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久野智昭 アーカイブ

2006年03月16日

スタート

はじめに今まで応援してくれたすべての人にありがとうと言いたい。まず引退を決めてから今日までの生活と心境を語りたいと思う。

 リーグ戦最終戦のセレモニーで僕のサッカー選手としての人生は終わったと感じた。天皇杯もあったが、頭の中は次の人生に切り替わっていた。もちろん、天皇杯を戦うため練習は頑張っていたが、今後のためにとパソコン教室に通うことにした。午前中練習がある日は午後から教室に通い、天皇杯敗戦後は、毎日バスで朝から夕方まで通った。パソコンの技量は入力とインターネットを見る程度だったが、グラフを作ったり、絵を書いたりと色々出来るようになり、日々楽しく学べた。また、この時期あまりサッカーのことを考えたくないと思っていたので、パソコン教室に通うことによってサッカーと少し距離をおくことができた。いつもより少し長いオフの生活は、毎朝30分、愛犬ベルとの散歩に始まり、パソコン教室に通い夕方帰宅後ベルと散歩するという規則正しい生活を送っていた。

 1月26日、初出社の日、選手の前でスタッフ全員が挨拶をした。もちろん、僕も「スカウトを担当する久野です」って挨拶したが、自分の前に座っているほとんどが去年まで一緒にプレーした選手たち。毎年行われる事だが、これまで見ていた風景が、今年は選手を見る側になり何だか違和感があった。この日、選手たちの練習を見た。見たらやりたくなるかなと思ったが、不思議なことにそんなふうには感じなかった。たぶん選手からスタッフへと気持ちが切り替わっていたからだと思う。
 翌日、下野毛ではじめて子供たちのスクールを手伝った。子供たちの一生懸命な姿を見て感動した。うまくなろうと頑張っている彼らを見て僕自身もやる気が出てきた。子供たちが上達するようサポートしていきたいという気持ちが強くなった。

 去年の開幕戦はアウェイでなおかつJ1経験者が少なかったことから動きがいまひとつでした。今年はホームで迎えられたことが非常に大きかったのではないかと思う。そして、キャンプで練習試合で完勝だったのから一転、プレシーズンの大宮戦での引き分け。この試合で選手はそんなに甘くないと気持ちが引き締まったのでしょう。その結果6対0という試合につながったのではないか。この結果でもちろん他のチームからもマークされると思いますが、その中でどれだけ選手が自信を持って戦えるかが僕にとってはとても楽しみです。

 この原稿が掲載される頃には京都戦の結果も出ているでしょう。楽しみです。

 リーグ戦もスタート。スケジュール帳、名刺入れを準備し、これから僕の新しい人生もスタートしました!!

2006年05月26日

ワールドカップ

4年に1度のワールドカップがドイツで行われる。
今大会の見どころは、なんと言ってもブラジルの連覇に注目が集まると思う。ロナウジーニョ、カカ、ロナウド、アドリアーノ、とタレントの宝庫でもあるブラジルは1982年スペイン大会の「黄金の中盤」を上回るインパクトでしょう。もちろん歴史からも考えると、オランダ、イングランド、イタリア、ドイツ、アルゼンチン、フランスなどが上がってくると思う。

ドイツは気候的にも6月は15℃~25℃ということもあって好試合が期待できると思う。
その中で、各チームは集中した守備をリーグ戦では展開してくると思う。こういう試合展開になったとき個人で局面打開できる選手が必要だと思う。それができる選手を僕は注目したい。

ルーニー(イングランド)、バラック(ドイツ)メッシ(アルゼンチン)、ドログバ(コートジボワール)、ファン・ニステルローイ(オランダ)、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)ジラルディーノ(イタリア)ロナウジーニョ(ブラジル)、アンリ(フランス)、この他にも局面を打開できる選手はいるけど。これとは別に注目しいているのは僕がもっとも好きな選手、W杯引退を表明しているフランス代表ジダン。前回のW杯では怪我の影響で思うようなパフォーマンスが出せなかったことから今大会にかける思いは特別だと思う。ジダンは人と同じプレーをしても輝いていて、チームのためにも戦える選手だと思う。フランス代表はジダンにかかっていると思う。

