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2005 / file09

お前の武器は何だ!

向島 建
Mukojima,Tatsuru

1966年1月9日静岡県生まれ。静岡学園高-国士館大-東芝を経て1992年清水エスパルス入団。1993年Jリーグオールスター戦出場。1997年川崎フロンターレへ移籍。以来2001年の引退まで要衝としてチームを支える。2002年から川崎フロンターレフロントスタッフ。2003年にはフットサル日本代表候補に選出。「SUKISUKI!フロンターレ(iTSCOM)」やサッカースクール・サッカー教室・講演・フットサル解説など川崎のサッカー伝道師として多方面で活躍中。

先日からU-15のサポートを行うことになった。
中学校年代は、個人差はあるが、肉体的にも精神的にも著しく成長する難しい時期でもある。
そんな子供たちにとって、自分がサッカーを通してこの時期に経験してきたことや、技術的な部分で気がついた点など話し合ってサポートしていくことで、彼らがサッカー選手として少しでもいい方向に成長できれば幸いだ。

4月に入ってすぐフロンターレのジュニアユース(U-15)が私の母校である静岡学園高校新1年生と練習試合を行った。静岡学園高校は、私にとってサッカー選手に一番大切な個人技術の土台を築くことのできたところであり、ここに来なければ絶対にJリーガーとしてプレーはできなかった。
その恩師である井田監督は、昔と変わらない風貌でカリスマ的な雰囲気を醸し出していた。

試合が始まっても、たまに声をかけるくらいだ。ドリブルで持ちすぎる選手がいても、GKやDFがボールを持ちすぎても決して前に蹴れとは言わない。しかし、ある選手のプレーで力強い口調で話し始めた。

「おぃ!お前の武器は何だ?」「何やっているんだ!試合でお前の武器を出さなくてどうするんだ」「お前の得意なものは何だ?」ドリブルだろ!突破だろ!積極的にチャレンジしろよ!と言わんばかりの口調だ。
「試合やっている意味がないよ、それじゃ!上手くならないよ!」
井田監督は、余計なことは愚だ愚だ言わず、選手の持っている一番いい部分を引き出させることを伝え、後は自分で考えてプレーさせた。そんなシーンがとても印象的であり、井田監督の元で私が学んできた大切なことでもあった。

先日、U-15のトレーニング終了後、選手たちに「自分の武器は何か知っている人?」と尋ねたところ21人中3人しか手を上げられなかった。サッカー選手にとって特徴は絶対に必要で「自分の武器!」を持っていないとトップに残っていけないと思う。今の子供たちは自分の時代に比べ、はるかに上手だが、個性のある選手が少ない気がする!ドリブルができ両足でパスが出せシュートも打てる。いろんな情報も入ってきて持っているが、教えられすぎている選手が多い。全体的にみんな上手で無難にプレーする。無難にプレーすることは勿論大切なことで、そういう選手もチームには必要かもしれない。しかし、そういう選手ばかりではチームは成り立たないし強くはなれない。見ていても楽しくないし面白くない!自分の武器といえるだけのプレーができるように普段から学び考え創造しチャレンジする。失敗して悔しい思いをして、また練習しチャレンジする。コーチから言われて動くように、型にはめられるのではなく、できることなら自分で考えプレースタイルを作っていく選手になってほしい。個性がある選手の集まりが、サッカー本来のチームの姿であり、みんなにサッカーの楽しさ夢や希望を与える。

指導者は、いくら自分のやりたいサッカーがあっても思い通りにはいかないものだ。
選手たちを見て、その選手たちに合ったシステムや戦術で戦うことが必要で、選手の個性を活かせるポジションに彼らを当てはめてあげれば「武器!」は上手く機能するだろう。選手たちによってサッカーのスタイルは創られる。

「お前の武器は何だ!」と聞かれたとき「俺の武器はこれだ!」と言えるような強いものがある選手はこれからも成長できるだろう。U-15の中には特徴ある頼もしい選手が多い。これからも選手の個性を引き出してあげられるような指導を心がけていきたい。

2005年04月11日 向島 建

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