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2005 / file10

自分に投資!

向島 建
Mukojima,Tatsuru

1966年1月9日静岡県生まれ。静岡学園高-国士館大-東芝を経て1992年清水エスパルス入団。1993年Jリーグオールスター戦出場。1997年川崎フロンターレへ移籍。以来2001年の引退まで要衝としてチームを支える。2002年から川崎フロンターレフロントスタッフ。2003年にはフットサル日本代表候補に選出。「SUKISUKI!フロンターレ(iTSCOM)」やサッカースクール・サッカー教室・講演・フットサル解説など川崎のサッカー伝道師として多方面で活躍中。

サッカーというスポーツは、プロサッカー選手としてピッチに立てる年数は平均的に短い。
野球の場合、平均28~29歳に比べ、サッカーの場合は、平均24~25歳だといわれている。
野球に比べてサッカーは、90分間激しくフルに動きまわる、とてもハードなスポーツである。ハーフタイムが来るまでは途中、作戦タイムも休憩もない。環境も様々、監督も頻繁に交代し毎年新戦力も加入する状況で11人しかピッチに立てない厳しいスポーツがサッカーだ。
私は、プロサッカー選手としては長い、35歳までプレーすることができた。

何故ここまで長くプレーできたかは、様々な要因があると思う。勿論、運も良かったのだろう、トップでプレーするための技術的なことや、チームメートを含め周りの様々な人たちとのコミュニケーションの取り方も大切なことだと思うが、どれだけ自分自身がサッカーを愛し、どれだけサッカー選手として長くプレーしたいか、自分自身の身体に、お金と時間をどれだけ投資することができたかという自己管理が重要ではないかと思う。

私は、清水エスパルスに在籍していた1994年頃、ドリブルで相手を交わすときや前線に飛び出すときに身体の切れがよくなかった。ゴール前でシュートに入るときや相手と競っている状況で踏ん張るときに力が入らないこともあった。年齢のせいなのか?疲労でただ身体が重いだけなのか?「そのうち戻るだろう!」しかし、なかなか本来の切れには戻らなかった。筋力トレーニング・整体・マッサージなどプラスになるあらゆるものは取り入れたが、何かが違う・・・。いろいろ悩んでいるとき、以前TVでスポーツ選手の歯の噛み合わせは重要だということを思い出した。噛み合わせが悪いと力が入らないことを思い出した。そこで私は直ぐに歯医者に相談し、奥歯の噛み合わせなどの治療を行うことにした。私の奥歯は既にボロボロの常態で上手く噛み合わない。そこで、トップでプレーし続けたい思いから、大きな決断をした。奥歯をインプラント(人口歯根)にすることだった。インプラントは、自分の歯の替わりに人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を作製して噛み合わせを回復する治療法。固定式であるためガタついたりせず、自分の歯のように強く噛めるようになる。治療期間は約半年で、金額的にも高額、普通では考えられない決断だったのかもしれないが、しっかり歯を治し、グランドで自分のプレーを再び表現したい。ピッチの上でチームメートやサポーターともう一度、喜びや感動を味わうためには、自分の身体に高いお金を投資することくらい安いものだと思うのが私の考えだった。

その後、信じられないようだが、噛み合わせが上手くいったことで、本来の自分のプレーを取り戻すことができた。改めて歯の大切さや微妙な感覚だが身体のバランスの重要性を感じた。歯を治すことにお金や時間をかけるより、自分の趣味やファッションなど楽しいものにお金や時間を費やす選手も多い。選手寿命の短いサッカー選手は、お金や時間の使い道を少し考え、変えるだけで選手として一年でも長く、一試合でも多くプレーできることもある。私は、その可能性に賭けるのが、本当に心からサッカーを愛し、プロといえる選手なのではないか。お金をケチって別のものに使っていたならば、私のプレーは変わらず、35歳までピッチには立てなかったかもしれない。

「生かすも殺すも自分次第!」常に現役時代に私が思っていた言葉である。自分が強い意思を持ち常に望めば、変わることができ、何も考えず思わず望まなかったら変わることはできない。選手が持っているものを生かせるか生かせないかは自分に強い思いがあるか、それを実行に移せる強い意志があるかどうか、サッカーのためにどれだけ情熱を注ぐことができるかだ。
「自分に投資!」悪くはないのでは・・・。

2005年04月19日 向島 建

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