6月9日から1ヵ月はW杯一色になる。僕も、そんな中ビールを片手にソーセージをつまみながら、ドイツに行った気分で4年に1度のW杯の祭典を楽しみたいと思います。

もちろん日本の躍進にも期待してます。

2006年11月01日

メンタル

今年からスカウトとして高校・大学の試合を見に行く機会が多くてその中で気づく事があります。それは試合の流れのことです。緊迫した0対0の試合のときにどちらかが先制すると立て続けて追加点をあげるという試合を目にします。これは、Jリーグでもたまにある傾向だが高校・大学の試合でも数多く見られます。一つはメンタルの影響だと思います。

今回はこのメンタルについて書いてみようと思います。
現役時代に僕が一番感じたのは、外国人のメンタルの強さでした。その中でもアウグストやジュニーニョは逆境に立たされた時のパフォーマンスがすごいと感じました。彼らは試合前に日本人が集中するために静かにしている選手が多い中、大きな声で歌を歌ったり、冗談を言ったりしています。しかし、いざ試合になると近寄りがたいオーラを出しているのです。彼らの切り替えはすごいなっていつも見ていました。

ちなみに僕はバスで試合会場についてウォーミングアップまでの時間が約1時間位あるのですが、この時間がいつも長く感じていました。自分はテーピングも巻かないので、グラウンドに行ってピッチ状態を確かめるぐらいで、あとは仲のいい選手と少し離れた場所で雑談していることが多かったです。このことは現役の時に無意識にしていたことで、今考えてみると緊張感を試合までの間にため過ぎないようにしていたのかもしれません。

選手が試合に臨むうえで必要な条件は、やはり適度なリラックスと高い集中力、そして気持ちの高まりだと僕は思う。その他にミスからの気持ちの切り替えが大切だと思います。これはJリーグの試合や練習を見ていても分かりやすいです。試合が始まって最初のタッチでミスをするとそのあとのプレーに影響を及ぼす選手がいます。それは気持ちの切り替えやプレーの整理がついてないことが要因となっているからです。
自分が選手だった時は積極的なミスのときはそのプレーに納得でき次に切り替えられるが、消極的なミスをしたときには引きずることがありました。テレビ画面では自信を持ってプレーしている選手もミスしたら「交代させられる」「次の試合使ってもらえなくなる」などいろいろなことを考えて緊張感をもって試合をしているのです。そのときにどう考えて自分で整理するかがメンタルの部分です。巨人の桑田投手は自分のミスや味方のミスで失点してしまったときは3点取られても攻撃で4点取ってくれるとポジティブに考えてプレーいるらしいです。要するにチームとして個人としてどうポジティブに考えられるかにつきると思います。

ではメンタルを強くするにはどうしたらいいかということになりますが・・・。僕はこんな話を耳にしたことがある。それは象が小さい頃、鎖につながれて育ちそのまま大人になったとき簡単にはずせるはずの鎖をはずせないというのです。この話は、与えられた環境が当たり前であり、その環境に順応してしまい、それ以上、鎖をはずすなどのチャレンジをするという考えをもたないということです。このような現象は、今の子供達にも言えるかと思います。情報社会の現在、自分から考えなくても答えはすぐに導きだされるのです。与えられた環境、すなわち家庭や学校など成長する過程での環境によって人格やメンタルが変わってしまうのです。子供たちは敏感に大人の期待を感じとっています。どうすれば大人が喜ぶか、教えられた通りの答え(行動)を取ればよいことを知っています。その一方で過度の期待によりチャレンジすることに臆病になっている子供もいます。だからこそ自分の考える力が大切になります。自分の考えた目標に向かってそして、失敗を繰り返し、いろいろなことを経験していくことで自然とメンタルの向上につながっていくと思います。それが人間の成長にもつながっていくと思います。

