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玉置晴一 アーカイブ

2007年04月01日

自分で巧くなる

今回から、このOB’sコラムに参加させていただく事になりました。
そうそうたるメンバーが書いているこのコラムに、一応!OBということで参加することになり、かなり緊張していますが宜しくお願いします。

まず初めに、2001年に入団してから2003年までの3年間、等々力のピッチに立つことはありませんでしたが本当に多くの人に支えられ、サッカーはもちろん人間として成長できたことで今の自分があると思っていますし、その時の感謝の気持ちは今でも忘れません。本当に有難うございました。

フロンターレを引退してからは、約2年間様々な場所で指導の勉強をしていましたが、僕が現役時代もトップのコーチをしていた高畠さん(ツトさんと呼んでいますが)から「うちでコーチやらへんか?」の一声があり、スクールコーチとしてフロンターレに戻ってくることができました。現在は、昨年立ち上げた、フロンターレの下部組織にあたる『川崎フロンターレU-12』の3・4年生を担当しています。

コーチを始めてから最初に思ったことは、「最近の子は本当に巧い」でした。小学生でそんなことできるの!?など、驚かされっぱなしの毎日でした。また、サッカーが大好きで一生懸命巧くなろうと頑張っている姿や、純粋にサッカーを楽しんでいる子供たちを見てものすごく感動しました。そんな子供たちを何とか上手にしてあげたいなと日々考えています。
僕が現在考える指導は、『自分で巧くなる』です。当たり前のことですが、すごく重要なことだと僕は考えています。監督やコーチが言ったことだけをやっていれば巧くなるかと言えばそうではないと思います。自分から練習に積極的に取り組み、自分で考え、自分で答えを見つけたときに、成長につながったり、喜びや楽しさが湧き出てくるものだと思います。また、プロという世界でも監督・コーチがすべてを教えてくれる訳ではありませんし、自分で理解しそれぞれの監督が持つ戦術に順応できる選手が長く現役を続けられる一つの要因だと思います。その点からみても指導者は、子供自身が考えて成長できる環境を創って、悩んでいる子がいればアドバイスをする。そういったサポート役であるべきだと思っています。これから僕が指導した子供たちが、トップチームで活躍できるようになった時に、その選手の頭の中に少しでもぼくの名前が残っていれば幸いです。

ただ、僕たち指導者が子供たちに携わっている時間は、多くて1日4時間程度です。良い選手を育てるには残りの20時間がとても大切です。スクールや等々力でも多くのお父さんやお母さんを見かけますが、子供への接し方などどうですか?何でも“やらせて”いませんか?それでは、子供自身が“考える”ことができなくなってしまうと思います。子供に失敗は付物です。その失敗から考えることで、成功へと変化しますし、成長につながります。時にはうまくいかないこともあると思いますが、そこが成長のポイントです!最初から答えを与えるのではなく、上手く答えに導いてあげてください。こういったグラウンド以外での良い習慣も、良い選手を育てる大きな要因の一つだと思います。是非!お父さん、お母さんも子供たちの“良いサポーター”となって、子供たちの成長を見守っていきましょう!

将来、この下部組織の中から多くの子供たちが、等々力のピッチで躍動している姿を夢見ながら、日々努力していきたいと思います。

2007年06月01日

食事

前回、良い選手を育てるにはグラウンド以外での良い習慣も、一つの大きな要因だということを書きましたが、今回はその中の一つとして少年期での『食事』について書きたいと思います。

プロサッカー選手にとっても自分の身体というのは一番大切なものであり、「健康で丈夫な身体」なくしてはプロの世界では通用しないと思います。その身体を作るのには様々な要素がありますが、絶対に不可欠なこととして『食事』があります。少年期において一番大切なことは、食事の『量』ではないかと思います。それは、サッカーが『動く』スポーツだということと、身体の成長という面から考えられます。

