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相馬直樹 アーカイブ

2006年02月28日

近況報告

 ようこそ相馬直樹のコラムコーナー『相馬の目』へ。今回のコラムを皮切りに、年6回という回数ではありますが、僕自身の目を通じていろいろとフロンターレを、それと僕の感じた他愛もないことなんかを語っていけたらななんて思ってます。

 まずは僕自身の近況から報告します。現在はというと今年から始まる新しい仕事の準備段階って感じです。今年に限って言いますと、サッカーの解説や雑誌の取材、サッカークリニックなどといったことをしていこうと思ってます。それから指導者のB級ライセンスも今年中に取ろうと思ってます。来年以降のこととしては、昨年の引退会見の中でも話したのですが、すぐに現場ということではなく、外からサッカーを見て、サッカーや社会を学びつつ、セカンドキャリアにおける自分の夢、目標というものを見定めていければいいかなと思ってます。
 準備段階ということで、今までお世話になった人や、新しい仕事、違った分野の人などいろんな人と、選手だった時よりも積極的に会うようにしています。まあそうやって人と会って聞かれることは「で、これからどうするの?」ってことです。そこでの僕の答えは「フリーターですかね。まあ、ニートと呼んでもらってもいいですけど。(笑)」なんて答えてます。事実まだきちんとした仕事がある訳ではないので、あまり笑い事とは言えないのですが。

 そんな中2月の初旬にキャンプ地巡りをしてきました。たくさんの日にちがあった訳ではなかったのですが、短い日程のなか6つものチームを見てくることができました。もちろん我がフロンターレも見てきましたよ。宮崎綾町での1次キャンプ中の6日目というところでしたが、みんな元気にトレーニングしていました。そこまで午前午後の2部練習をずっと続けてきていたし、ちょうど疲れはピークというところなはずなのに、よく声が出ていていい空気がピッチに流れていたので、ここまで順調に来ているなということを強く感じました。その中で特にうれしかったのはオニが元気にトレーニングしていたこと。今年に懸ける思いもあって年始から境トレーナーと一緒にリハビリしていたのも知ってるので、キツいキャンプをここまでクリアできていることは僕(ケガのつらさはよくわかってる!)にとってもうれしいことでありました。フロンターレに移籍してから引退するまでの2年間、僕はいろいろな面でオニに助けられたことが多かったので、今年は本当に頑張ってほしいなと思ってます。

 今回初めて実際にピッチの外から練習を見るということになったのですが、ものすごい違和感があるんですね、これが。外から選手を見ているという、なんと言ったらいいのか分からないんですが、変な焦燥感、間違ったところにいるような感覚、言いようのない違和感。特に強く感じたのは今回一番最初にキャンプを見に行った代表キャンプの時でした。ZICOに挨拶にいくというのが大きな目的であったのですが、そのこととは別に、目の前でキツいフィジカルトレーニングを必死になってこなしている選手達を見ながら、「オレ何やってるんだろう。」「あれ?オレ何考えてんだろう?」なんて思ったりしました。さらに追い討ちをかけられるようなことが。実はプレスというものにはとても厳しい制約があって(特に代表は厳しい)、ある線を越えてピッチ側、選手側へ行くことはできないのです。超えることのできない一本の境界線に圧倒的な威圧感を覚えました。このとき初めて引退したという事実を突きつけられたような気がしました。「本当にこっち側の人間になっちゃったんだな。」という寂しさ、もどかしさみたいなものがこみ上げてきて、引退というものを皮膚で感じたりしたのです。

 それにくらべるとフロンターレは本当にアットホームで良かったですね。練習着貸してもらって、一緒に練習参加させてくれるんじゃないかぐらいの雰囲気もあって。もちろんプレス規制もないし(代表とフロンターレのプレス数を考えたら当然と言えば当然か…)、ピッチのすぐそばで見ることもできたし。さらにはホテルに行って、温泉にみんなと一緒に入って、昼飯までごちそうになっちゃったりして。ちょっとやり過ぎかなって気もしたんだけど、そういう場所があるのはうれしいなって。「ああ、最後のチームがここフロンターレで良かったな」ってしみじみ思ったりしました。

 そのフロンターレとこの度『クラブアシストパートナー』契約を結ばせていただきました。『クラブアシストパートナー』って何?って思った人がたくさんいるでしょう。実は僕もその一人なんだけどね。名前はどうでもいいんだろうけど内容を大まかに言うと、フロンターレの広報活動、普及活動に協力していきますということです。クリニックなんかにも参加させてもらうことになると思います。実のところ今の僕にはボールに触る機会がなかなかありません。結構寂しい思いとともに、ボール思い切り蹴れるかなぁなんて不安もあったりする訳ですが、こういった形でボールを蹴りながら子供達とふれあう機会を持つことができるということで、願ったりかなったりのこととなりました。そのほかでも皆さんとお会いできる機会もあるかと思います。このコラムを含め、「これからもよろしくお願いします」です。それでは次回をお楽しみに!

2006年04月29日

Vamos Jogar mais

先日初めてフロンターレ試合の解説をしました。4月16日のJリーグ第8節対大宮アルディージャ戦です。試合の方は序盤こそ少しもたついたところがあったものの、20分過ぎからは圧倒的に我らがフロンターレペース。そこから先制するまでに時間がかかってしまったのですが、後半17分に箕輪の今季初ゴールが出るとあれよあれよと3得点。その直後に与えてしまった1点はちょっといただけませんでしたが、全体的にはすばらしい内容。開幕戦以来となるホームでの勝利を見届けることができました。久しぶりに訪れた等々力競技場は満員とまではいかないまでも、ようやく暖かくなってきた陽気もあってかまずまずの入り。そしてあの“Gゾーン”の盛り上がり、雰囲気の良さも健在で、我が家に帰ってきたかのような気持ちになりました。

そんなスタジアムで向島さんと久しぶりにお会いしました。向島さんといえば交互にこのOB'sコラムを担当しているのですが(ベティも忘れてないですよ)、そのコラムの中での向島さんの『愉しんで!』という内容にとても共感できることが多かったので、その楽しむということについて今回は書きたいなと思います。

その『Tatsuru's Check』の中でトリノオリンピックでの荒川選手のことを取り上げていたのですが、楽しむ姿勢というのはスポーツ全般において実際にとても重要なことだと思います。国のためとかそういったことは抜きにして、まず自分が楽しむということ。そもそもの話ですが“スポーツ(sport)”という言葉には“遊び、楽しみ”といった意味があります。例えばサッカー、フットボールというものは元々大衆の娯楽でした。プレーすることにおいても見ることにおいてもです。この“プレーする(play)”という言葉にも“遊ぶ”という意味があります。また試合のことを“ゲーム(game)”とも呼びますよね。“ゲーム(game)=遊び”でもあります。実はスポーツというのは遊びであり楽しむべきものなのです。

観戦する皆さんにとってのいいゲームというものにはふたつの要素があると思います。選手たちが一生懸命プレーする姿というのは心を打つものですね。まずはこういったピリピリと緊張感のある試合がひとつ。そしてもうひとつにワクワクする試合というのがあると思います。常にアイディアを駆使し、次にはどんなプレーをしてくれるんだろうと思わせてくれるゲームです。こうしたゲームには選手たちに相手をやっつけるアイディアが溢れ出てきます。「こんなフェイントで抜いてやろう」とか、「こんなパス通されたら相手は嫌がるだろうな」といったアイディアです。こういったものは楽しんでいるからこそ出てくるものだと僕は思ってます。選手としてもサポーターとしても、緊張感とワクワク感が程よくブレンドされた試合というのは最高のものだと思います。

そうした楽しんでプレーするということが身に付いているのがブラジル人選手です。彼らはどんなにプレッシャーをかけられようともビビりません。そこをこじ開けてやろうとします。僕はプロ生活12年間をずっとブラジル色の濃いクラブでプレーしてきました。その中で感じたことのひとつに、ブラジル人はミスを怖がらないということがあります。さらには自分がミスしても次にまた自分によこせと周りに要求できる強さ、図太さもあります。普通上手くいかなくなるとどうしても消極的になり、自分からボールを触りにいくことができなくなるものです。僕も現役時代、何度もそういうことがありました。しかし彼らは違います。何回失敗しようとも自分で相手をやっつけてやろうとするわけです。自分がプレーするのです。自分で相手をやっつけようとするのです。