では、選手の場合どうかということですが、選手に関しても試合を見ていると感じることがあります。それは、気が利く選手が少ないということです。失点した場面で冷静にどう攻撃するのか、どう守備するのか自分たちで考えられるということが必要です。例えば監督からの指示を待っている間にまた失点しまう可能性もあるからです。自分たちで考えて行動して修正すること、目標をもってそれを達成するために考える。そのために自分自身をコントロールできる力が必要だと思います。

メンタルは子供の頃からオフ・ザ・ピッチでいろいろなことを感じ、またいろいろなポジションを経験することで、選手としての幅を広げていくことができると思います。あたえられた環境から自分自身で切り開くことでメンタルの強さが生まれてくるのではと感じています。
メンタルに強く、気が利く選手がこれからは必要となってくると思います。スカウトとして、そういう点でも選手を見ていこうと思っています。

2007年04月10日

スペシャリストの育成

自分は、サイドのスペシャリストの育成が大切だと思っています。
その理由として、日本代表やJリーグを見たときに、スキルの高い選手は中盤の真ん中に多くて、サイドの中盤には少ないと感じているからです。試合のときにはなかなか中央からの突破が難しいことから、サイドの選手の強化が必要だと感じでいます。サイドの選手にはいろいろなタイプのプレーヤーがいると思います。ゲームを作るサイドプレーヤーやサイド突破を得意とするプレーヤーなどが上げられるが、やはり、サイドプレーヤーの魅了といえば、やはり、縦に勝負できる、突破できる選手だと思います。もちろんそれだけではないないと思いますが、実際サイドのプレーヤーが対面しているDFをはがし一人一人のずれを生んで得点に結びつけていく可能性が高いことからこのような選手が必要だと感じています。

自分は川崎フロンターレのスカウトをやっていて、高校・大学と視察に行っていますが、高校・大学にもサイドのスペシャリストが少ないのです。それはなぜかというと、高校・大学の1、2年生の時にはサイドで活躍している選手が最上級生になるとチームの中心になるため中盤の真ん中にいってしまい、サイドの選手がなかなか育たないのです

高校・大学サッカーとしては勝敗がとても大事だと思いますが、育成のためにはサイドのポジションでJリーグや日本代表でやれると思ったらその子のためにも、サイドで使い続けていってほしいです。もちろん、子供のころは、複数のポジションを経験することはとても大切だと感じていますが、サイドプレーヤーの大切さや面白さを子供のころから指導者が伝えていく必要があると思います。今後の日本サッカーのレベルアップのためにもこれらのことを考えて育成していく必要があるのではないでしょうか。オシム監督はいろいろなポジションが出来る選手と言っていますが、僕はサイドのスペシャリストが必要だと感じています。

2007年06月10日

アイデア

サッカーに必要なものの一つにアイデアがあります。今回は、アイデアについて書いてみたいと思います。そのアイデアとは、ゴールを奪うアイデアとゴールを守るアイデアです。ゴールを奪うために相手をかわしたり、相手の逆をとったり、ゴールを守るためにボールを奪ったりするアイデアがとても大切だと思います。

今のサッカーは組織的になってきていて、アイデアがないとゴールはなかなか生まれないように思います。
高校・大学サッカーを見ていても、いいサッカーをしているけど点が取れないチームがあります。中盤までうまくボールをつなぎ、ペナルティーエリア付近まで行くけど最後のところで、もうひと工夫なくゴールが奪えない。このような状況をよく目にします。

アイデアとは、子供のころから「自由」を与え失敗を恐れずチャレンジできる環境を指導者が作ることだと思います。僕が、指導している5・6年生のスペシャルクラスでは、子供達に「失敗してもいいからチャレンジしよう」と言っています。
アイデアとは、サッカーだけで得るものではないと思います。生活の中で得るアイデアもあると思います。そのために、子供達には一日一日を大切に過ごしてほしいと思っています。なぜなら、日々の積み重ねからアイデアは生まれると考えているからです。