プロのサッカー選手が1試合に走る距離は平均で約10kmだと言われており、少年サッカーでも距離は違いますが、動くスポーツだということに変わりはありません。つまり、普段の食事から量を食べていないと動くことができないということです。
身体の成長についてですが、この時期に量をたくさん食べる習慣がついていないと、上の年代になればなるほど習慣というのは変えにくくなってしまうもので、一番の成長期(個人差はありますが)に必要な栄養を摂取できなくなってしまい、それにより身体も大きくなりません。

僕が見ているU-12では保護者の方の協力を得て、トレーニング後や試合の後に必ずお弁当を子供に持たせていただく様にお願いしていますが、最初にそのお弁当を見たときには「それで足りるの?」と質問してしまう様な量でした。話を聞くと、朝食を食べていない子やパン1枚ですませている子。給食でご飯をおかわりしたことがない子…などなど。
このように最近の子供たちは、食べる量が少なくなっているのではないかと思うことがあります。自分の少年期を思い出しても、誰に言われるでもなく、ご飯はたくさん食べていましたし、とにかく食事の量は多かったと思います。「両親は苦労しただろうな」と今になって思いますが…。

ここで!お母さんの登場です!この状況を変えられるのはお母さん方の協力なくしてはできません。一番の理想は、朝、昼、夜と3食しっかり量を食べること。野菜やお肉などの栄養バランスも考えながら食事を取ることも大切ですし、好き嫌い無く何でも食べることも大切です。もちろんまだ子供なので、おいしいお菓子やジュースに目が向いてしまう年代ですが、それによって家での食事の量が少なくなってしまっては、理想の身体は作れません。時には我慢することも大切でしょうし、食べる物を変えることも必要だと思います。

最初は、少ししか食べることの出来なかったU-12の選手たちも、最近では子供たち自身がプロになるためには食べることも必要だと理解するようになりました。お父さんやお母さんの協力で、家庭でも食事についての意識を変えていただいたことで、今ではたくさん食べられるようになってきました。もちろん習慣なので時間のかかることですが、今の食事のお茶碗一杯の量からでも増やしてみてはいかがですか?少しずつ変えていくことで習慣は身についていくと思います。

2007年08月01日

試合の観方

今回は、『試合の観方』について書きたいと思います。

最近よく思うことなのですが、“サッカーをする子ども”の人口は年々増えているようですが、“サッカーを観る子ども”の人口は減ってきているのではないか?また、観てはいるが集中してサッカーの試合を観られる子が減ってきているのではないか?と思うことがあります。

等々力でも多くの子供たちを見かけますが、競技場内を走り回って遊んでいる子や、座っていても友達同士で話している子、目の前で素晴らしいトップチームの試合が行われているのにも関わらず、サッカーはそっちのけでほかの事に興味を示してしまっています。このコラムでも書きましたが、「子供だから…。」で終わらせてしまっては、非常にもったいない気がしてなりません。

近年では、様々な試合を観られる環境にもあります。Jリーグはもちろん、海外のサッカー中継、今ではインターネットでもサッカーの試合が観られるようになりました。自分が子供の頃に比べたら考えられない状況です!まぁ僕は愛媛出身なので、当時は愛媛FCもJリーグに加盟していなくて生の試合を観ることは中々なかったのですが…。

では、なぜこのような素晴らしい環境にあるにも関わらず、試合を観る子が少なく、観てはいるが集中できない子がいるのでしょうか?また、どうすれば子どもは、サッカーを観るようになるのでしょうか?