昨年まで一緒にプレーしていたアウグストもそうでした。明らかにコンディションが良くないという時でも自分からフェイントかけて勝負して、ボールを取られても取られても仕掛けて、最後には一発得点に絡んで結果を残す。サッカーに対する姿勢です。怖がらないで、楽しんで、アイディアを出すのです。多くのブラジル人監督とも一緒に仕事しましたが「自分からプレーしなさい」ということをよく言っていたのを思い出します。それから「自分のパーソナリティを出せ」とも。きっとそういうことを重視しているし、そうした姿勢が身体に染み付いているのでしょう。

そういった意味では先日のフロンターレのゲームは見ていて楽しい試合でした。ワクワクさせてくれたと思います。みんなが仕掛けていって、たくさんのアイディアがピッチの上に散らばっていました。フロンターレの等々力でのホームゲームでは、ワクワク感で盛り上がって勝つことが、僕がいたころからも多かったと思います。きっと選手もサポーターも「ともに楽しもう」という気持ちで戦いに臨んでいるのです。それがあのスタジアムでのワクワク感につながっているのではないでしょうか。

2006年08月26日

ワールドカップ

みなさんもご存知のとおり、ワールドカップに行ってくることが出来ました。本場ドイツでのワールドカップはいろんな面で素晴らしかったですね。ホスト国ドイツがいい形で勝ち進んでいただけに、ドイツ国内での盛り上がりも非常にあって、さすがサッカーどころと思わせる大会となりました。

僕自身は直接スタジアムで9試合を観戦してきました。もちろん生でトップレベルの戦いを見ることが出来たのもよかったのですが、それ以上に、今までのピッチとは違う雰囲気、盛り上がりというものを肌で感じることができたことは、僕にとって非常にいい経験でした。
その9試合のうち僕にとってのベストゲームは、準々決勝フランスvsブラジル戦です。このゲームでのジダンはまさに神がかり的で、全盛期以上のプレーを見せてくれました。あのブラジル代表を手玉にとってしまうジダンのプレーを目の前で見ることが出来たことは、まさに幸運以上の何者でもないといっていいでしょう。僕はジダンのファンなのですが、キックオフ前にはこの試合が彼の引退試合になるんだろうなとなんとなく考えていました。最後の輝きを放つものの、王者ブラジルには勝てないのではないかと。僕個人としてもこの観戦の翌日にドイツを立つことになってましたから、最後に見るゲームがあのジダンの引退試合になるんだななんてちょっと感傷的になってたわけです。今考えればブラジルがここでジダンに引導を渡してしまえば、決勝でのあの退場劇もなかったのになんて思ったりもしてるんですけどね。

さて今回のワールドカップで感じたのはなんといっても個の強さ。身体能力という話だけではすまされない、個人個人の戦う力というものが際立っていたように感じました。これは2002年日韓大会のときもそうでしたが、11対11の戦いの前に1対1がベースにあるということを強く感じました。今大会カンナバーロやガットゥーゾといった選手たちの活躍が目に付いたことにもそうした流れは表れています。球際の争い、ボールの奪い合いでの身体の使い方といった部分に、日本と世界との差を感じました。
もうひとつ世界との差としてあげたいものに、パススピード、キックというものがあります。これも以前から言われていることなのですが、世界のパスはひとつスピードが違います。また今大会でのミドルシュートの多さを思い出してください。いかに強く、正確に蹴ることができるか。もっと日本も追求していかなければならない部分であると思うのです。
キックというものの技術が上がればパスのスパンは長くなります。より遠くにいる味方にパスできるようになるのですね。最終ラインからのなんとなくのフィードではなく、味方FWの動き出しに合わせたパスになるのです。クロスにしてもそうです。今大会非常に感じたのが各国のセンターバックの強さでした。本当にクロスボールに対して強く、上でも下のボールでもはじき返します。そうしたこともあって、きれいなセンターリングからのゴールというものがあまりありませんでした。それだけの大きく高い壁を前にどうゴールを奪うのか。日本人の身長から考えれば、そのボールの質というものを極めていかなければならないことは明らかでしょう。

サッカーは日本語で「蹴球」と書きます。ボールを蹴るというスポーツということですね。ひとつこれは本質をついた訳語であると思います。キックするということがいかに重要な要素なのか。レベルが上がればお互いのプレスもきつくなり、なかなかドリブルやショートパスで相手を切り裂くことは難しくなります。そうしたとき、どうやってゴールに近づくのか。一本のスペシャルなキックが必要なのです。もちろん受け手の動き出し、戦術的な部分などそうしたパス、キックが活きるために必要な要素はたくさんあります。しかし基本としてボールを正確に、強弱も長短も合わせて蹴る技術を持っていないと話になりません。
どうしてこの部分が日本人にとって大切なことかというと、ここが世界と戦うための武器になるのでは思ったからです。日本がフィジカル勝負に出ては勝ち目がないことはみなさんもお分かりでしょう。もちろんその部分を逃げてはいけません。球際での争い、ハードワーク、1対1で打ち勝つ力というものを求めていく必要があります。ただそれが日本人の長所にはなりにくいことは明白です。
日本の新しいセールスポイントをどこに求めるかというと、キックではないかと思うのです。日本人は器用ですし、細かいことは得意です。しかし本当にサッカーの戦いの場で生かされるものなのか。細かいテクニックを駆使して相手を外す、かわす、相手の逆を取るなどスキルフルな日本人好みのプレーというものがあります。しかしこれは相手のボディコンタクトで無力化されてしまうことが多々あります。そういったことを含め、ボールを扱う技術を伸ばしながらどう日本の武器にしていくかと考えたとき、キックのレベルを上げることではないかと思うのです。それも近くだけでなく、遠くまで。弱いキックだけでなく強く蹴っても正確にということです。
ボールを完全な支配下に置いたとき、そうはボディコンタクトは受けません。ファールになってしまうからです。ルーズボールを作らなければいいのですが、パスがずれると相手に身体をぶつけられてしまいます。正確に強く、遠くの広いスペースの選手に出す力があれば、余裕を持って受けた選手はまたそこでアイディアを発揮することが出来るでしょう。正確なキックで早くボールを動かす。日本人のテクニックを生かす方向がここにあるのではないかと思うのです。

自分も現役時代「オレはうまく蹴れないな、差があるな、何とかしなきゃ」と、世界のプレーを見るたびに思っていました。今回のワールドカップを見て同じ思いをした選手もたくさんいるはずだと思います。その成果が表れてくることを期待しながら、Jリーグ後半戦に注目していきたいと思ってます。

2007年01月22日

ライバルはフロンターレ!

新年明けましておめでとうございます。2007年を迎えて、みなさんはどのようにお過ごしでしょうか?僕は昨年に引き続き、クラブアシストパートナーとしてフロンターレに関わらせていただくことになりました。
ということでこの『相馬の目』も、引き続き連載させていただくことになりました。昨年よりも多くの回数アップしていきたいと思ってますので、よろしくお願いいたします。

さて昨シーズンのフロンターレの大活躍には本当に心躍らされましたね。その中でもリーグ戦2位という成績は本当に素晴らしいものでした。振り返ってみると昨季のこの活躍は、その前年までのベースの上に新しいものを積み上げることができたことと、それまでの課題の克服をできたことが生み出したものだと思います。特に、落ち込みを回避する精神的な部分での成長には目を見張らされました。
一昨年は、レッズに敗れて(@埼スタ)優勝の可能性が消滅してしまってから元気のない戦いが続き、気づいてみるとリーグ戦8位で終わってしまいました。その時僕自身もチーム内にいましたし、大変不甲斐なさを感じていましたが、今季はその部分での成長を強く感じました。清水に敗れ優勝がなくなった後に、鹿島、C大阪との残り2試合を、精神的に切れることなく勝ちきることができたことは、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場権を得たこと以上に価値のあることでした。

