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2004 / file03

感動を与えるということ!

向島 建
Mukojima,Tatsuru

1966年1月9日静岡県生まれ。静岡学園高-国士館大-東芝を経て1992年清水エスパルス入団。1993年Jリーグオールスター戦出場。1997年川崎フロンターレへ移籍。以来2001年の引退まで要衝としてチームを支える。2002年から川崎フロンターレフロントスタッフ。2003年にはフットサル日本代表候補に選出。「SUKISUKI!フロンターレ(iTSCOM)」やサッカースクール・サッカー教室・講演・フットサル解説など川崎のサッカー伝道師として多方面で活躍中。

サッカーは、世界でも一番盛んなスポーツだということは言うまでもない。世界のサッカー人口は約2億5千万人ともいわれ、プレーをしなくてもサッカーが好きな人は5億人以上いるのではとも言われている。それは、W杯という大会の歴史や偉大さを見てもわかるだろう。先進国であっても、発展途上国であっても、たとえ文化が違っても、言葉が通じなくても、肌の色が違っても、その場所が狭かろうがサッカーボール一個あれば、みんなが楽しめる。よく海外に行く人が多いが、サッカーの話題でコミュニケーションをとることもいいだろう、その場にサッカーボールを転がせば、その国の人たちと交流が図れ、サッカーの素晴らしさを感じることができるだろう。そして、サッカーの素晴らしさや感動といったものは、けっしてW杯やチャンピオンズリーグなど世界のレベルだけでなく、JリーグやLリーグや高校サッカーなどいろんなレベルで心を動かされる場面を味わうことができる。サッカーを含めてスポーツは感動を与えてくれるが、その感じ方は人それぞれ違う。
私がJリーグの清水エスパルスでプレーしていたとき、サポーターからたくさんの手紙をいただいたり、いろんな話を聞かされたことがある。その内容で多かったのは、「向島さんのプレーを見て感動しました!」というものだった。サッカーをはじめたばかりの子供たちからは、「向島さんのようになりたい!」というものや、サッカーをしていない女の子たちからも、「自分はなぜ、物事を投げてしまうのだろう、あんなに頑張っている人がいるのに!」という気持ちになるのです。という話も聞いた。また、当時貰った手紙の御礼として、よくサイン入りポストカードを返送していましたが、遠方の神戸のファンから、そのポストカードが阪神大震災の翌日に届けられたことで驚き、とても勇気を貰いました、という話もあった。フロンターレに来てからも看護学生からは、「患者さんが亡くなって辛い思いをしたとき、向島選手のプレーを見て励まされました」という手紙を貰ったこともあった。一生懸命プレーしている姿が、そんな風に映るのであれば、サッカーをやっていて、つくづくよかったと思います。サッカー選手にとって自分のプレーで感動してもらえるなんてこんなに嬉しいことはない。逆に選手として、「感動を与えられなくなったら終わりだな!」とも思い、自分は多くの人に注目され、期待され、見られているということを感じ、もっとグランドで感動してもらうために頑張ろう!という気持ちになった。長く現役を続けてこられたのも、いろんな人たちに支えられているという思いがあったからで、現役最後の試合となった、「清水エスパルスvs川崎フロンターレ」では、試合終了後、両サポーターから温かい拍手をいただき、自然と涙が溢れ出て、サッカー選手として幸せだったことをあらためて実感した。

 プロサッカー選手は、スターとして注目され、試合で見る華やかな部分の反面、日頃から激しいトレーニングやチーム内での競争を繰り返し、試合の結果がいつでもつきまとい、肉体的にも精神的にも厳しい状態のときがよくある。そんなとき選手それぞれリフレッシュのしかたや、考えたオフの過ごしかたがある。当時、私は普段からチームメートやサッカー関係者とも、よく話しをし、食事などしてコミュニケーションをとってきましたが、それ以外のプロといえる人たちとも積極的に時間を作るように心がけた。例えば、他のプロスポーツ選手やミュージシャンの話しなど、何かを専門に行い勝負していて、それを楽しんでいる人の話しを聞くことが好きで、『本物!』を見たり聞いたり感じるということが、どんなに自分にとってパワーを貰えるか、自分にプラスになるか、とても大事なことだと思っていました。勿論サッカーにおいても実際にスタジアムで『本物!』を見るように心がけ、『2002W杯KOREA JAPAN』で、世界の一流選手たちによる多くの素晴らしいプレーを実際にスタジアムに行き感動を味わうことができた。日本だけでなく韓国まで足を運び、「韓国vsイタリア」の強烈な試合も見ることができた。また、サッカー以外のことでも、映画であればビデオだけではなく実際に映画館で見る。ミュージシャンであればCDだけでなく実際にコンサートに行ってライブを楽しむ。プロといえる人たちの考えや、自分のスタイルを持って一生懸命取り組んでいる姿を直接その場で感じることで、自分にとって励みになり、頑張ろうという気持ちになれるからだ。現在でもその気持ちは変わらず、できることなら『本物』を見て鳥肌が立つくらい!感動したいし、自分の子供たちにも積極的に見せてあげようと思っている。機械と人とでは本当の感動は得られない!

 最近、Viewsic の「サッカルチョ7」というドラマで共演した4人組ミュージシャン、『チコ・チェアー』のライブに行ってきた。大物ミュージシャンのライブにはよく行ったが、デビューしたばかりのミュージシャンは彼らが初めてだ。ライブハウスという圧迫感のある狭いところで、先に始まっている、知らないミュージシャンを見ながら、果たしてどんなライブになるか、楽しめるのか、正直ここに来てよかったのか不安もあった。しかし、彼らの登場でその不安は一変した。ドラマで共演していたこともあり、彼らの人柄のよさはよく知っていた。彼らのドラマで見せていた表情とはまた違い、音楽で真剣に勝負している姿は輝いていてかっこよく、まさにプロのミュージシャンだった。曲も素晴らしかったが、彼らと過ごした時間があったことが、自分に伝わりやすかったこともあり、会場は狭くてもライブで彼らとの素晴らしい一体感を味わうことができた。このライブのタイトルどおりチコ・チェアーの「一所懸命!」が伝わり、久々に感動した。人と人とがふれあうことができれば、本当の感動が生まれる!これからもチコ・チェアーを応援し、彼らのライブにより自分自身が、より一層頑張るためのパワーを貰っていくことになるだろう。
■チコ☆サイト+チコチェアー chicochair official website http://chicochair.power.ne.jp/ 

 昨年、川崎フロンターレは惜しくもJ1復帰は果たせなかったが、たくさんのサポーターが応援してくれている前で、多くの感動する場面を見せることができた。2004・J2シーズンに向けて選手の補強も整い、昨年以上にJ1を目指す気持ちは強く、素晴らしい試合が期待できそうだ。新たに加入した実力ある選手たちのプレーも気になり早く見たい。是非、等々力競技場に足を運んで実際にフロンターレの選手たちのサッカーを、その目・身体で思う存分体感してほしい。そして、選手の特徴やプレースタイルなど情報を少しでも知っておくことは、試合をもっと楽しく見ることができる材料になる。そして、選手が忘れてはいけないことは、お客さんは、お金を払って試合を見に来てくれているかぎり、グランドで感動を与えなくてはいけないということだ。いつまでも感動を与えられる選手でいるために、普段から努力を惜しまないでほしい。J1に向かって真剣に勝負している選手たちと、その瞬間のプレーをライブで楽しみ、J2リーグ終了時には、きっと、みんなでJ1復帰!を味わうことができるだろう。選手たちは素晴らしい感動を与えてくれるはずだ!

2004年02月20日 向島 建

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