僕は、試合の観方を少し変えるだけで、サッカーの試合に興味を持ったり、今より何倍もおもしろくなるのではないかと思います。

僕はいつも試合を観る時には、必ず観るポイントを決めます!例えば、チームの戦い方。どんな攻め方をして、どんな守り方をするのか。ボールをテンポ良く回しながら攻める、前線にロングボールを早めに入れて攻める、前からどんどんプレッシャーを掛けて奪いに行く、少し引いてスペースを消しながら守る、など。それぞれチームによって戦い方は様々です。他には、個人を観ます。ボールを持った時はどんなプレーをするのか、またボールを持っていない時にはどんな動きをして何を観ているのか、など。他にもたくさん観るポイントはありますが、このように試合をただ観るのではなく、何か『テーマ』を持って観るだけで、試合の感じ方が全然違ってくると思います。

U-12でも、ミーティングで様々な試合を見せていますが、僕はいつも「今日はこういうことに注目して観てみて」と何かテーマを与えます。そうすることで、「あっ!今この選手こんなことしてた!」など、子ども達から色々な考えや反応が返ってきて食入るように観ています。

これから子どもと一緒に試合を観る時には、お父さんやお母さんが試合の観方を少し変えて、子どもに何か投げかけてみて下さい。きっと、今までとは違った反応が返ってくると思います。

それからもう一つ!通な人はお解かりかもしれませんが、TVではボールを中心に映しているので、それ以外のところでの、おもしろい場面がなかなか観ることができません。是非!等々力競技場に足を運んで生の試合を子どもに観させてあげてください。TVとは違った面白さがあり、興味を持ったり、色々なところを集中して観ることで、子どものプレーのイメージや、アイデアも広がってくると思います。

2007年10月01日

遊び

今回は、『遊びの重要性』について書きたいと思います。
自分の中で“遊び”とは、鬼ごっこ・かくれんぼ・泥警(こっちでは警泥らしい)・缶蹴り、もちろんサッカー!野球やバスケット・ドッヂボール…など、他にもたくさん上げられますが、どれも楽しいことには変わりありません。今思えばですが、こういった楽しい“遊び”の中から、サッカーに必要な身体の動きや、色々な考え、アイデアを身につけて行ったのではないかと思うことがあります。

例えば鬼ごっこでは、鬼から逃げるときに、ターンをして方向を変えたり、ステップを踏んでかわすなど、サッカーに必要な動作がたくさん含まれています。鬼ごっこもそうですが、かくれんぼや缶蹴りなどでは、どこに隠れれば見つからないか?どのタイミングで出て行けば、鬼に見つからずに缶を蹴ることができるか?など、色々な考えやアイデア、また相手(鬼)との“駆け引き”などが自然に出てきたりします。また、野球やバスケットなどの手を使う球技をやることで、手や肩などの上肢が鍛えられます。

このように、楽しい“遊び”の中にはサッカーに不可欠な要素がたくさんあると思います。僕も小学生ぐらいの時は、サッカーだけではなく、外で遊ぶことが多かったですし、親の提案で僕の友人を誘ってキャンプをしたり、とにかく楽しく“遊ぶ”!その中で色んなことを考えていた記憶があります。

しかし、今では楽しい“遊び”の場がなくなってきているのも事実です。何度か子供たちに、こんな質問をしたことがあります。「みんなは、いつも何をして遊んでいるの?」返ってきたほとんどの言葉は、やはりと言うか“ゲーム”でした。これは、都会が抱える一つの問題かもしれませんが、子どもがおもいきり遊ぶ場所が少ないがために、家で過ごす時間が長く、みんなとTVゲームをして楽しむ。また、自分も普及活動で川崎市内の小学校を巡回し、体育の時間を使ってのサッカーの授業に行きましたが、子供たちに話を聞くと放課後などは、子どもの安全面を考え、校庭の使用が禁止になっている学校もあると聞いたことがあります。

確かに昔と比べれば、子どもが安全に楽しく、おもいきり遊べる環境が失われてきているように思います。
ただ、この環境はすぐには変えられないものかもしれませんが、かえられるものもあると思います。
それは、もちろん!お父さんやお母さんの協力が必要です。例えば、少しでも時間があれば子どもと一緒にキャッチボールをしたり、休みの時にはなるべく外に出かけて一緒に走り回ったり、余裕があれば友達を大勢誘ってキャンプに行くなど、少しのことかもしれませんが、こういった子ども達自身が考え、楽しく“遊べる”場を提供してあげるのも大事なことだと思います。そうすることで、自分もそうだったように、きっと大きくなった時に「あの時の経験が良かったんだな」と思うことでしょう。