着々と、一段一段ステップアップしてきた川崎フロンターレにとって、今年は更なる上昇気流に乗って新たなチャレンジをしていく年となります。前述したACLでの日本勢初となる予選リーグ突破、そしてアジア王者になって12月のクラブワールドカップに出場することも、次の目標として見えています。そして何と言っても、今年獲ることができなかった国内でのタイトル奪取という大きな目標があります。昨年は惜しくも準決勝で敗退したナビスコカップ、2位だったJリーグ、そして天皇杯と、今年はどれかひとつを勝ち獲って欲しいものです。

僕自身もフロンターレに負けないよう、コツコツと頑張って積み上げていかなければなりません。昨年は引退して1年目ということで、右も左も分からないなか手探りで始めた選手引退後の生活。まずは生活に慣れること、仕事に慣れることで精一杯でした。特に解説の仕事では、オニとかからも最初のうちは「カタいよ~」みたいなことを言われてましたし…。
ちょっと要領がつかめてきたかなという頃、サッカー界最大のイベントワールドカップに突入して、ドイツまで行くことが出来ました。がしかし、ここでも難しいことがたくさんありました。特に大変なのが、「入り中」と呼ばれる現地レポートですね。情報番組やニュース番組の中で、「現地の相馬さーん」と呼ばれる例のヤツですが、これがまた本当に難しいんですよ。まずはカメラに向かってしゃべるってことになかなか慣れなかったですね。それから衛星中継なのでディレイ(遅れ)というのがあって、それも難しかったですね。それでいて、時間(尺)も決まってるから、常にそれを意識しながらしゃべらなきゃならないこともあって、毎回毎回本当に一発勝負という感じで必死になっていたのを思い出します。

それから書く仕事(こうしたコラムや各種媒体でのゲーム分析的なものや、自身のホームページでのブログなど)、サッカーを教える仕事(サッカー教室やイベントなど)、JFAアンバサダーとしての活動、B級指導者ライセンス取得の講習会、そして解説を中心としたテレビでの仕事と、おかげさまでたくさんのことをさせてもらいました。こうして多方面の仕事、活動をさせていただけたおかげで、本当にたくさんの方々と出会うことが出来たんじゃないかなと思います。選手時代はチームの中での人間関係だけで終わってしまうことが多かったので、これからもっともっとそういったものを大事にしていかなければならいんだなということを強く感じました。
ただ引退を決めた一年前のことを思い出すと、今やってることが本当に自分の力になっているのかなと時々思います。「自分のやりたいこと(目標、夢)を見つけたい」と言っていたのですが、残念ながらまだ自分の中で明確な像を結んできていません。ボンヤリとしたものがいくつかあるんですが、ひとつに絞りきれていないという状態でしょうか。焦ることはないと思っていますが、毎日に追いかけられすぎて、大事なことを見失わないようにしたいなというのが今年の目標でしょうか。

今現在、目に見える目標となるものはありません。でも日々コツコツとやっていくことでとにかく自分の地力を付けていくのが大事なんですよね。選手のときは、いいにせよ悪いにせよすぐ結果が出たものでしたが、今はそういう目に見える結果はないんだけど、実は日々試されてるんですよね。そういった意味では、とにかく準備をいつでも怠らないことが大事なのかなと思ってます。この準備の大切さっていうのは、選手だったときも一緒だったんだけどね。
そういう風に考えて、勝手にフロンターレを僕のライバルにしちゃいます。フロンターレは国内タイトル、ACLと大きなチャレンジが待ってますが、僕はどれだけ流されずにしっかり準備をして、日々力を付けていけるかということになると思います。どっちがいい準備できるかのか?ぜひフロンターレには、僕を怠けさせないような大活躍を今年も見せてもらいたいですね。

2007年03月20日

言い訳を作らない

今年も開幕戦を勝利で飾った我らがフロンターレ。プレッシャーのかかる開幕の舞台で、しっかりとした戦いの末に手にした大きな1勝でしたね。等々力に駆けつけた多くのサポーターも楽しい時間を過ごせたのではないでしょうか。

そしてみなさんもご存知のとおり、今季のフロンターレはアジアチャンピオンズリーグ(ACL)という初めてのアジアタイトルにも挑戦しています。インドネシアのアレマ・マランとのACL予選リーグ初戦でも、無事3−1で勝利を収めることが出来ました。アウェイでの初戦ということで相当難しいゲームでしたが、白星スタートを切れたことで、選手もスタッフもサポーターもホッとしているところでしょう。

僕自身も現役時代にはアントラーズの一員として、第一回ACLだけでなく、アジアクラブ選手権やアジアカップウイナーズカップといった、現在のACLの前身に当たる大会にも何度か挑戦してきました。しかし、一度も頂点に立つことができず、99年のカップウイナーズカップでの3位というのが最高の成績でした。それでも03年のA3カップでは優勝したのですが、それは日本、韓国、中国という東アジア3カ国のみでのタイトル。結局僕はアジアNo.1になることは出来なかったんですよね。

僕のアジアへの思いはそれだけではありません。アジアでは代表としても何度も戦ってきたのですが、92年バルセロナ五輪最終予選では5位(予選通過できず)、96年アジアカップでは決勝トーナメント1回戦で敗退、98年フランスワールドカップ予選では予選通過こそしましたが、トップ通過はできませんでした。そういった意味でも、今年のフロンターレにはどうしてもアジア覇者になってもらいたいという強い思いがあるのです。

それでは、フロンターレが入っているグループFを見てみましょう。このグループは韓国の全南ドラゴンズと、東南アジアのタイのバンコク・ユニバーシティとインドネシアのアレマ・マランの2つに分けて見ることが出来ます。なかでも全南ドラゴンズが実力的に最大のライバル。その韓国とはホーム、アウェイの環境面での差というものはあまりありません。時差もなく、気候もほとんど変わらず、移動もそれほど苦になるものではありませんからね。ですが、こうした地理的な条件は全南ドラゴンズにとっても同じ。何がホーム、アウェイの差をつけるかと言えば、スタジアムの雰囲気ということになるわけです(みなさんはどうすれば良いか分かりますよね)。実際にはこの直接対決が大きく予選リーグ突破を左右するでしょうから、4月11日のアウェイと、4月25日等々力での2連戦が大きなポイントになるのは間違いないでしょう。

東南アジア勢は実力的に劣っていますが、油断をすると痛い目に合わされてしまう可能性も否定できません。先日のアレマ・マラン戦は苦しみながらも勝利を収められましたが、バンコク・ユニバーシティとのアウェイでの対戦には十分な注意が必要となります。時差があり、移動距離も相当あり、気候も大きく違うこの地域のチームは、総じて日本での戦いでは、拍子抜けするようなゲームをすることがあります。3月21日に等々力で対戦するバンコク・ユニバーシティはそういった姿を見せるかもしれません。ですが、グループリーグ最終戦となる5月23日のバンコクでのチームは全く別のチームと考えておいた方がいいでしょう。02−03シーズンのクラブ選手権で、バンコクの地で痛い目にあわされた私の経験からも、ホームでのタイのチームは侮れない存在であると断言できます。

できればこの最終戦を待たずに、全南ドラゴンズに連勝してリーグ通過を決めておくのが望ましいでしょう。ですが、ここで過酷なスケジュールが問題となってきます。この時期にはJリーグでもビッグゲームが続きますから、本当に厄介ですね。4月7日にvsガンバ@万博、15日にvs清水@等々力、21日にvsレッズ@埼スタと、ACLでの連戦と合わせると、5戦連続で決勝戦がやってくるような感じになってしまうわけです。

こうなったときに大切なのは、当たり前のようですがコンディションということになります。なかでも大切なのは精神的なコンディションではないかと僕は思っています。インドネシアでの初戦ではメチャクチャ過酷な移動をこなした上で勝利を収め、そこから戻ってきての神戸戦でも、退場で数的不利になるなど、いつ身体も心も折れてしまってもおかしくないような状況の中で、粘り強く引き分けました。こうした精神的な強さを発揮できたことは、選手たちにとってもチームにとっても大きな自信となったはずです。
ですが、4月の過酷な連戦の時期にはもっともっと厳しい状況も出てくるでしょう。そうしたときに、一人ひとりがいろんな状況に対して、決して「言い訳を作らない」ということがとても大切になると僕は思っています。この「言い訳を作らない」というのは、自分が現役時代に出来なかったことだったのですが、スケジュールやコンディションや環境といった、思ったようにいかない、想像以上に厳しいということはアジアに出て行けばいくらでもあることです。しかし戦う前から、「この日程きついよ」とか、「こんな移動したら、走れるわけないよ」とか、「こんな点差、ひっくり返せないよ」とか。やる前から言い訳を自分の中に作ってしまっていたんじゃないかなと思うんですね。今さらですが、それこそが自分がアジアで勝てなかった最大の原因なのではないのかと思ったりするわけです。

肉体的コンディションが厳しくなるのは当然でしょう。しかしそれを補って余りある精神力が必要なのです。それを持てなければアジア王者になる資格もないでしょうし、Jリーグを獲る資格もないとも言えます。厳しいことを言うようですが、ぜひともそうした姿を見せて欲しいですし、今のフロンターレはそれだけの強さが身についたチームになったと信じています。それでも弱さを見せることもあるかもしれません。そうしたときには、サポーターのみなさんの力が必要なのは言うまでもありませんね。特に4月25日(ひと月以上も先のことですが)の等々力での全南ドラゴンズとの大一番では、ぜひとも多くのサポーターに集まってもらって、フロンターレに大きな力を貸してもらいたいですね!