アイデアが生まれにくい環境というのもあると思います。その中で、僕がプレーしていて感じていたアイデアが出にくい状況、またアイデアを発揮できにくい状況にいついて書きたいと思います。
一つは指導者にミスに関して言われすぎたとき、もう一つは、情報を与えられすぎ相手にあわせたサッカーをしたときです。自分の持ち味やアイデアを出しにくくなり消極的になってしまいました。特に育成年代では相手に合わせるサッカーではなく相手が自分たちのチームに合わせてくれるようなサッカーができれば、個人としてのアイデアだけでなく、チームとしてアイデアを共有できるのではないかと思います。

やはり、アイデアは、積極的な姿勢がないと生まれないと思います。
指導者をやっている以上、失敗を恐れない積極的にできるような環境を考えてやっていきたいと思います。そして、自分も楽しく、そして見ている人を楽しませるような選手を目指してほしいと思います。

2007年08月10日

セットプレー

今回はセットプレーの重要性について書いてみたいと思う。
現代のサッカーでは、組織的に守備してくるチームが多く、流れの中から点を取ることが昔に比べて難しくなっている。よって、セットプレーの重要性が高まっている。

例えば、日韓ワールドカップでのセットプレーの得点は28%、ドイツワールドカップは36%と増えている。最近では、ボールの改良によって「ブレ球」と呼ばれるシュートが生まれるなどあらゆる変化をもたらしゴールが生まれている。その「ブレ球」を子供達がよくマネをするのをよくみかける。いろいろな種類のキックに興味を持ちチャレンジすることはとても大切なことだと思うが、足への負担などを考えると少し怪我など怖い気がしている…。

ここで、自分が1999年、最初にJ1に昇格したときにセットプレーのキッカーを任されていたときのことを少し書いてみようと思う。この年は、すべてのセットプレーは自分に任されていた。この当時の監督に信頼を受けているという思いで自信を持って蹴っていた。その中で、フリーキックのトレーニングをして、結果、直接フリーキックで5ゴールあげることができた。

自分が、まず蹴る前に考えることは、ピッチ状態、雨でボールが水を含んでいるか、審判が壁との距離をどのくらいとってくれるか、壁の高さ、壁のどの場所が低いのか、キーパーのポジションはどうなのかなどを考え、イメージした軌道、角度、スピードを頭に刻みこませる。そして、普通GKとの駆け引きのために左右のキッカーを並べるが、自分は1人集中したいために誰も隣りには立たせなかった。

フリーキックで自分が重要視していたのは、助走の距離と角度だった。ゴールまでの距離と角度によって助走の距離と角度を変えて強いボールを蹴るという自分なりの蹴り方をトレーニングの中から身体で覚えさせゲームで蹴っていた。 しかし、後半になって疲労がたまりパワーがなくなってくると自分の思っていた角度や助走ではボールが思っていた以上に浮いてしまったりして、思うようなキックができないこともありました。それも試合の中で蹴っていくことで経験し、プレッシャーにも慣れ自信を持って蹴っていた。

これからのサッカーでは、より優れたキッカーがあらわれてくると思う。そうするとゴール前でファールを与えると失点という場面が増えてくる。攻撃側はそれを、利用してファールをもらいにいったりシュミレーションする選手がでてきたりし、守備側はファールに過剰に敏感になり激しくボールを奪いにいけなくなったりする可能性もある。そうなるとサッカー本来の面白さが少し消されていくようなきもしている。もちろんファールをもらってすばらしいフリーキックを見てみたいが、やはり個人的には流れの中からのゴールというほうがサッカーらしいと僕は思う…

でも、これから先、更なるボールの改良によりセットプレー最大の武器になることは間違いない。優れたキッカー一人で試合を決められる時代がくるかもしれない。

2007年10月10日

異国のサッカー

今回はフロンターレがACLの準決勝で対戦が予想されていたAL HILAL(サウジアラビア)、AL WAHDA(UAE)の試合をスカウティングするために、サウジアラビアとUAEに足を運んだときのことについて書いてみようと思います。

9月19日〜28日UAE(ドバイ)に飛びました。僕らが視察に行ったこの時期は、ラマダン中(イスラム教徒が教典コーランの啓示を祝う月であり、飲食は日没後から日の出前しか行いません)で、この時間に食事をするとしたらホテルのレストランだけでした。