毎日のお仕事でお疲れかもしれませんが、子どものために、是非!立ち上がっていただきたいと思っています。

2007年12月01日

一言の重要性

指導者になって、今現在一番気をつけていることは、「言葉」です。

指導をしている中で、自分が発した「言葉」がどれだけ子ども達に影響しているのかと考えることがあります。
サッカーを指導しているときも、どれだけ分かりやすく子ども達に伝えるか、逆に本当に伝わっているのか?と自問自答しながら指導に取り組んでいます。
また、グラウンド以外のところでもなるべく子ども達と会話をするように心がけていますが、そのときにも「言葉」には気をつけています。

この夏、サッカーとは直接関係ないことかもしれませんが、おそらくこれから長く指導に携わっていく中で、決して忘れることがないであろうと思う出来事がありました。

U-12のトレーニング中の出来事です。ある選手の妹が両親と一緒にお兄ちゃんの練習を見に来ていたのですが、その子に突然「そうだ! 玉置コーチにお礼言わないとね。ありがとう。」と言われました。

一瞬、何のことだかさっぱり分からなかったのですが、その子のお母さんから説明を受けて驚きました! 実は、昨年の夏にもその子は練習を見に来ていたのですが、その時も一生懸命“一輪車”に乗る練習をしていたのです。その時に僕が、うまく乗れないのを見てグラウンドにあるミニゴールを2つ向き合うように並べ、その間を両手を使いながら乗る練習場らしき物を設置して「じゃあ、まずこれから練習してみよう!」と、声をかけたことを思い出しました。
真意は分かりませんが、どうやらその子は、1年前のことを覚えていて、その練習がきっかけでさらに一生懸命練習し、乗れるようになったことに「ありがとう」と僕に言ってきたのです。

僕は、感動したと同時に「ハッ!」としました。僕の中では1年前の出来事で思い出すのも難しく、何気なく言った一言が、その子にとっては大きく、きっかけにもなり、後に「ありがとう」とまで言われる「言葉」を言っていたのかと思うと少し考えさせられました。

今回のことは、僕の発した言葉が良い方に向いてくれた事ですが、逆に悪い方向に向くという事も有り得るということです。

例えば、子どもが良いプレーをしたと思った時にどういう言葉をかけるのか、逆にミスをした時にどういう言葉をかけるのか、悩んでいる時にはどういう言葉をかけるのかなど、僕がかける言葉で子どもが良くも悪くもなると思うと、本当に気をつけなくてはと思います。小学生年代では特に、指導者が子どもにかける一言一言がとても重要なのだなと改めて思いました。

しかしこれは、指導者に限らず言えることではないでしょうか?僕自身も幼少期に言われた両親の言葉は今でも覚えています。やはり僕たち指導者もそうですが、子どもにとってお父さん・お母さんの影響はかなり大きいと思います。このコラムを読んで何か感じていただけた方は、僕と一緒に自分を見つめ直してみませんか?何かに気づき、変えていけるかもしれません!

現在、僕はU-12の選手を指導していますが、これからも多くの子ども達と接して行くと思います。
指導をしていく中で、褒める言葉や指示の言葉、時には怒る言葉などなど、たくさん言葉はあると思います。その選び方やかけるタイミングを考え、『一言の重要性』を感じながら指導していきたいと思います。

2008年03月26日

技術

今年度もこのコラムに参加することになりました。昨年の1年間コラムを書いてきて、言葉の表現の難しさや自分の文章力の無さに悲しくなりましたが…読んで少しでも何かを感じてもらえると幸いです。今年もよろしくお願いします!