2007年05月20日

基本技術の差

前回ACLのことを僕は書いたが、我らがフロンターレは堂々と予選リーグ突破を果たしてくれた。選手、スタッフ、クラブ関係者、そしてサポーターのみなさんには、おめでとうとここで言わせていただく。簡単ではないグループリーグを突破したことは、本当に素晴らしいことであるし、胸を張っていいことであると思う。

間違いなくフロンターレの選手たちは成長している。特に最大のライバルといわれた全南ドラゴンズに一歩も退かない戦いを挑み、内容的にもスコア的にも素晴らしい勝ち方をしたことは自信にもなっただろう。振り返ってみると、初戦のアレマ・マラン戦での苦しみながらの勝利と、ホームで引き分けたバンコク・ユニバーシティ戦が選手たちを大きく育てたのではないか。初めての国際ゲーム、そしてアジア勢と戦いのなかで怖さを知り、そうした中でもポイントを重ねられたことが、全南との対戦に大きく生きたはずだ。

だが、喜んでばかりはいられない。ACLはここからがある意味本番。韓国、中国といった東アジア勢だけでなく、中東の列強たちとも顔を合わせていくこととなる。またナビスコカップ決勝トーナメントでも順調に勝っていけば、まさに9月以降は殺人的スケジュール。その中で、フロンターレらしいゲームをして勝ち上がっていって欲しいし、チャレンジしていきたいところだ。

そのACLの戦いの中で、印象に残る一戦があった。第4節ホーム等々力での全南ドラゴンズ戦だ。キックオフ前から降り始めた雨と、ボールが走りやすい短い芝の影響もあって、なかなかボールが落ち着かない。まるでピンボールのようにボールがめまぐるしく動いていく。だが15分もするとフロンターレの選手たちは、ボールを落ち着かせられるようになる。それに対して全南の選手たちは、ボールをなかなか足元に収められない状況が続いていた。
これを見ていて思い出したのが、95年に僕が初めてブラジル代表と戦ったとき(アンブロカップ)のことだった。0-3で敗れてしまったこの試合。イングランドの地で対戦したのだったが、まあスコア通りと言うか、スコア以上と言おうか。基本技術の差をまざまざと見せつけられたのを今でも覚えている。

ヨーロッパの土は少し粘土質で滑りやすく、またこの日は雨が降っており、ピッチがよく滑って、ボールが走っていたことを思い出す。その中で、ブラジル代表選手たちは足からボールがまったく離れなかったのだ。それもトップスピードで動きながらである。さらに当時の加茂代表監督はゾーンプレスという戦術でプレッシングサッカーを標榜していたから、それなりにプレスがかかっていたはずである。だが、3人ぐらいで囲い込んで完全に「獲れた!」と思うところでも、落ち着いてボールをコントロールされ、簡単にサイドチェンジされたりしたのだった。

なかでもよく覚えているのが、ルーズボールに僕が反応して取りに行ったら、そのボールをトップスピードで拾いに来たジーニョ(当時横浜フリューゲルス)がバックスピンをかけてコントロールして、突破されてしまったシーンである。自分の感覚では、あれだけのプレッシャーとスピードの中では、足元からボールが離れてしまうのが当たり前。絶対にマイボールになると思ってプレッシャーをかけにいったのだった。世界というのはピッチの状態とか関係ないんだな、逆にこういう状況こそ技術の差がはっきりしてしまうものなんだなと痛感したものであった。
話が12年も前に遡ってしまったが、もう一度先日の全南戦に戻ってみよう。この日もスリッピーなピッチ状態だからこそ、技術の差がはっきりと出たのだろう。3-0というのはスコア通りと言っていいだろうか。きっと全南の選手の中には、12年前僕が感じたのと同じようなことを感じた選手もいるかもしれない。それぐらいスタンドの上から見ていても、基本技術の差というものを感じるゲームであった。

勝敗も大切なゲームであったのだが、それ以上にこうした確固とした技術の差を見ることが出来たことは、日本サッカーが進んできている方向が間違っていないという意味で、非常にうれしかった。ただ今回の全南は韓国の中ではスキルで勝負するタイプではないチームだったとも聞く。他の韓国のチームや、中東のチームなどにはフロンターレよりもスキルの高いところもあるかもしれない。サッカーは技術だけでなく、戦術や、フィジカルといった要素や、さらにはもっとも大切なメンタルな要素を必要とする。そういった意味でも、今後のフロンターレのアジアでの戦いを後押しすべく、多くのみなさんにスタジアムに足を運んでもらえたらなと思っている。

2007年07月20日

ゲームを「締めくくる」強さ

今年も早いもので、あっという間に7月に入った。Jリーグも中断期に入り、我らがフロンターレは今季3つ目のタイトル戦、ナビスコカップに臨んでいる。準々決勝第2戦では、延長にまで入る激闘の末に甲府を下し、2年連続のベスト4入りを果たしてくれた。

さてその間に、日本代表の3連覇が期待されるアジアカップが始まった。初戦・カタール戦での、まさかのドロースタートには、オシム監督ほどではなくとも、怒りを爆発させた人も多かったことだろう。あれだけチャンスを作りながらも追加点を奪えず、あれだけボールを支配しながらも最後にセットプレーから追いつかれる。どうしてこういうことになってしまうのだろうか?

それは、ゲームを「締めくくる」、「勝ちきる」、という力が不足していると見ることができると思うのだが、これは今の日本代表だけの問題というよりも、日本サッカーが抱える課題と見たほうがいいのではないかと、僕は思っている。
昨年のワールドカップのことを思い出してみてほしい。オーストラリア戦で、日本代表は残り6分まで1-0でリードしながら、そこから3失点してしまい大事な初戦を落としてしまった。日本中の誰もが、まさか1-3で敗れるとは思ってもいなかったはずだ。

フロンターレがJ1に昇格した2005年のことを思い出してみてほしい。J1の洗礼とばかりに、何度終盤に追いつかれてしまったり、突き放されてしまったりしたことか。僕にとっては選手としての最後のシーズンだったわけだが、勝てないことへのもどかしさを強く感じていたのを、今でも思い出す。こうした例を見るまでもなく、Jリーグの他のゲームでも、1-0で終盤を迎えたときに、残り5分ぐらいの間で1-1に追いつかれる。あるいは1-2にひっくり返るということは、本当によくあることなのは皆さんもご存知のことだろう。

果たして、日本サッカーに必要なことはどういったことなのだろうか。
まずは、追加点を奪い、とどめを刺すということを目指さなければならないのは当然のことだ。1点取ったら自陣に引き篭もって、虎の子の1点を必死で守るというゲームをいつもしていたら、Jリーグというプロの舞台では、誰もお客さんはスタンドに足を運んでくれなくなるだろう。等々力を埋めてくれるサポーターも、そんなフロンターレの姿を期待していないはずだ。ところが、何度も決定機をつかみながらも決めきれないということは、サッカーではよくあること。当然、その決定力という、昔から使い古されている言葉がフォーカスされているわけである。もちろん、決めるべきときに決めて、勝負をつけてしまえれば何の問題もないわけだ。
だがそれがかなわず、1点リードのまま残り5分、10分という終盤に入ったとき、どのようにゲームを終わらせるのか。まさに、そういったゲームを「締めくくる」、「勝ちきる」という力が欠けているのではないかと、僕は思うのだ。1-0のまま終わらせる。あるいは0-0で終わらせて勝ち点1を奪う。そうした我慢強さが必要なのではないかと思うのだ。