この時期の気温は昼間40℃ということもあり外を歩いている人はほとんどいません。各クラブのトレーニングもこの時期は暑くそして、ラマダン中ということもあって21時からでした。この時間でも35℃で湿度も高く見ているだけで汗がふきだし息苦しい状態でした。選手はラマダン中、朝と夜が逆転した生活を送っていました。この中で、ACLの試合が行なわれていました。

第一戦AL WAHDA(UAE)のホームで行われた試合は、キックオフが22時、この時間でも気温は35℃ぐらいで暑さに強いと思われていた両チームの選手が足をつるなど精彩を欠き0対0の引き分けでした。暑さそしてラマダン中ということもあり、お互いコンディションがあまりよくなかったように見えました。


9月25日サウジアラビアに移動し、第二戦9月26日AL HILALのホームでの視察を行いました。
お互いがホームとアウェーでの戦い方を変え勝ちに徹したサッカーをしていました。現場で体感したことのないくらいお互いがはっきりしたホームアンドアウェイの戦い方をし、そして中東独特の雰囲気を味わうことができとても幸せで興奮しました。この試合はアウェーのAL WAHDA(UAE)が先制し追いつかれましたが、アウェーゴールで勝利しました。

 今回のACL視察でタイ・韓国・インドネシア・イラン・UAE・サウジアラビアの6カ国でのサッカー環境や文化触れられたことは今後のサッカー人生に必ず役立つに違いないと思います。

そして、これらの視察にあたって安全面など不安なところもありましたが、何の問題もなく行けたことに対して視察に関わった全ての人に感謝の気持ちでいっぱいです。

2007年12月07日

入替戦

2007年最終節、アジアチャンピオンの浦和レッズが横浜FCに0対1と完封負け。
この結果鹿島アントラーズが清水エスパルスを下し逆転優勝で幕を閉じました。まさに何が起こるかわからないのがサッカーだということを身にしみて感じた年でした。

2007年フロンターレは、ACL出場、ナビスコカップ準優勝とクラブとしてすばらしい経験をすることができました。
そんな中、J1から降格するチーム、J2から昇格するチーム、そして、「入れ替え戦」に臨むJ1・16位のサンフレチェ広島、J2・3位の京都パープルサンガがあります。

今回は、この「入れ替え戦」について書いて見ようと思います。

「入れ替え戦」と聞くとホーム&アウェイとすぐに思うかもしれませんが、1998年フロンターレがJFLを戦って、アビスパ福岡との「J1参入決定戦」に出場した時は、アウェイの一発勝負。この年(1998年11月19日)だけ「参入戦」と呼ばれ、一発勝負で行われました。

このときJFLを戦ってきた自分にとってアウェイの洗礼はあまり感じてこなかったのですが、この試合だけは異様な空気を感じました。アビスパ福岡のサポーターが黒いビニール袋を振りフロンターレを圧倒しようと雨の中、博多の森競技場を埋め尽くしたのです。

自分は、雨の中、博多の森競技場まで足を運んでくれたサポーター、メンバーに入れなかった選手のためにも必ず勝とうと強く思って戦ったゲームでした。結果は、2対1からロスタイムに追いつかれ、104分にフェルナンドのシュートがサイドネットに吸い込まれ延長Vゴール負け。この試合は「博多の森の悲劇」と言われるくらい壮絶な試合でした。この試合は自分にとってとても悔しく、忘れられない試合のひとつです。

「勝ちきれない試合」そして「Mind-1」の精神はこれまでの歴史を振り返ったときに、この試合から始まったように思えます。フロンターレの原点と言ってもおかしくないゲームでした。

この試合に出場した選手は一人もいませんが、クラブとしてこの経験を受け継ぎフロンターレを支えていけたらと思います。

 GK:浦上
 DF:川元・ペッサリ・中西
 MF:長橋・大塚・鬼木・久野・伊藤彰
 FW:トゥット・ヴァルディネイ
 SUB:境・小松崎・土居・桂・菅野

2008年03月24日

褒める

現役を引退して、子供たちを指導するようになって3年目の年になります。
日々、指導の難しさや重要性を強く感じています。ジュニアの指導をする時、「褒める」ことの大切さをつくづく感じるようになりました。