今回は、「技術」について書きたいと思います。
プロのサッカー選手になるためには、大切な要素がたくさんありますが、当然「技術」はその要素の1つと言えます。ご存知の通り、ロナウジーニョやC.ロナウド、ジダンといった世界のトッププレイヤーも随所に「技術」の高さを魅せてくれます。

技術といってもその捉え方は様々です。例えば、試合の中で観られる、止める(コントロール)・運ぶ(ドリブル)・蹴る(キック)これらを自分の思ったところに正確に行える。これも技術だと思いますし、最近では海外で職業(フリースタイルフットボール)にもなってきていますが、リフティングで身体全体を使って色々な技ができることも技術です。他にも違った捉え方もあるとは思いますが、サッカーではこのような技術がとても大切になってきます。

すでに、様々な雑誌などでも述べられているとおり、小学生年代では特に技術の獲得が重要だと言われていますし、僕自身もとても大切なことだと思っています。では、もっと具体的には何か? 僕は、下の年代であればあるほど「ボールを自由に扱える」ことがとても重要だと考えます。なぜかは、このボールを自由に扱うことの延長線上にサッカーで必要な、止める・運ぶ・蹴るなどの技術があると思うからです。

では、どうすればこのような技術が向上するのか?僕は、小さい頃からとにかく足でボールをたくさん触ることだと思います。イメージで言うと、「手と同じくらい足でボールを扱う」伝わりにくいかもしれませんが…人間は、“手”では多くの作業を行いますが、“足”ではあまり行いません。ボールフィーリングという言葉がありますが、ボールをたくさん触ることで、丸いボールの感覚を覚えます。とにかく小さい頃からボールにたくさん触れることが、とても大切だと思います。僕自身もトレーニングを考える際に、選手一人一人が多くボールを触れるようなメニューを心がけています。

技術の大切さは、僕自身プロになって痛感したことですし、引退した選手や現役の選手からも「もう少し技術があったらな…」ということを聞いたこともありますし、「小さい頃にもっとやっておけば良かった」という声も聞きます。また、世界のトッププレイヤーが魅せる様々なアイデアや観客を虜にするプレーなども、この技術があってこそのプレーだと思います。

様々な環境があり、とても難しいことかもしれませんが、是非!家やトレーニングの際にも、子供たちがボールを多く触れる環境を作っていってください。すぐにその成果は見えにくいとは思いますが、そういったことが後に良い選手を育てることにつながっていくと思います。

2008年06月01日

経験 〜 成長

今回は、2ヶ月前の春休み中に行われたU-10の「熊本遠征」・U-12の「ダノンネーションズカップ」この2つの大きな大会を通じて、僕自身が感じたこと、またその後子供たちに見えた変化について書きたいと思います。

それは、改めてというか…やはり子供たちは様々な経験を通して成長していくものなのだなと感じたことです。
まず、僕が担当しているU-10では熊本県で行われる、九州各地から26チームが集まる大きな大会に参加してきました。相手は全チーム5年生、3・4年生で参加した子供たちにとっては希少な経験です。また、親元を離れての団体行動もその一つと言えます。

そんな大会中に様々な出来事がたくさん起きました。初日の夜にある一人の子が部屋でふざけていて肘に怪我を負ってしまったことに始まり、「自分でできることは自分でやろう」の趣旨で、チームの荷物を子供たちで管理するようにしているのですが、ユニフォームなどを宿泊先のホテルに忘れてきたり、普段(家庭で)から努力はしていると思うのですが食事が思うように食べられなかったりと…子供たちにとって、普段気にすることの無いことまで“考えて行動する”ことはとても辛い経験だったと思います。

さらに、大会の最終日はもの凄い雨と風で気温が低く、僕たちスタッフもあまり経験したことの無い寒さの中での試合でした。すると子供たちは、次第に試合に対するモチベーションが下がり、「最後の試合は出たい選手が出ろ」とあえて厳しい言葉をかけたのですが、“じゃんけん”で決め勝った子は複雑な表情を浮かべていました。(笑)しかし、そんな状況の中最後まで真剣に戦った子供たちは本当によく頑張ったと思います。