守りに入ることを嫌うサポーターは多いかと思う。それは守りに入って守れないことを知っているのだから当然とも言える。だが、守りに入って確実に守れるのであれば、残り5分を、守りながら時計の針を進ませる。安心して、タイムアップの笛を聞くことができるのであれば、何の問題もないはずである。
だが、守りに入る=気持ちが引いてしまう、ということになってしまうことが問題なのだ。気持ちで受身に立つから敵の勢いに飲まれてしまい、追いつかれるわけである。たとえ捨て身で相手が攻めてこようと、精神的に上に立って、強い気持ちで跳ね返す。攻めてる側に、「今日は点取れる気がしないな」と思わせるような、守りの、気持ちの強さが必要なのである。

1点を守りきることができるという強さを認める。そうしたメンタリティ、価値観が、日本の中でも認められるようにならないと、ゲームを「締めくくる」ことはできないのかもしれない。真に強いチームとは、攻めに出たときに確実に点を奪い、守りに入ったときにもゼロで抑えきる。その2つのモードを90分間の中で使い分ける。それこそが、目指すべきところであると思うのだ。
ゴールを攻めていようと、ゴールを守っていようと、気持ちの面では常に強い姿勢を貫く。そんな選手が、サポーターが、日本に増えてくれば、もう一段上のステージが見えてくるのではないのだろうか。

2007年09月20日

Jet Lag

先日の日本代表vsスイス代表(9月11日=日本時間12日早朝@オーストリア)のゲームを見られた方はいるだろうか?劇的な逆転勝利で3大陸トーナメント優勝を決めた試合だ。ケンゴも出場時間こそ短かったが、最後の勝ち越し点に大きく絡むなど活躍してくれた。

そのテレビ中継を見ていた人は気づいてもらえたかと思うけれども、あの試合を解説していたのは僕である。もちろんその前のオーストリア戦(7日=同8日早朝)も含めて、現地クラーゲンフルトのスタジアムから生中継していたので、10日間ほどオーストリアに行っていたわけである。それから昨日帰国したばかりのところでこの原稿を書いてるのだが、実はとにかく時差ボケがひどくて、メチャクチャつらいのだ。

7時間も時差があるんだから、時差ボケがあって当然でしょって思う人もいるかもしれないけど、僕は今まであまり時差ボケとは関係ないタイプだったのだ。選手時代、遠征でいろんなところに行ってきた。ヨーロッパ、南米、東南アジア、中東といろんなところへ行って、いろんな経験をさせてもらってきたわけである(北中米とアフリカにはいまだに行ったことがないが)。出身地がサッカーどころ清水だったということもあって、小学生のときには韓国、中学生ではブラジル、タイと、海外へ行く経験をすでに積んでいた。だけど当時から時差ボケっていうのはほとんど感じたことがなかった。

現役中も同じで、あまり気になったことはなかった。ヨーロッパはもちろん、南米のように12時間もの時差があるところでも、あまりつらくなかった。代表で駆け出しだったころ、当時の先輩たちに話すと「若い証拠だな。オレも若い頃は大丈夫だったけど、今はきつくて仕方ないよ」と言われたことを思い出す。それを考えると、「オレも歳とったのかなぁ」なんて思ったりする。

でもよく考えてみると、一番のポイントは睡眠ではないかと思うのだ。今回12時間かかった帰りのフライトで寝れたのは大体2時間ぐらい。それも朝8時に成田に着く便だったから、ほとんど徹夜状態って感じで、気持ち悪いというか、変な感じというか、嫌な感じは半端じゃない。日本に着いてからも、早く時差ボケ取りたいから昼寝しないように必死で我慢したんだけど、それがまた本当につらくて…。でも、行きの便では半分以上眠れたこともあって、オーストリアに行ったときにはあまり気にならなかった。そう考えると、いつでもどこでも眠れなくなってきたってのが、歳をとったっていう証拠なのかもしれない。

子供の頃からいろいろなところに行ってきたおかげで、移動中はどこでもどんな状況でも眠る癖がついていた僕。実はこれが大きかったんだろうなって思うのだ。バスの狭いシートでも、冷房がかからなくても、周りがいくら騒いでいようとも、いつでも眠れた。だから昔は、時差ボケになることもなかったんじゃないかなと思うのだ。

そういうわけで、今回初めてといっていいくらいきつい時差ボケに悩まされてるんだけど、帰ってきてすぐにリーグ戦を戦わなければならないという選手たちは、本当にすごいとしか言いようがない。自分が現役の時、ここまでタイトなスケジュールというのはたぶん一度ぐらいしか経験しなかったけど、そのときは後半の15分過ぎから本当に走れなくなったのを今でも覚えている。あまり時差ボケを感じない体質だった僕ですらきつかったんだから、時差ボケになりやすい人は相当つらいんだろうなと思う。

フロンターレからは今回の欧州遠征に川島とケンゴが行ってたんだけど、15日のJリーグ大分戦にもフル出場してたみたいですごいなと思う。だけど、この後がさらに大変だ。19日にイランでACLセパハン戦を戦ってきて、すぐまた日本に戻ってきて23日に柏レイソルとのリーグ戦がある。実は日本から西方面に行くときの時差ボケというのはあまりきつくない(理由はよく分からないんだけど)。だからセパハンではいい戦いをしてきてくれるだろう。だが日本に戻ってきての柏戦は、移動の疲れや、きつくなるであろう時差ボケなどを含めて、本当に厳しい戦いとなるはずだ。

僕の経験からアドバイスできることはといえば、とにかく眠ること。移動中には寝られないというデリケートなタイプの選手もいるかもしれないが、それではこのタイトなスケジュールは乗り越えられないだろう。それから食事や水といった生活の基本的なところでも相当なストレスがかかるだろうが、力を最大限に出すためにはそこもクリアしなければならないところだ。これが掲載された直後の柏レイソル戦が、時差ボケも含めて一番コンディション的につらい戦いになるはずであるが、ぜひともチーム全体で力を合わせて乗り越えてくれることを期待したい。

2007年11月20日

臥薪嘗胆

11月3日、国立競技場。傾きかけた陽の光の差し込むピッチで、スタンドで、流した涙を忘れてはいけない…。

2007年Jリーグナビスコカップ決勝は、スタンドでもちろんフロンターレを応援しながら観戦していました。ですが、これを読んでいる皆さんもご承知のように、0-1でガンバ大阪に破れ、2000年に続いて2度目の準優勝ということになりました。

選手たちもクラブスタッフも、そしてサポーターも熱い気持ちでこの決勝に臨んでいました。ACL、リーグ戦とタイトルの可能性を失ってしまった中で、なんとしても初タイトルを川崎に、等々力に、持ち帰りたかったと思います。ですが、その強い気持ちがほんの少し裏目に出てしまっていたのかなと、スタンドで見る私の目には映っていました。

やはり決勝という舞台の持つ特別な雰囲気なのでしょうか。どこかいつものフロンターレらしくないな、と感じていた人は決して僕だけではなかったのではないでしょうか。もちろん、序盤の猛攻の中で1点でも取れていれば、まったく違った展開になっていたでしょうし、その1点がいつものフロンターレらしさを引き出してくれていたことでしょう。ですが、これが一発勝負の怖さであり、決勝戦の怖さでもあるのです。

僕も現役時代、多くのタイトルを獲らせてもらいました。プロとしては8つの勲章を獲得しました。ですが、決勝まで行きながら敗れ去ってしまったことも、もちろんありました。1997年Jリーグチャンピオンシップ、1999年ナビスコカップ、2003年ナビスコカップと、いずれも決勝という舞台で敗れてしまっています。特に1999年のときは、ロスタイムまでリードしておきながら、柏レイソルDF渡辺毅に劇的な同点弾を決められ、PKにまでもつれ込んだ末、敗れてしまいました。勝利が掌から零れ落ちるとは、まさにこのことです。このゲームのことは今でも強く印象に残っているゲームでもあります。それこそ優勝したときと同じぐらい、いやそれ以上に強い思い入れがあるゲームとなったわけです。

