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OB'sコラム

球蹴り〜玉置晴一〜

2007 / file05

一言の重要性

玉置晴一
Tamaoki,Seiichi

愛媛・今治工高を卒業後、川崎フロンターレに加入。 精度の高いパスを繰り出すレフティーも、故障に泣き、わずか3年で惜しまれつつ現役引退。 2005年にスクール担当コーチとして待望のフロンターレ復帰。 現在、U-12コーチとして、持ち前の明るさを武器に子供たちを引っ張り、未来のフロンターレ戦士の育成に邁進する。 1982年4月26日生まれ、愛媛県今治市出身。

指導者になって、今現在一番気をつけていることは、「言葉」です。

指導をしている中で、自分が発した「言葉」がどれだけ子ども達に影響しているのかと考えることがあります。
サッカーを指導しているときも、どれだけ分かりやすく子ども達に伝えるか、逆に本当に伝わっているのか?と自問自答しながら指導に取り組んでいます。
また、グラウンド以外のところでもなるべく子ども達と会話をするように心がけていますが、そのときにも「言葉」には気をつけています。

この夏、サッカーとは直接関係ないことかもしれませんが、おそらくこれから長く指導に携わっていく中で、決して忘れることがないであろうと思う出来事がありました。

U-12のトレーニング中の出来事です。ある選手の妹が両親と一緒にお兄ちゃんの練習を見に来ていたのですが、その子に突然「そうだ! 玉置コーチにお礼言わないとね。ありがとう。」と言われました。

一瞬、何のことだかさっぱり分からなかったのですが、その子のお母さんから説明を受けて驚きました! 実は、昨年の夏にもその子は練習を見に来ていたのですが、その時も一生懸命“一輪車”に乗る練習をしていたのです。その時に僕が、うまく乗れないのを見てグラウンドにあるミニゴールを2つ向き合うように並べ、その間を両手を使いながら乗る練習場らしき物を設置して「じゃあ、まずこれから練習してみよう!」と、声をかけたことを思い出しました。
真意は分かりませんが、どうやらその子は、1年前のことを覚えていて、その練習がきっかけでさらに一生懸命練習し、乗れるようになったことに「ありがとう」と僕に言ってきたのです。

僕は、感動したと同時に「ハッ!」としました。僕の中では1年前の出来事で思い出すのも難しく、何気なく言った一言が、その子にとっては大きく、きっかけにもなり、後に「ありがとう」とまで言われる「言葉」を言っていたのかと思うと少し考えさせられました。

今回のことは、僕の発した言葉が良い方に向いてくれた事ですが、逆に悪い方向に向くという事も有り得るということです。

例えば、子どもが良いプレーをしたと思った時にどういう言葉をかけるのか、逆にミスをした時にどういう言葉をかけるのか、悩んでいる時にはどういう言葉をかけるのかなど、僕がかける言葉で子どもが良くも悪くもなると思うと、本当に気をつけなくてはと思います。小学生年代では特に、指導者が子どもにかける一言一言がとても重要なのだなと改めて思いました。

しかしこれは、指導者に限らず言えることではないでしょうか?僕自身も幼少期に言われた両親の言葉は今でも覚えています。やはり僕たち指導者もそうですが、子どもにとってお父さん・お母さんの影響はかなり大きいと思います。このコラムを読んで何か感じていただけた方は、僕と一緒に自分を見つめ直してみませんか?何かに気づき、変えていけるかもしれません!

現在、僕はU-12の選手を指導していますが、これからも多くの子ども達と接して行くと思います。
指導をしていく中で、褒める言葉や指示の言葉、時には怒る言葉などなど、たくさん言葉はあると思います。その選び方やかけるタイミングを考え、『一言の重要性』を感じながら指導していきたいと思います。

2007年12月01日 玉置晴一

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