この大会を通して子供たちは色々な失敗をしました。真意が伝わったかどうかはわかりませんが、僕も怒ったりもしました。しかし、子供ですから“出来ないことがあって当たり前”というのは常に思っていますし、同じ失敗を繰り返し時には怒られることもありますが、このような失敗という経験から何かを学んで次へ生かしてもらえればそれで良いと思っています。

次にU-12が参加した「ダノンネーションズカップ」ですが、Jリーグの下部組織20チーム・東京都ブロック選抜16チームの計36チームが集まり、なんと!優勝チームはFIFA公認のフランス世界大会へ日本代表として参加できるという、小学生年代で唯一「世界」が経験できる大きな大会です。そして川崎フロンターレU-12は、見事!"優勝"を果たしました!

実は前記した熊本遠征へ行っていたときに行われていまして、この大会を観ることはできませんでした。遠征から帰って来て保護者の方から頂いたVTRを観ました。正直、ゲーム内容や技術的にもまだまだ足りないところはたくさんあるなと思いました。しかしそれで当然ですし、この年代で完成されるわけでもありません。ただ、決勝でPK戦の末、優勝が決まった瞬間に流していた子供たちの涙を観ると、VTRとはいえ僕自身感極まるものもありましたし、子供たちは本当に良く頑張ったと思います。また、U-12"一期生"の彼らが成し遂げたこの成果は本当に素晴らしいことだと心から思います。

これから子供たちは「世界」に触れることになり、この年代で国際大会を経験できることは、彼らにとってかけがえのない財産となるでしょう。是非、子供たちにはこの国際大会でたくさんの経験を得て欲しいなと思います。

その後、U-10・U-12の子供たちは共に、またひとまわり大きく・強く成長したなと思います。一人一人が意識高く練習に取り組んでいますし、これも様々な経験を得てのことでしょう。これからも、喜び・悲しみ・苦しみ・楽しみ・時には失敗をして怒られることもありますが、様々な経験を通して日々成長していって欲しいなと思います。

2008年08月01日

結果

『結果』これは、どんなことでもそうですが、スポーツをする者にとって切り離すことの出来ないものだと思います。

サッカーの試合でも“勝敗(引き分けもありますが)”は付き物で、勝つチームもあれば、負けるチームもあります。当たり前ですが、これが結果として出てしまいます。
しかし、僕は勝敗だけがすべての結果だとは思いません。もっと言えば現在、小学生年代に関わっている僕は「勝敗の中にある細かい部分の結果」に目を向けて行きたいと思っています。
細かい部分とは何か? 例えばゴールを決められた、ボールの持ち方やボールの置き所を状況によって変えられた、3人・4人抜けた、観えるものが増えた、逆の足でボールをコントロールできたなど何でもいいのですが、今まで出来なかった事が出来るようになったり、練習したことが試合で出せた、これも結果なのではないかと僕は考えます。

先日、“かわしん杯”といって小学4年生以下の大会なのですが、川崎市67チームが参加する大きなこの大会で、優勝という結果と共に僕はある結果を得ることが出来ました。
それはこの大会を通して子供たちが、今まで練習で取り組んできた“技術”を思う存分プレーで魅せてくれたということです。もちろん失敗もたくさんありましたが、それでも子供たちはチャレンジし続けました。また、今年の準決勝・決勝はあのトップチームがプレーする聖地!等々力陸上競技場での試合でしたが、観客が見守り、緊張せざるをえない状況の中、自分たちのプレーに自信を持ち、観ている人たちから「おー!」という歓声が多く聞こえてきました。小学3年生・4年生の子供たちが観客を驚かせたことは、本当に素晴らしいことだと思います。もちろん、これには子供たちが日頃の練習から意識高く取り組んできた成果ですし、本当に大きく成長したと思います。

