柏レイソルとのリーグ戦がある。実は日本から西方面に行くときの時差ボケというのはあまりきつくない(理由はよく分からないんだけど)。だからセパハンではいい戦いをしてきてくれるだろう。だが日本に戻ってきての柏戦は、移動の疲れや、きつくなるであろう時差ボケなどを含めて、本当に厳しい戦いとなるはずだ。

僕の経験からアドバイスできることはといえば、とにかく眠ること。移動中には寝られないというデリケートなタイプの選手もいるかもしれないが、それではこのタイトなスケジュールは乗り越えられないだろう。それから食事や水といった生活の基本的なところでも相当なストレスがかかるだろうが、力を最大限に出すためにはそこもクリアしなければならないところだ。これが掲載された直後の柏レイソル戦が、時差ボケも含めて一番コンディション的につらい戦いになるはずであるが、ぜひともチーム全体で力を合わせて乗り越えてくれることを期待したい。

2007年09月20日 相馬直樹

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