モバイルフロンターレ

OB'sコラム

Tatsuru'sチェック!

2005 / file13

アウェイ!(前編)

向島 建
Mukojima,Tatsuru

1966年1月9日静岡県生まれ。静岡学園高-国士館大-東芝を経て1992年清水エスパルス入団。1993年Jリーグオールスター戦出場。1997年川崎フロンターレへ移籍。以来2001年の引退まで要衝としてチームを支える。2002年から川崎フロンターレフロントスタッフ。2003年にはフットサル日本代表候補に選出。「SUKISUKI!フロンターレ(iTSCOM)」やサッカースクール・サッカー教室・講演・フットサル解説など川崎のサッカー伝道師として多方面で活躍中。

サッカーの試合は、Jリーグでも、プレミアリーグでも、セリエAでも、ホームゲームがあれば必ずアウェイゲームも存在する。ホームゲームは、住み慣れた環境で移動時間も少なく、地元サポーターも多く詰め掛け、戦い慣れた試合会場で安心して選手たちはプレーに集中することができる。それに比べ敵地に乗り込むアウェイゲームは大変だ。環境の違い、移動時間が長く、戦い慣れていないピッチ、多くの相手サポーターの存在、時には主審にも左右されるなど、ホームチームにとって有利な状況は間違いなく、アウェイチームは最善の準備をして戦わなければいけない。ほとんどのチームは、移動に時間がかるため前日入りするのが基本で、移動は選手たちの身体に大きな負担がかかる。試合でいいパフォーマンスをするためにも前日入りしベストのコンディションをつくる必要がある。決められた宿舎で決められたスケジュールの中行動し、選手やスタッフが綿密に情報を交換するなどコミュニケーションをとってチームが一つになりアウェイを戦う。

私が現役時代、アウェイでの試合は、午前中にトレーニングを行って、午後移動することが多かった。移動はバス、新幹線、飛行機、試合会場によって移動手段は変わる。試合で必要な全ての用具や荷物はホペイロ(用具係り)が準備し運んでくれるため、選手たちが持っていくものは宿舎(ホテル)で必要な私物だけだ。

宿舎に着き各自の部屋に入ると直ぐに、手を洗いうがいは欠かさず行って、楽な格好に着替え夕食会場へ移動する。食事は必ずヴィッフェスタイルで好きなテーブルで自分たちが食べたいものを食べたいだけ摂ることができた。勿論何をどれだけ食べたらいいのか?バランスも考えた。食事の最後には好きなコーヒーを飲みながら、明日の対戦相手の試合映像を見たり、新聞を読んだり、チームメートとサッカーや旬の話題に花が咲いた。その後、トレーナーによる治療やマッサージの時間が振り分けられているため程々に部屋へと引き上げる。選手によってマサージは当日やりたい選手、まったく必要ない選手など様々だが、私は前日に軽く解してもらう。強すぎると次の日に残ってしまうため、自分の身体には特に気を遣った。

部屋での過ごし方は選手によって異なる。読書する選手、TVを見たり音楽を聴いたりする選手、プレイステーションを持ってきてゲームや映画を見て楽しく過ごす選手もいた。部屋にずっと篭る選手や、部屋にいるのが退屈な選手は、トレーナーやチームメートの部屋を行き来し会話を楽しんだり、近くのコンビニへ飲み物など買出しに行くこともあった。例えばそこが特別な場所で両親や親類、友人や知人が住んでいて、尋ねてくることもあったが、極力短めに済ませた。
私は、必ず寝る前に目を瞑って明日の試合のいいイメージ映像を頭の中に描いた。例えば、自分がドリブルで相手を交わしゴールを決めたシーンや、味方の得点につながるパスを出したところなど、いい場面を創造する。けして悪いイメージは描かない。明日自分が出したいプレーやゴールを決めて喜ぶシーンを描き試合での活躍を信じて気持ちよく眠った。それが効果あるかないかは分からないが習慣になっていた。

朝起きて朝食は自由だった。私は普段から3食しっかり摂ることが習慣になっていたため、食べなければ力が出せないタイプだ。その後、試合前の3~4時間前にパスタやうどん、おにぎり、パン、バナナなどの軽食が必ずあり、そこで試合までの最後のお腹の調整をする。ナイターゲームであれば、試合当日朝、近くの空き地や公園で散歩や体操、軽いトレーニングをすることもあった。そんな時は朝食を抜いて昼食をしっかりと摂り、最後に軽食で調整する。食べすぎて消化にエネルギーを使いすぎては良くない。軽食が終われば出発前のミーティング。ミーティングには、出発の準備を整えて集まる。ホワイトボードを使用しスターティングメンバーの発表、相手の予想メンバーやシステム、相手選手の特徴などが伝えられ、セットプレーの確認、何よりもアウェイでの試合ということで自分たちの試合の入り方や戦い方が一番重要視される。

宿舎ではこのように過ごして、いざ試合会場へと向かう。宿泊先から競技場まではバス移動する。バスで選手たちの座る場所は、ほとんどといっていいほど決まって同じ場所だった。願懸けなのか?こだわりなのか?私の場合も、いつもと同じように落ち着く席があった。この頃になると選手たちの表情は一段と戦う顔になりバスの中もいい緊張感が漂っていた。クラブによってスケジュールなど異なるが、私の経験したほんの一例で、こうして選手たちはシーズンの半分以上のアウェイ試合を経験する。

2005年05月12日 向島 建

>ページのトップへ