この大会を通して巧くなっていった子供たちの姿を見て、僕の中では1つの結果を出せたと自信を持って言えます。
もちろん、勝敗も大事です。当然子供たちは勝ちたいと思ってプレーしていますし、勝つことで子供たちが得ることは本当にたくさんあります。また、僕自身も監督という立場で勝ちたくない訳がありません。しかし、原点というか、指導者としての本質は選手を育てることだと思います。特に小学生年代に携わっている僕たち指導者の最終的な『結果』は今すぐに出るものではないような気がします。

これからも勝敗という結果ももちろんですが、試合や練習の中にある小さな結果にもこだわって行きたいと思います。

2008年10月10日

ダノンネーションズカップ

今回は、先日フランスのパリで行われた、「ダノンネーションズカップ」世界大会での報告と、U-12の子供たちの様子について書きたいと思います。この大会は、世界の40カ国が参加するU-12年代の大会で、川崎フロンターレU-12は“日本代表”として参加しました。

大会形式としては、40チームを5チームずつの8グループに分け予選リーグを戦います。その後、予選の1位・2位トーナメントで1位〜16位を、3位・4位トーナメントで17位〜32位を、5位のチームは2グループに分け再びリーグ戦を行った後に33位〜40位の順位決定を行います。また、予選リーグは1試合15分1本(ハーフタイムなし)、順位決定戦は20分1本で行われ、決勝戦のみ10分ハーフの1試合20分で行われます。

川崎フロンターレU-12(日本)は、予選リーグで「オーストリア・モーリシャス・ウルグアイ・アメリカ」と同じグループになりました。初戦のオーストリアには0-0の引き分け、第2戦モーリシャスには2-0で勝ち、第3戦のウルグアイにも2-0と勝ちを収め、つづくアメリカには1-1で引き分けますが、2勝2分けの1位で予選を通過しました。当然!優勝を目指し臨んだ決勝トーナメントでは、1回戦でロシア(今大会2位)に1-2と惜しくも敗れ、9位〜16位の順位トーナメントに回ります。その後、スイスに2-0・トルコに1-1(PK3-2)と勝ち進みましたが、最終戦の南アフリカ戦では0-5で敗れ、川崎フロンターレU-12は“10位”、優勝は地元フランスという結果で幕を閉じました。

子供達は今大会、もちろん優勝を目指していましたし、試合を通じてそれは強く伝わってきました。ロシア・南アフリカに負けた時には涙を流している子もいました。しかし僕は、“10位”というこの結果は非常に素晴らしいことだと思っています。なぜなら、子供たちは本当によく戦いましたし、今ある最大限の力を十分に発揮していたと思うからです。当然良いときもあれば悪いときもありましたが、常に前から相手にプレッシャーをかけ、ボールを奪えばゴールを目指し、攻守の切り替えが目まぐるしいサッカーを展開していました。試合を重ねていくにつれ、チームが1つになっていくのも感じましたし、子供たち1人1人が一段と大きくなったような気がします。

また、サッカー以外のところでも“世界”を感じたのではないかと思います。なれない環境(親元を離れての団体行動・食事・言葉)の中、食事の面では僕自身もフランス料理という良いイメージを持っていたのですが、想像とは大きく違い、子供たちは特に苦しんだのではないでしょうか(笑)
他の国の子供たちのコミュニケーションの積極性に圧倒され困っていた子もいましたが、時間と共に自分たちから会話をしてお互いの名前を覚えあったり、中には最終日にユニフォーム交換をしている子もいました。“サッカー”という1つのスポーツを通じて、こんなに多くの国々が繋がっていることを子供たちは感じたのではないかと思います。

この世界大会を通じて、子供たちは本当に多くの経験をしたと思います。前々回のコラムでも書きましたが、こういったサッカーやそれ以外での経験を通してこれからの成長に繋げて行って欲しいと思います。
また、僕自身も“世界”を感じてきたので、それはまた僕なりに分析をし、感じたことを次回書きたいと思っています。