きっとこの前の決勝での敗戦は、選手たちの心に強く残ることでしょう。もちろんサポーターの心にも。ですが、この悔しさを忘れないということが、一番大事なのです。「臥薪嘗胆」という言葉をご存知ですか?中国の故事から生まれた言葉ですが、敗れた悔しさを、薪の上で寝て痛い思いをしたり、苦い肝を嘗めることで忘れないようにしたという故事から、敵を討とうとして苦労し、努力することや、目的を達するため苦労を重ねることを意味しています。
「臥薪嘗胆」
今のフロンターレに関わる全ての人びとにとって、決して忘れてはならない言葉だと思うのです。

僕が2004年1月にフロンターレのクラブハウスに入ったとき、ミーティングルームに張ってあった、この「臥薪嘗胆」の張り紙に釘付けとされました。「Mind1」という言葉を生み出した2003年の「勝点1の悔しさ」を忘れないという意味で、武田社長がシーズンインの挨拶に贈ってくれた言葉でした。

でもこの言葉は僕にとって初めてではありませんでした。実は高校選手権を夢見ていた清水東高時代、この言葉は僕と常に一緒にあった言葉でした。選手権もインターハイも県予選決勝、それも延長まで行って敗れる(それもいつも清水商業に)という悔しさを、何度も味わっていたのです。そうしたこともあって、僕のサッカー部の合言葉は「臥薪嘗胆」でした。まあできすぎた話ですが、3年最後の選手権では県予選を突破して出場したのですから、この「悔しさの持続」のエネルギーは身を持って体験したことでもありました。そうしたこともあってこの言葉は、僕の心にスーッと染み入ってきたのです。

そう考えてみると2004年は、チーム全体、サポーターも含めたクラブ全体がこの「悔しさの持続」を成し遂げたからこそ、ぶっちぎりでのJ2優勝、そしてJ1復帰があったのだと思います。僕自身は2003年の悔しさを経験していなかったのですが、選手たち、そしてサポーターから「決して同じ轍を踏まない」という強い思いを感じていたのを覚えています。

もう、ナビスコ決勝は終わりました。決してその結果を取り替えることはできません。次に進んでいくしかないのです。この「臥薪嘗胆=悔しさの持続」をどれだけできるかにかかっているのだと思います。あの傾いた陽の差す国立のピッチから表彰式を見る悔しさを、決して忘れてはなりません。
その思いを具現化すべく、フロンターレは素晴らしいリスタートを切りました。直後の水曜に行われたセレッソ大阪との天皇杯4回戦は3−0の圧勝でした。選手たちは、あの悔しさを晴らす場を、心底求めている証だと思います。

「2007年11月3日を忘れない」
再度、決勝の舞台に立ち、あの表彰台の上で優勝カップを掲げる日が来るまで…。

2008年01月21日

シーズンオフの過ごし方

新年明けましておめでとうございます。本年も、フロンターレともどもよろしくお願いいたします。

年末年始と各クラブ、各選手の移籍などを含めたストーブリーグの情報が新聞紙上をにぎわせていたJリーグでしたが、そうした動きもそろそろ落ち着き、心新たに新しいシーズンに向けてスタートを切ろうとしているところかと思います。フロンターレも18日に新体制発表会もあって、いよいよ2008シーズンスタートというところですよね。

さて、シーズンスタートに向けて選手たちは、オフをどのように過ごしているのでしょうか?このオフの過ごし方というものは、その後の1年を決めるといってもよいぐらい重要なものです。ですがその過ごし方はとても難しく、僕も現役時代にいろいろと試行錯誤したのですが、自分なりのスタイルを見つけられないまま引退となってしまったという、とても難しい課題でありました。

まず、Jリーガーのオフシーズンはあまり長くありません。昨季フロンターレは12月29日まで天皇杯を戦って、そこからおよそひと月後の1月31日にシーズンがスタートしますので、5週間ほどというかなり十分なオフをとれることになります。ですが通常はもう少し短いことが多く、過去の例や、他のクラブを見ても、1ヶ月弱の4週間ほどから、それよりもさらに短いこともありますし、今季のケンゴや川島のように代表選手などは、事前スタートということで3週間も与えられないなどということもおきます。移籍する選手などは、移籍先のクラブが天皇杯に早く負けていたりすると、20日ごろからスタートなんてこともありますよね。

それから、その期間は年末年始を挟んでいるので、挨拶周りなどの必要もあったりして、1週間から10日間は自由にならないと考えてよいでしょう。そう考えると、残りの期間をどう過ごすのか重要になるのですが、やりたいこと、やらなければならないことに対して時間が短くて、あっという間に過ぎてしまうというのが、実際ではないかと思います。ですから、ある程度計画的に何をするかを決めていくことが重要になってきます。

短いオフとはいえ、ある程度のまとまった時間を使えるのはこの時期だけですから、海外短期留学(練習参加を含む)や、異業種の方や他競技の選手との交流などの時間に当てて、普段とは違った刺激を受けることで、新シーズンへのエネルギーにするということもあります。キャリアサポートセンターの提供するインターンシップなども、大きな刺激になりますよね。また指導者講習会などもこの時期に組まれていますので、指導の勉強をしている選手もいます。

もちろん、バカンスなどを含めたリフレッシュも、激戦を一年間戦い抜いた選手にとって重要なことです。まさにそうした「オン」と「オフ」の切り替えは重要で、新しく迎える長く厳しいシーズンを乗り越えるだけのエネルギーを蓄えなければなりません。

こうしたこと以上に重要かつ、難しいのがコンディショニングとなります。先にも書いたように身体を休ませることの重要性とともに、シーズンインに向けて身体を動かしていくことが必要なのです。そして選手によっては、「肉体改造」のような、新しい取り組みにチャレンジしていく場合もあります。こうした、オフでありながらもシーズンのことを意識して過ごさなければならないというのが、プロ選手のオフシーズンではないのかなと思います。

昨季のフロンターレは、Jリーグ34試合、ナビスコカップ5試合、天皇杯4試合、ACL8試合と、計51の公式戦を1年間で戦い抜きました。オフを除いた44週間でこれだけのゲームをこなしたのですから、相当なダメージが残っているはずです。この疲れ、ダメージを、休むことによって取り去っていくのですが、ただベタッと休むことだけでは取れなかったり、いいスタートが切れないことが多いのです。こうした傾向は年齢を重ねていくと特に顕著になってくるのではないかと僕の経験では思います。若かった頃はそれこそ何の自主トレもしないままシーズンインしても、キャンプなどを余裕でこなせたものでしたが、年齢が上がるごとに身体作りに時間がかかるようになっていったのでした。ですが、そうしたことに気づくのに時間がかかって、休みすぎてしまったなんていうこともあったり、逆に張り切りすぎてオフから追い込みすぎて、シーズン中息切れしたりなどということもあったり、「休み」と「トレーニング」をどう取り入れていくのかは、本当に難しかったのを覚えています。ですが、このオフシーズンで一番大切なことは、心のリフレッシュになると思います。毎年毎年、どんな選手もいいシーズンにしたいと思ってスタートするわけですが、思ったようなシーズンにならないことのほうが多いわけです。そうした中、新たな決意を持ってシーズンを迎えること、そして一年間戦い抜く気力を取り戻しておくことは、本当に大切なことです。だからこそ多くの選手が刺激を受けるために、オフにいろんなことをするわけですしね。

ぜひとも31日には、08シーズンフロンターレのメンバー全員が、元気なやる気に満ちた顔でシーズンインをしてもらいたいですね。そのエネルギーこそが、初タイトル獲得への原動力になるのではないかと思います。

2008年03月10日

タイトルへのこだわり

いよいよ2008年Jリーグが開幕しました。

(10日付掲載ですが)この稿を書いているのは5日ですから9日の東京ヴェルディとの開幕戦の結果はわかっていませんが、きっと勝利で素晴らしいスタートを切ってくれていると思います。
今シーズンのフロンターレは、何といってもタイトル獲得が至上命題といっていいでしょう。5シーズン目を迎える関塚監督の下、ここまで積み上げてきた多くのものを、ぜひとも初タイトルに昇華させてもらいたいと思います。

