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2005 / file20

プレシーズンマッチ

向島 建
Mukojima,Tatsuru

1966年1月9日静岡県生まれ。静岡学園高-国士館大-東芝を経て1992年清水エスパルス入団。1993年Jリーグオールスター戦出場。1997年川崎フロンターレへ移籍。以来2001年の引退まで要衝としてチームを支える。2002年から川崎フロンターレフロントスタッフ。2003年にはフットサル日本代表候補に選出。「SUKISUKI!フロンターレ(iTSCOM)」やサッカースクール・サッカー教室・講演・フットサル解説など川崎のサッカー伝道師として多方面で活躍中。

海外から多くのビッグクラブがプレシーズンマッチを行うために来日した。
レアル・マドリード(スペイン)、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、フィオレンティーナ(イタリア)、バルセロナ(スペイン)など、そして川崎フロンターレが対戦したイングランドプレミアリーグのボルトン・ワンダラーズFCだ。

私も現役時代に多くのビッグクラブの有名な選手を相手に、プレシーズンマッチを行うことができた。例えば、ブラジルのチームでは、鹿島監督のトニーニョ・セレ-ゾ(ブラジル代表)がMFでプレーしていたサンパウロFC、今年引退した1994W杯MVPロマーリオ(ブラジル代表)がプレーしていたフラメンゴ、イタリアでは、バレージ(イタリア代表)やマルディーニ(イタリア代表)、後にチームメートとなり2トップを組んだこともあるマッサーロ(イタリア代表)がプレーしていたACミラン、バティストゥータ(アルゼンチン代表)やルイコスタ(ポルトガル代表)がチームを引っ張っていたフィオレンティーナなど、今思えば信じられないくらい貴重な経験ができた。

等々力で行われた「川崎フロンターレ vsボルトン・ワンダラーズFC」の記念すべき試合は、川崎初の国際試合で、勿論フロンターレでも初めてであった。ジュニーニョ、アウグストといった主力を欠いてはいたがフロンターレの選手たちは、ホームという慣れた地で激しくかつ伸び伸びプレーしていた。試合はフロンターレが逃げ切ってもおかしくない状況だったが、ボルトンも意地を見せ、辛うじて1対1の引き分けに持ち込み終了した。

ボルトンはスケジュール的にも中一日で試合という厳しい状況で「あのコンディションで、あれだけできればいいんじゃない」という寂しいとも思える声もあがっていた。観戦した人がどう感じるかは自由だが、個人的にはオコチャ選手のタイミングのいいドリブルやフェイントなどは見ていて楽しく、最も沸かせてくれたが、昨シーズン、プレミアリーグ6位のチームがあのレベルだと納得いかない部分はあり「もっとできるだろう!もっとやって欲しい!」と期待していたところはあった。サッカーにはそれほど詳しくない人が見たとき、世界のレベルを勘違いされると恐ろしいとも思えたが、今の時期行う試合はこんなものでも仕方ないのか…。

今回、一早く来日したレアル・マドリードは2戦目こそ素晴らしいサッカーを魅せてくれたが、初戦の東京V戦は、ファンの期待を裏切る形で0-3の完敗だった。来日間近でコンディションが悪いとはいえ、相当東京Vを甘く見たに違いない。現在Jリーグでなかなか調子が出ず低迷している東京Vを相手に、持っている力の半分も出せなかったのでは…。

戦う気持ちが薄ければ当然疲れた身体は動かない。サッカーに限らず何にでも言えることだが、気持ちがあれば多少の疲れもカバーできるもので、高い技術があるレアルの選手であれば十分観客を沸かせられるはずだった。プレシーズンマッチは、世界のスター選手のプレーを実際に見たい、日本のチームや日本の選手が世界を相手にどれだけの力を出せるのか見てみたいと思っている人も沢山いる。

選手自身も戦ってみて実際に自分のプレーが世界に通用するのか、世界との差はどこにあるのか感じたいはずだ。目的もなく、ただのビジネスで終わらせるのであれば、選手のためにもプレシーズンマッチは行わないほうがいい。お金を払って観戦に来てくれている人たちのためにも、サッカーを愛する子供たちのためにも、夢を与えてくれる憧れのスーパースターである以上、ピッチに立ったら真剣に本気でプレーしてほしい。これからも、みんなに手応えがあり収穫のあるプレシーズンマッチであることを期待したい。

2005年08月09日 向島 建

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