褒めることで二つの効果があります。一つは、「褒める」ことによってモチベーションが上がることです。やる気や自発性・意外性のプレーを引き出すことが出来ます。私も現役のときには「褒められる」ことによってミスが減り、積極的にプレーすることができました。それとミスしても次のプレーで取り返してやろうという気持ちになり、ミスを恐れてプレーすることはなくなりました。ミスしないように思っているとミスになったり、ボールを前に運べるチャンスがあるのに、意図のないバックパスになったり判断のミスも増えてしまいます。

もう一つは、チームの雰囲気が良くなることです。「褒める」ことによって、他の子供たちが、自分もそれ以上のプレーを出してやろうという気持ちになり、前向きなプレーが増えてきます。そこで、アイデアが生まれると思っています。コーチなどに教わったプレーより自分で気付いて新たな発見があったとき、それが自分の強固となる武器になると思っています。

教えすぎることによって、子供たちの持っている可能性を奪わないような指導というよりも環境作り(雰囲気)がとても大切だと思います。そして、子供たちがすがすがしく感じ、次の練習が楽しみだという気持ちになり帰宅していくことが重要だと思います。そんな子供たちの顔を見ることで、今の私の活力になっていることは間違いありません。

私も一緒にプレーしながらポジティブな言葉を発することにより、穏やかな顔になり子供たちも伸び伸びできるのです。逆に怒られてばかりいると前向きなプレーや自発性は失われ、雰囲気も悪くなってしまい結果的に子供たちの成長が望めなくなってしまいます。そして、信頼関係までも失ってしまうと思います。
一概に、「褒める」ということがすべてではないと思います。しかし、「褒めると子供がつけあがる、言うことを聞かなくなる」と感じているという人がいたら、その人は、褒め方が下手なだけか、褒め方を知らない、褒めること自体がよくわからない、褒め言葉を知らないだけだと思います。あなたは、褒め言葉を何個挙げられるでしょうか?

「褒める」という事は、私の今までの経験からとても大切だと感じています。「褒める」には観察が必要です。ちょっとした変化に気付き、良い行動を認めて声に出していくことが、褒めることの一歩だと思います。日頃の行動やプロセスがとても重要だということを子供たちが感じてくれることが大切だと思います。

2008年05月20日

チームカラー

今回は、『チームカラー』について書きたいと思います。

スカウトの仕事で、数え切れないほどの試合を見ることができました。
高校・大学の試合を見るときに興味を持つのは、カラーが出ているチームです。徹底して前線にロングボールを蹴って攻撃するチームやゴールキーパーからショートパスをつないで、攻撃するチーム、バックラインからドリブルで仕掛けるチームなど、さまざまなチームのスタイルがあって面白いです。そこからは、指導者のカラーが伺えます。

ドリブルで仕掛けるチームは、個人がドリブルで局面を打開する力を身につけることやボールを自由に扱えることを目的にドリブルの練習をしています。そこには、指導者の考えがはっきりしていることがわかります。この指導者の考えが、チームのカラーになっていると思います。いかに指導者が一貫した方向性を打ち出せるかが、チームにとって重要になります。中途半端な考えではカラーは出せないと思います。

このカラーによって学校を選び、進学している選手は少なくないと思います。特に将来プロでやりたいと思ったときに、学校選びはとても重要だと思います。自分のスタイルにあった学校を選ばないと自分の持っている特長を発揮できない可能性があるからです。

例えば、テクニックがあるのに進学した学校がロングボールを多様する学校だったりすると自分の存在がうすれたりする可能性があり、自分のスタイルを変えなければならないかもしれません。もちろんマイナスな面ばかりではないと思います。自分のスタイルを変えたことで開花する選手もいるかもしれません。自分の特徴を出せる学校を選ぶのがいいと思います。それには、自分の特徴を知っていること、自分の目指すサッカースタイルがどの学校にあるかを知らなくてはいけません。

