モバイルフロンターレ

OB'sコラム

哲14の魂

2008 / file01

16年目のJ開幕

中西哲生
Nakanishi,Tetsuo

1969年9月8日生まれ、愛知県名古屋市出身。小学校3年生の頃からサッカーを始め、同志社大学を経て、名古屋グランパスエイトに入団。1997年当時JFLの川崎フロンターレに加入し、2000年惜しまれつつ現役引退。サッカー解説者・スポーツジャーナリストとしての活躍は目覚しく、「クラブ特命大使」として、川崎フロンターレの発展に尽力する、言わずと知れた「ミスターフロンターレ」

皆さん、こんにちは。中西哲生です。

まずは最初に、川崎フロンターレの歴代そして現在のフロントの方々、歴代そして現在の監督、スタッフ、選手、ボランティアの方々、そして何よりサポーターに感謝したいと思います。僕にとってフロンターレは、ただ単に一人のJリーガーに過ぎなかった僕を育ててくれたチームであり、等々力競技場そしてGゾーン前は僕がもっとも愛する場所です。

皆さん、いつも本当にありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします。

今年はこのコラムにも文章を書きます。また今年も継続してフロンターレの特命大使として、様々な形でフロンターレの力になれればと思っています。

個人的には今年のJ開幕は、今までとは少し違う感じを受けてます。その理由は、ここから世界一に通じる道が少しですが見えたからです。昨年12月、アジアチャンピオンリーグ(ACL)で優勝した浦和レッズが、UEFAチャンピオンズリーグチャンピオンのACミランとクラブワールドカップ準決勝で戦いました。これがすべてのJリーグのチームに、かなりの刺激を与えたと感じています。もちろんACミランとの差は感じました。しかしそれは世界トップレベルのクラブチームと初めて本気で戦えたからこそ、感じられたことです。クラブチームレベルで世界一を目指すことが可能になったことで、今年以降、各チームのモチベーションが確実に上がることでしょう。

今シーズンも浦和、ガンバ大阪、鹿島アントラーズは、年末のクラブワールドカップに行くチャンスを持ってます。ただこの三つのチームはJリーグの日程といかにうまく付き合っていくかがポイント。もうひとつ言えることは、浦和はACL決勝トーナメントからの登場、この辺りも考えると今年もJリーグの中心は浦和になってくるでしょう。補強を見ても、高原、エジミウソン、梅崎、三都主など、ワシントン、小野が抜けた穴は痛いとは思いますが、それを補って余りある補強と言えるでしょう。さらにポンテが夏過ぎに戻ってくることを考えると、守備陣に大きな乱れがない限り、今年もJリーグ優勝争いの大本命です。

ガンバ大阪、鹿島アントラーズについては、当然ながらACL予選リーグからの登場。さらにガンバ大阪は2月にパンパシフィック選手権を戦いました。またプレシーズンから中心選手6人を代表チームに取られていることもあり、いいスタートが切れるかが注目です。しかし新加入ルーカスとバレーの2トップがうまく機能すれば、その辺りも問題ないでしょう。昨シーズン劇的な逆転優勝を飾り、天皇杯も制した鹿島は小笠原、本山、野沢といったMFが日本代表に呼ばれていないこともあり、今年も安定した力を発揮しそうです。この2チームにはJリーグはもちろんのこと、ACLも決勝トーナメントに残ってもらい、Jリーグ同士のACL決勝に向けて頑張ってもらいたいです。

この3チーム以外で優勝に絡んできそうなのは、もちろん川崎フロンターレ。昨シーズンはすべての部分で、タイトルまであと一歩という戦いでした。ACL準々決勝はPK戦でセパハンに破れ、ヤマザキナビスコカップでは決勝でガンバ大阪に、天皇杯では準決勝で鹿島にそれぞれ破れてしまいました。しかし下を向くことはありません。確実にチーム力はアップしていますし、過酷なスケジュールの中、どの大会にも安定した力を発揮したという点では、実り多き一年だったと思います。

もちろんタイトル獲得のため、足りなかった点もあります。

その足りなかった点を埋めるため、二人の即戦力を獲得しました。ひとりはレンタル移籍から戻ったフッキ。彼の得点能力に疑いの余地はありません。しかしJ1のDF、GKの力は、明らかにJ2よりは上。うまく周りの選手を使ってプレーすることが求められます。そのためにもコンビネーションの熟成がカギ。特にジュニーニョとのコンビに期待したいと思います。もうひとり即戦力はジェフから獲得した山岸。もともと左サイドが手薄なフロンターレとしては願ってもない補強。最後までトップフォームに戻れなかったフランシスマールの代わりに、昨シーズン左サイド支えた村上との併用で力を発揮して欲しい。守備的にスタートするなら村上。攻撃的に行くなら山岸というように。また彼は、さまざまなポジションに対応できるユーティリティー性もあり、これもフロンターレにとって大きな力になるでしょう。

チーム全体に話を移すと、求められるのはシステムのバリエーション。昨シーズンの取り組みで、得意の3バックに4バックというバリエーションは加わりました。しかし今年求められるのはMF、FWのバリエーション。MFは従来のウインバックを使った形以外にどういった形が持てるか、台形なのか、フラットなのか、ボックスなのか......。FWについては2トップ、もしくは3トップ、もしくは1トップ......。この中で最適な組み合わせが最低3つは欲しい。

できないことはない。中村、谷口、山岸、森、ジュニーニョ、フッキ、テセ、我那覇、黒津、大橋、原田、久木野、養父。これらの選手の中で3バックなら7人、4バックなら6人で構成されるMF、FW陣のバリエーションが最低でも3つは欲しい。今までの攻撃の形が研究されているのは、昨シーズンを見れば明らかなこと。もともと3-5-2というシステムは、研究され対面する相手がしっかり目の前の敵さえ抑えこめば機能すること難しい。大きな理由は、ポジションチェンジが少ないシステムだからだ。このシステムでフロンターレの攻撃が機能してきたのは、ジュニーニョという突破できるドリブラーがいることと、谷口という縦へのポジションチェンジができる選手がいることに他ならない。

もちろんこれまでのシステムが悪い訳ではないし、システムだけで勝負が決まる訳でもない。ただどんな相手、どんな状況においても対応できるシステムを持っていることは、大きな力となるはずだ。個人の力を生かしつつ、縦そして横のポジションチェンジを行いながら繰り出される攻撃は、どのチームにとっても脅威となるはず。強力なタレントを誇る、新生フロンターレの攻撃陣に大きな期待をしたい。

最後に。今年も僕は可能な限り、等々力競技場に足を運びたいと思います。

皆さんも、初タイトルに燃える選手たちの後押しを、どうかよろしくお願いします!

2008年02月25日 中西哲生

>ページのトップへ