ご存知のように、このタイトルを獲るということは決して簡単なことではありません。タイトルを獲るためには、選手層を含めた戦力から、監督、コーチをはじめとするスタッフの力、選手たちが力を発揮するためのメディカルスタッフなど、多くの力が必要になります。もちろん、サポーターの力も非常に重要です。それにフロントの力も必要ですね。これらに加えて、選手をサポートする家族の支えなども大きな力になるでしょうし、チームの勢いみたいなものや、時には運を味方につけることも必要なときもあるでしょう。

このようにタイトルというのは、いろいろな力を集めることで手に入れることができるわけですが、僕が一番大事だと思っていることが一つあります。それは、“タイトルへのこだわり”です。
幸運なことに、僕自身、現役時代には多くのタイトルを獲ることができました。そのすべてのタイトルは鹿島アントラーズで獲ったものでしたが、そこには理由があったと思います。選手も揃っている。サポーター、フロントの力も集結していた。といったことだけでなく、とにかく負けず嫌いが揃っていたというのが大きかったのではないでしょうか。

ご存知の方も多いかと思いますが、とにかくジーコは負けず嫌いです。まあジーコに限らず、ブラジル人の負けず嫌いは強烈です。試合前日のミニゲームですら真剣になりますから、チームメイトに怒鳴りつけるのは日常茶飯事で、同じチームになったらリラックスどころではないですよね。フロンターレでもジュニーニョとアウグストが、ミニゲームが終わってから言い争いをしているなんてことがよくありました。まあジャンケンで負けるのも嫌というようなことも聞いたことがあるぐらいですから、その度合は想像できますよね。そんな彼らの“タイトルへのこだわり”、“勝利へのこだわり”は、本当に強いわけです。

98年のリーグ序盤から中盤戦のことだったと思います。後半30分ぐらいで1点リードされていたゲームがありました。そんな状況で僕のミスからピンチを招いてしまったのですが、ジョルジーニョが身体を張って救ってくれました。そのとき彼は僕に近づいてきて、「俺たちはチャンピオンになるんだぞ!しっかりしろ!」と僕に怒鳴ったのです。ポルトガル語ですから細かくはわからなかったのですが、「絶対に負けてはいけないんだ。優勝するには今日勝たなければいけないんだ」というようなことですね。タイトルの行方なんてまだ見えてないような時期だったので、「こんな時期からタイトルを意識しているんだ」と思ったとともに、「負けていい試合なんて一つもないんだ」と強く思ったのでした。実際にアントラーズでは、こうしたブラジル人たちの“タイトルへのこだわり”に、日本人選手たちが感化されたのは間違いありませんでした。

こうした“タイトルへのこだわり”は、負けず嫌いの延長線上でつながっています。特にリーグ戦では1つ1つの積み重ねですし、目の前の戦いに勝つことでしか、優勝は近づいてきません。言い換えれば目の前の1勝にこだわることが“タイトルへのこだわり”となるわけです。

今季フロンターレは、タイトルを“獲り”に行きます。これはリーグ戦であれ、カップ戦であれ、一戦必勝の思いで試合に臨んでいくことだと思います。戴冠することを信じて、すでに9日の開幕からその思いをぶつけているはずです。そしてこれは、選手たちだけに限ったことではありません。サポーターも同じはずです。待っていてもタイトルはやってきません。今年こそ、みんなでタイトルを獲りに行きましょう!

2008年05月10日

関さんの植え付けたスピリット

ゴールデンウィークも過ぎ、今日(5月10日)は前半戦最大の山場ともいえる浦和レッズとの一戦。この原稿を書いている時点(5月6日現在)では、その結果を知る由もありませんが、果たしてどのような結果となっているでしょうか。

この試合を迎えるにあたって我らがフロンターレは、4連勝と好調を維持し暫定ながら3位という位置まで順位を上げてきました。タイトル奪取を意識してスタートした今季でしたが、フッキの退団騒動などもある中スタートダッシュにつまづき、さらには関塚隆前監督が体調不良により高畠努新監督と交代するという大アクシデントがありました。そうした状況において今のフロンターレは、選手、スタッフ、そしてサポーターすべてが一致団結した強さを見せてくれています。

そこで今回は、関さんの話を書かせてもらおうと思います。すでに一度、僕自身のオフィシャルサイトでも触れさせてもらったのですが、『OB'sコラム』の順番がこの時期に回ってきたということもあって、話をさせてもらいたいと思います。

関さんと僕がアントラーズで、長い間コーチ・選手の間柄であったことはご存知の方も多いことかと思いますが、実は学生時代すでに監督・選手という関係でありました。僕が早大2年生の時(91年)に初めて関さんと出会っていたのです。そして04年には、関さんにフロンターレに連れてきてもらい、翌05年に引退したわけですから、僕の現役生活のほとんどの時間を、関さんとピッチに立っていたわけですね。
ですから関さんとはよかったことも悔しかったことも、いろんなことを経験してきたわけですが、その中でも03年末にフロンターレに来るときに関さんから話してもらったことを書きたいと思います。

そのとき、フロンターレを一緒に昇格させようという話をいただいていたのですが、その中で関さんがしてくれた「組織作り」という話がとても印象的でした。関さんは一年でのJ1昇格にこだわっていましたし、そこからのJ1での戦いも見据えたチームを作りたいという話もしていたのですが、この「組織作り」という言葉で表されていたものは、もし自分(関さん)がいなくなったときにチームの方向性が無くなってしまうことは避けたいということでした。それはすなわち、フロンターレにチームカラーを定着させる仕事をしたいということだったと思います。

現場での話とすれば、サッカーの方向性を共有するということが挙げられます。関さんは「ベクトルを合わせる」という言葉をよく使いますが、これは、例えば「この状況ではカウンターだ」とか、「この展開ではサイドチェンジだ」というようなことを、11人全員が同じように感じるということです。それがないと、「速攻だ」と思った瞬間にバックパスが入ってしまったりということが起きるわけで、こうしたプレーの意図を合わせることはとても大切なのです。またベクトルを合わせておくことによって、誰が出場してもチーム力にバラツキが無いようにすることも可能になります。そうして作り上げた安定した組織力の上に、個の力が最大限発揮されると関さんは考えているはずです。

また組織力をつけていきたいと考えていたのは、選手たちだけにはとどまりませんでした。僕が加入した04シーズン当初、関さんが自分自身でスカウティングビデオの編集をしていましたが、05年には高畠コーチ(当時、現監督)が、07年からは今野コーチが担当しています。このスカウティングビデオとは、自分たちの試合の反省や次の対戦相手の分析するために使いますが、90分の試合をおおよそ10分から20分ほどにまとめて編集してあります。このとき重要なのが、どのプレーを問題にして指摘するのかということですが、その作業を任せるということは、監督とその編集担当者との間でサッカー観の共有が必要になりますよね。こうすることによって、関さんはコーチングスタッフと関さんの頭の中にあるサッカーを共有してきたわけです。
ですが、そうしたサッカー観の共有というもの以上に重要なのは、継承されるようなスピリットを植え付けることなのかもしれません。サッカーに真摯に打ち込み、勝利を貪欲に追及する。目の前の試合を全力で勝ちに行く。ピッチに立っている11人だけでなく全選手で戦うといったこともそうですね。こうした「フロンターレ=戦う集団」というスピリットを、関さんは植え付けてきたのではないでしょうか。

こうして考えてみると、フロンターレがここまで積み上げてきた方向性を失わずに今後も進んでいけるのかどうかこそが、監督・関塚隆の真の成果として問われることになると思います。もちろんそれは高畠新監督が色を付けることを否定するものではありません。共有してきたベクトルに高畠新監督の新しい方向性を加味していくことで、さらにチームは飛躍していくことでしょう。高畠新監督にバトンが渡ってから4連勝と、一気に上昇気流に乗ったフロンターレですが、今後もフロンターレらしい戦いを続けていってもらいたいと思います。

最後になりましたが、関さんにはまずゆっくりと休んでいただきたいと思います。その上でリフレッシュしてパワーアップした関さんが、いつかまた等々力でタイトルにチャレンジする日を待っています。

