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フロンターレOBが熱く語り下ろし!OB'sコラム

川崎フロンターレ主催のサッカースクール

コーチのお仕事

2006年06月29日(木)

裸足のまんまで

text by 麻生校スクールマスター 菅原秀介  

担当している下野毛スクール4年生(金曜日)クラスのひとコマから。

「今日は暖かいね。最高の天気だ。みんなどうする?」「やりたーい!やりたーい!」「よし!わかった。やるか!」その瞬間、子供たちはスパイクを脱ぎ、そして靴下を脱ぎ始める。もちろん私も。裸足のサッカーの始まりだ。
足の裏から伝わるムズムズとした柔らかくくすぐられているかのような感覚。人工芝ではあるが、その感触が実になんとも言えない。芝生の一本一本まで感じられる。「気持ちぃぃぃぃ」「なんか・・・変」「・・・ムフッ」この瞬間の子供の表情を写真で収めておけば良かったと後悔している。なんとも良い表情だった。

もちろん芝生の感覚だけではない。ボールの形や大きさそして柔らかさを改めて感じることが出来る。「ボールって本当に丸いんだ」今まで意識することも無かった当たり前の事が、素足の天然スパイクから体中に強烈な信号を送ってくる。そしてそれは、短時間でプレーに現れてくる。
足の何処にボールを当て、ボールの何処を蹴れば「痛くなく、遠くに蹴れ、そしてコントロール出来るのか」。今までキックをするたびに両手で足を押さえていた子供たちが、自然と感覚を掴み、スパイクと変わりなくプレーを行えるようになってくる。いや、逆にスパイクを履いているよりも良くなっているかもしれない。ボールの捉え所がより正確に確実なものになったのだ。「コーチ、俺ここで蹴ってるみたい」満足げに自分のミートポイントをご披露。指差したそこは赤く色付いている。何処で蹴っていたのかを自分の目で知れるのも、とても貴重な体験だ。
「コーチ、真っ黒だよ!」「うわぁ!」一人の一声で足の裏の変わりようにみんなが驚く。「頼むから、このまま自分の家に入らないでね。」「コーチがお母さんたちに怒られそうだ。」5本の指一本一本まで真っ黒。しっかりと芝生を噛んで走り回っていた証拠だ。
再びスパイクを履いた子供たちの反応がこれまた良い。「なんかパワーアップしたみたいだよ。」戦闘服を身に付けた十戦士のような気分なのであろう。スパイクという最強アイテムを手にした彼らのプレーに期待が走る。さあ試合開始だ!
「いいぞ!素晴しいプレーだ!」「グッドプレー!」コーチは忍耐と辛抱が必要。そして自信を植え付けさせる事も。長い目で見守らなくては・・・。

「ねぇコーチ!今日暖かいよ!」翌週のスクールでの最初の一声。グランドの横で真新しいスパイクたちが、俺の出番はいつなのかと楽しそうな子供たちのサッカーをまた寂しげに観戦していた。

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