指導者としてみると、チームカラーだけでは、いい選手は育ちません。指導者がチームカラーを押し付けても個性を伸ばすのは難しいからです。指導者は、柔軟で個性を発揮できるように指導することが大切です。個性を発揮することで、選手は成長します。それが、チームにとって大事な個性になります。

ただ、これだけは言えます。
プレイヤーとして、中途半端な技術ではチームカラーに負けてしまいます。
しかし、優れた技術があれば、どんなチームスタイルにも柔軟に対応ができます。
技術はとても重要です。技術を磨いていきましょう!

2008年07月26日

コントロール

今回は、コントロールについて書いてみたいと思います。

コントロールを辞書で調べてみると、調整する・統制・制御するという意味があります。
コントロールとは、対自分力です。行動や考え方のセルフコントロール能力が大切です。
セルフコントロール能力の中には、決断力、忍耐力、曖昧力、規律力、瞬発力、持続力、冒険力、慎重力の8つがあると言われています。自分の思考と行動は変えることができます。自分の弱い力を確認し、意識してセルフコントロールしてみることが大事です。

サッカーの場合、「ボールコントロール」と「気持ちのコントロール」がとても重要だと感じています。気持ちのコントロールができることで、ボールコントロールが活きてきます。この二つのコントロールは、相互に作用しています。
なぜならば、自分のそのときの気持ちが鏡として、プレーやボールに表れるからです。イライラしているときは、冷静さを欠いたプレー(イライラしたプレー)になります。客観的に見ればすぐに分かるのかもしれませんが、プレーしている本人はあまり気づいていないのかもしれません。自分や仲間の失敗やミスは誰にでもあることで、そこで冷静にプレーできなければ悪循環になり、いいパフォーマンスは望めないと思います。そういう意味では、忍耐力、規律力、持続力、決断力などが必要となってきます。
私は、子供ころから冷静にプレーすることを常に心がけていました。例えば、相手にファールで止められたりしても、イライラすることはありません。それは、プレーをする喜びから無心で、ボールをおいかけていたからです。プレーをする喜びが、一つのモチベーションとなっていました。セルフコントロールするためには、モチベーションも重要な要因となってくると思います。

スカウトでの選手の選考基準の中にも、自分をコントロールできる選手であるか、ということを見ています。それは、セルフコントロールできる選手でなければ、なかなかプロでは通用しないからです。特にフロンターレのカラーにはあっていないと考えています。
個人的にもセルフコントロールでき、冷静にプレーできる選手が好きです。
それに加え、チームもゲームもコントロールできる選手になってほしいと思っています。これらのことを考えたとき、ボールコントロールだけでなく、トレーニングの中から気持ちをコントロールすることが必要となります。

気持ちが落ち着けば、ボールも落ち着き余裕も出てきます。自分に余裕がないと、ボールは落ち着きません。逆にボールが落ち着いてコントロールできるというときは、気持ちもコントロールできているということです。

フロンターレの下部組織のなかからもこのような選手が育ってくれればと思います。

2008年10月01日

多摩川クラシコ

今回は「多摩川クラシコ」について書いてみようと思います。

2008年9月20日(土)に行われた第14回多摩川クラシコは、1対0でFC東京が勝利を収めました。これで、対戦成績は5勝4敗4分でFC東京が一歩リードになったわけですが、これまでも、数々のドラマッチックなシーンを生んできました。


歴史を振り返ってみると、J2での対戦以前にも1999年JFL時代から川崎フロンターレ対東京ガスとして、お互いライバル同士戦ってきました。
1999年の第24節の対戦は、自分がプレーした中でも最も記憶に残るゲームの一つです。退場者1人を出し、足をつらせる選手が多い中、120分戦い0対0の引き分けというまさに死闘という一戦でした。