2008年12月19日

ダノンネーションズカップ2

今回は、前回のコラムで書いた“ダノンネーションズカップ”で、僕自身が世界の少年サッカーを観て感じたことを書きたいと思います。

ダノンネーションズカップは、世界40カ国のチームが集まる世界大会で、組み合わせの関係上観られない国もありましたが、多種多様なサッカーが展開され、僕自身も色々勉強になりました。書きたいことはたくさんあるのですが、その中でも「世界と日本の“技術”・“戦術”の違い」に絞って書きたいと思います。

まず“技術面”ですが、世界の子供たちに比べると日本の子供たちの方が、ボールを非常に丁寧に扱っている印象がありました。止める・蹴る・運ぶといったプレーが“巧い”と感じましたし、技術レベルは高かったです。しかし、世界ではそもそも“技術”という定義が、日本とは違うとも感じました。
例えて言うと、日本ではリフティングやコーンドリブルなど自分の意図したところに止められたり、蹴れたり、運べたりする選手を技術が高い・巧いと言われがちですが、世界ではあくまで“ゲーム”、対相手がいる中でどういうプレーを選択するのか、同じ止める・蹴る・運ぶといったプレーが相手の状況によるものであったと感じました。

次に“戦術面”ですが、まずどこの国も非常に戦術的であったと感じました。特に今大会は、ダノンカップ独自のルールがあり、ゴールラインから13メートルの位置にラインが引かれ、そこから先(相手ゴールエリア)でないとオフサイドが適用されないルールであります。これにより、どの国々もFWをこのライン付近に張らせて、早めにボールを前線にフィードし攻めるといった戦術を行っていました。こういった戦術的な戦いは近年、日本でもよく行われていることだと思います。僕自身も色んな試合を観てきましたが、すごいなと、大人みたいなサッカーをする小学生のチームがあることに驚きもしました。しかし、逆にそのことに対する怖さも感じました。日本では、小学生の年代から細かいことまで教え、ポジショニングや、時にはそのチームの指導者に言われるがままのプレーを選択し、正解探しといったプレーが多く見られます。
海外のチームはというと戦術自体は非常にシンプルで、教えている印象もありましたが、それは基本的なことであり選手自身がゲームの中でチャンス・ピンチを感じて判断し、動いていたように感じました。
今大会は9人制でしたが、チャンスと感じたら、時にはポジションにこだわらず相手ゴール前に5・6人入ってくることもありましたし、戦術的な戦いの中にも“個人”を尊重し選手達自身がゲームを感じてプレーしていた印象がありました。

補足ですが、今大会優勝したフランスに関しては、非常に個々の能力・技術が高く、その上で戦術的な戦いをしていたと感じました。また、いわゆる強豪国にはストライカーの要素を持った選手がいて、能力・技術・動きの質が高く自分で勝負を決められる選手がこの年代でもいたのが印象的でした。また、“日本”という観点から見た場合、僕が思うのは、戦術が先行しすぎていて一番の基礎となるべく個人の力(個性)が失われているように感じます。今大会でもU-12の選手達が積極的にドリブルでチャレンジした場面がありましたが、能力や体格では劣る相手でも、ボールコントロールと一瞬の駆け引き(タイミング)で相手を翻弄し、そのプレーがチャンスに繋がり、ゴールに結びいた場面がありました。日本が世界に通じることを証明したプレーだと思いました。

なかなか書きたいことがまとまらず、伝わりにくかったかもしれませんが、日本の良さである“技術”(ボール扱い)をもっともっと“ゲーム”に生かす事を考えていけば、さらに世界に近づけるのではないかと僕は思います。
また、サッカーを伝えていく事と共に“選手自身”がゲームを感じられる環境づくりも指導者として大切なことではないかと思います。

このような素晴らしい経験を与えてくれた選手達を始め、たくさんの方々に感謝することと共に、この経験を無駄にしないよう僕自身も成長していきたいと思います。

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