2008年07月20日

ベンチから見えるチーム力

先週(14日)のことになりますが、谷口(タニ)が北京オリンピック代表に選出されました。フロンターレでずっと結果を残しながらも、なかなかオリンピック代表ではチャンスをもらえない時期が続いていたのですが、選考レース終盤に来て一気に北京行きの切符をつかんでくれました。フロンターレにとって、これは本当にうれしいことですし、タニが北京で大暴れする姿を皆さんも期待しちゃいますよね。

僕も今回のオリンピックには、プレスとして現地へ行くことになっていますので、プレスとしてだけでなく、みんなを代表して応援してくることになります。そうした中で、自分のよく知っている選手がいるかどうかでだいぶ気分が違ってくるので、本当にタニが選ばれてくれて良かったです。もちろんタニがいると気軽に話しかけたりもできるだろうし、そういう面でも助かりますね。

タニも含めて反町ジャパンには大いに期待しているのですが、オリンピックという世界大会を迎えるにあたって、僕はサッカーの内容云々でなく、チームとして戦う姿を見せて欲しいと思っています。これはすなわち、どれだけチームとしてまとまるかということであり、いかに同じ目標を共有できるかということになるかと思います。

日本を代表してオリンピックに出場している選手たちが、まとまって戦えないはずがないと考える方も多いかと思いますが、現実には非常に難しいことなのです。思い返してもらえば、06年ドイツワールドカップでの日本代表にまとまりが無かったと感じた方も多かったでしょう。オリンピックにしても過去出場した大会では、そうした傾向が多分にあったと思います。僕自身の経験でも、フランスでの本大会は、その苦しみに苦しみ抜いた予選と比べると、そうしたチームのまとまりは落ちてしまっていたように感じました。

これには、チームとしての目標が個人の目標と一致するかどうかが大きく影響しているのではないかと思います。今回のオリンピック代表は、北京への切符をかなり苦しみながら獲得しました。なかなかチームのまとまりが感じられなかった予選序盤と比べると、サウジアラビアとの予選最終戦の戦いぶりは非常にたくましく、チームとしてまとまってきたなという印象がありました。これは、「どうしても予選を突破する」「北京に行きたい」という思いを、すべての代表選手が持っていたからこそで、チームも個人も「予選突破」が最大の目標になっていたわけです。

ですが、予選を突破して世界大会の本大会へと進むと、チームの目標が設定しづらくなります。実際に、もし監督が目標を「優勝だ」と提示しても選手は「現実的じゃないよ」と感じる可能性が高いし、グループリーグ突破という話になれば目標が小さい気がするしとなるわけです。それに加えて、選手にとって世界大会は、個人のアピールの場という意識も見られるでしょうから、チームとしてのベクトルを合わせるのが本当に難しいのです。

ただチームがまとまっていると言っても、何をもってまとまっているというのか、具体的にはわかりづらいことが多いかと思います。実際には、ピッチの中で声がよく出ていたり、ミスに対してのカバーが早かったりということに差が表れますし、基本的にはルーズボールへの反応が早い、攻守の切り替えが早いチームには、僕はチームとしてのまとまりがあると思っています。

ですが一番わかりやすいのは、実はベンチです。特に得点後のベンチの様子を見れば、チームの状態はよくわかります。先月行われたユーロ(欧州選手権)でも、優勝したスペインはもちろんのこと、ロシアやトルコなど躍進した国の得点後のベンチの喜びはすごかったですよね。過去の大きな大会でもダークホース的に躍進したチームには、必ずそういう姿が見られたと思います。

今回の北京では、日本は簡単ではないグループに入りました。ここから勝ち抜いていくには、チームが本当の意味でまとまって一枚岩になることです。ぜひタニのゴールでベンチが狂喜乱舞する姿を見たいし、たとえタニがピッチに立っていなくてもベンチで狂喜乱舞して欲しいですね。

2008年09月20日

「指摘」される幸せ

いよいよ2010年ワールドカップアジア最終予選が始まりました。日本代表はバーレーンとのアウェイでの初戦で貴重な勝ち点3をもぎ取ってきてくれましたね。楽勝ムードが一転、終了間際に1点差にまで詰め寄られる厳しい試合でしたが、ケンゴの3点目がモノをいって勝利をつかみ、今後に向けてよいスタートが切れたと思います。

このゲームのために中断していたJリーグも、先週末に再開。われらがフロンターレはアントラーズとの"SOMAダービー(?)"でしたが、アウェイで先制されながらもドローに持ち込み、念願のタイトルに向けていいリスタートを切ってくれました。もちろん勝ちたかったのは当然ですが、5位までのポイントが非常に詰まっている今年のJリーグでは、この上位グループから引き離されないことがとても大事。残り10試合という段階では、どのライバルたちも上に抜け出すことよりも下に落ちないことを優先しているはずで、周りが1つでも沈んでいくのを我慢強く待っているわけです。

残り5節を切る11月に入る頃あたりまで、優勝争いのグループ内、それも1勝(3ポイント)差以内のところにつけていられれば、タイトルの可能性は一気に高まります。そのポジションにつけておくためにも、今は辛抱強くポイントを重ねていかなければなりません。みなさんも本当の優勝争いを楽しむためにも、この時期のフロンターレを辛抱強くサポートしてもらいたいと思います。

さて、日本代表、フロンターレはそれぞれ佳境へと突入しているわけですが、僕自身は8月末から新しいチャレンジを始めました。それは公認S級コーチ養成講座の受講です。通称S級と呼ばれる公認S級ライセンスは、Jリーグ(プロチーム)監督になれる資格で、現在僕はその講座を受講しています。今年のコースは全24名の受講生がいますが、その顔ぶれは様々。勝矢さん、澤登さん、秋田さんといった日本代表経験者から、元Jリーガーや、長年育成に携わってきた指導者など、経歴も現在指導しているカテゴリーも違う人たちが集まっています。
この原稿を書いている時点で、S級講習が始まってから3週間が経っていますが、いろいろな講義や実践が行われてきました。コミュニケーションスキルやディベートの講義・実践といった普通ではなかなか経験できないことを勉強したり、指導実践でもレベルの高い要求をされるなど、濃密な3週間があっという間に過ぎてしまった気がします。
その中で、最もいい経験をしているなと感じることは、他人から「指摘」されるということです。特に指導実践などでは本当に「指摘」されます。インストラクターからはもちろんのこと、選手役としてプレーしている受講生からもいろんな問題点、疑問点、課題などが「指摘」されるのです。僕自身もまあいい大人ですから、この歳になって他人から怒られたり、指摘されたりということはあまり多くありません。ましてやサッカーのことになると周りが遠慮してしまうのか、「指摘」されることは滅多にありません。ですが、ここではバシバシと「指摘」されるのです。
僕にとってこれは、本当に新鮮な感覚なのです。時には「イラッ」と思うこともあるのですが(反省...)、指導者としては僕よりも経験のある人たちからいろんな意見、指摘をされるのですから、こんなに貴重なことはありませんよね。視点が変われば見方が変わるのは当然ですから、自分では考えもしなかったような言葉をもらったときには、「今、すごくいい勉強してるな」と素直に思えます。それから反対に、自分の意見も遠慮せずに言うこともできるようになってきたなとも感じます。歳をとるにしたがって、遠慮したりして意見を控えることが最近多かったのですが、ここではそんなことは通用しません。伝えてぶつかって新しいモノを生み出す。勇気を持って意見をぶつけることがお互いのためになるわけです。今回のグループでは最年少の僕ですが、以前よりも思い切って発言するようにしています。ここでは"Open Mind"という合言葉で意見をぶつけ合ってますが、こういう姿勢でいろんな話をぶつけ合って新しいモノを作り出していくことは、本来どんなところでもどんなことでも大切なことだと思います。それに気づいただけでもこのS級に参加したかいがありますし、これがあと2ヵ月半続く中で新しいモノ(サッカー観、サッカー哲学、指導哲学などなど)を自分の中に作り出せるのか、自分でも非常に楽しみでもあります。

そうそう、そのS級が終わる頃にはJリーグも最終節を迎えますね。僕が新しいモノをつかんで、フロンターレも初めてのモノ(もちろんリーグタイトル!)をつかむ。そうなっていることを願っています!

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