当時、等々力競技場に駆けつけてくれるサポーターの数は、3〜5千人でした。現在では、2万人近いサポーターが応援に駆けつけてくれています。
1999年の32節には「一万人大作戦」というキャンペーンを行い、一進一退の攻防を繰り広げ3対2で勝利を収めJ1昇格に大きく前進しました。そして、この年に両クラブ揃ってJ1リーグ昇格を果たしました。


1999年のJ2時代は相性が良かったのですが、2000年J1ではFC東京に2戦2敗となり、この年J2に降格となりました。J2降格後、再び選手・クラブが力をつけて2005年J1昇格を果たしました。
2000年の降格があったからこそ、今の強いフロンターレがあると思います。だからこそ、多くのサポーターが等々力やアウェーにも、足を運んできてくれると思います。

川崎フロンターレとFC東京が『永遠のライバル』と、「FCバルセロナとレアルマドリッドの対戦(エル・クラシコ)」のような、歴史ある激しい戦いをこれからも繰り広げていって欲しいと思います。

このように、切磋琢磨してきた両クラブが、何十年と続いていくクラシコ(スペイン語で伝統の一戦)になっていくことは間違いありません。
そして、両クラブがJリーグを盛り上げていって欲しいと思います。

2008年12月10日

スカウトの目

プロ選手になるためには、最低でも2つの条件が必要。

その一つに、「特徴(武器)を持った選手であること」、自分の秀でてる特徴(武器)をどう伸ばすか、極めるかがポイントだ。技術をベースに身体的な特徴(スピード・高さ・強さ)を活かすこと。身体的な特徴がなくても、ドリブル・パス・シュート・一対一の強さなど、どれか一つでも極めることができればいい。もちろん、どれも必要だが全部もってなくてもいい。なぜなら、サッカーは11人でやるもの。人は十人十色、個性(性格)も違えば、プレーの特徴も違う。これらのいいところを集めチームがとして戦えばいい。

スカウトの仕事で試合を見て最近よく感じるのは、身体の小さい選手はスピードが絶対条件だ。走るスピードというのは、トレーニングしてもなかなか早くならないが、ボールを持ったときのスピードは、ドリブルのトレーニングを重なれば必ず早くなる。こういう選手は高校・大学の中でも活躍し、プロへ進む選手は少なくないのだ。

いろいろな指導現場を見たり、話しを聞いたりすると、ドリブルというのはネガティブに考えられているような気がする。Jリーグで活躍するパスを得意とする選手も、子供の頃からドリブルが得意で、今でもドリブルが出来るからパスが出せるのだ。子供のころから順番を間違えてパスばかりに意識させてトレーニングしてしまうと、手遅れになりプレーの幅も狭くなってしますのだ。いまでは主流となっているパスサッカーだが、原点はドリブルにあるのだ。

もっとドリブルをポジティブに考える必要があると思う。ドリブルには(逆をとること・間合い・駆け引き・タイミングの全てがドリブルに集約されている。そして、ドリブルのタッチ一つ一つがファーストタッチの精度を上げていくはずだ。その中で、個性を主張出来る選手、自分で考えて状況を打開できる選手、自分の限界にチャレンジし特徴を活かす選手になることが必要だ。

そして、サッカーは「感覚のスポーツ」だ。次にどうするか考えていたら戦えない。教えすぎると理屈っぽい選手になり、その場の状況に応じて判断できなくなる。サッカーには同じスチュレーションはない。相手・味方・グランド・天候・時間など全てが違ってくる。だからサッカーは面白いのだ。この状況に瞬時に身体が反応して動かなければ通用しない。


二つ目は、「人間性」である。自分の能力や地位におごることなく、努力しサッカーに対して純粋で素直であること、そして感謝の気持ちを持ち続けることが大切である。感謝の気持ちとは、いくら人に感謝の気持ちを持てと言われても身につくものだと思いません。自分で気づき感じたとき、はじめて理解できるものだと思います。

すでに来年の入団が内定しているGK安藤駿介選手(川崎フロンターレU-18)や登里享平(香川西)も技術だけでなく、人間性に長けた素晴らしい選手です。
内定おめでとう。そして、今後フロンターレの中心選手として活躍できる選手に育っていってほしいと思います。

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