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ピックアッププレイヤー 2022-vol.05 〜GK1 チョン ソンリョン選手

人は、いくつになってもチャレンジし、成長できる。

人は、いくつになってもチャレンジし、成長できる。

テキスト/隠岐 麻里奈 写真:大堀 優(オフィシャル)text by Oki Marina photo by Ohori Suguru (Official)

チョン ソンリョンは、2016年に来日し、フロンターレで今季7年目を迎え、J1リーグで通算200試合を先日達成した。

経験豊富なGKとしてフロンターレに加入し、GKとして長年ゴールを守り、チームの守備意識を高めることに貢献してきたとともに、ピッチ外ではチームメイトを食事に連れていってくれる、兄貴分として支えてくれる存在だ。

そんな彼の選手としての特筆すべきことのひとつに、ベテランと呼ばれる年齢になっても年々、チャレンジを続け新しいことに適応し、進化を遂げていることだろう。

ソンリョンのサッカーへの取り組み方や考え方、変化に柔軟に対応してきた、その進化の理由を知りたいと思う。

自分がやるべきことに向き合う


 チョン ソンリョンは、大韓民国の城南市出身で、小学生時代は、フィールドプレイヤーとしてDFをやりながら、同時にテコンドーもやっていた。

 GKを始めたのは、中学2年の時。まるでストライカーがゴールを決めて気持ちがいいなと感じるように、ボールを止めることが楽しく感じられ、自然とGKの楽しさを覚えていった。不思議と、至近距離から打たれるシュートにも恐怖心がなく「向いているかもしれない」という気持ちがあったのだという。

 ソンリョンは、高校1年の時に父親を仕事中の不慮の事故で突然亡くしている。そのことは、家族のために自分が必死で頑張る、という責任感を若き日のソンリョンに与える最大の理由となった。高校時代、ジャンプ力が足りないと感じたソンリョンは、毎晩欠かさず半年にわたって、ジャンプの練習をし続けた。たとえしんどい日があっても、やらないという選択肢は彼にはなく、自分ができる範囲の気力でやることを課した。その後、つらいことがあったときには、その当時を思い出すことで自らを奮い立たせてきた。

 そういえば、以前にソンリョンがこんな話をしていたことがある。

「GKは現代サッカーにとって重要なポジションです。GKの活躍次第で、勝点が0から1になったり、勝点が3になることもあると言えると思います。そういう重要なポジションだと自分で理解して、プライドを持って取り組むことが大事だと思います。
とはいえ、長いシーズン中には、いい時ばかりではなく、よくない時期や調子が悪い時も必ずあります。しかし、私が大事だと思っていることは、悪い時に引きずらないことです。失敗したり、悪いことがある時にその日は落ち込んだり悔しかったりイライラすることもあるでしょう。でも、次の日には『大丈夫』とポジティブな気持ちで、いい準備をする前向きな気持ちになることが大切です。私は、どうしてもキツイときは家族のことを考えるとエネルギーが出てきます。人それぞれだとは思いますが、周囲の人たちのことを考えて、パワーに変えるということを私はしています」

 自分が自分をマイナスに引きずってしまいそうな時、現状維持の日があったとしても、マイナスに向かわないことが大事だ。たとえ悪いときも、悪いなりにそのなかでできることを見つける。大事なことは引きずらないことだというソンリョンの考え方に少し触れられた気がした。

GK1 チョン ソンリョン選手 GK1 チョン ソンリョン選手

チャレンジを続け、進化すること

 ソンリョンには、いつも心に留めていることがあるという。

「自分に足りないことはないか、と常に考えて行動すること。そして“安住の地はない”ということを心に留めています」

 つまり、チームが優勝という結果を残しても、試合に自分が出続けていても、それが当たり前のことだと思わないということなのだろう。

 さらにソンリョンは、経験を積み重ねていく過程においても、同時に「初心を忘れない」ということを大事にしており、それは、話のなかに繰り返し出てくる。それもまた、彼が成長を止めない理由でもあるだろう。

「最初にフロンターレに来た時から続けていることは、周りから見習うべきことを吸収し、監督、コーチ、チームメイトと一緒にやりながら、様々なことを学んできました。私は常に自分に足りないことを考えて、足りないところは成長していくということを続けています」

 当たり前のことだが、「今」がこの先の人生で一番若く、歳を重ねていく自分を知っていくことは誰もが初めての経験となる。サッカー選手にとっても、ベテランと呼ばれるようになり、若い頃とは違う体の変化を感じたり、一方で経験を得て、プレーの選択肢が増えたり、調整能力が高まっていくということもあるはずだ。若い時とは違う取り組み方や考え方を身につけたり、プレーを続けるために変化を受け入れたり、新しいチャレンジが必要となることもまたあるだろう。

 ソンリョンにとっては、鬼木監督の言葉が大きな刺激と転機になったという。

「鬼木監督が、歳を重ねても常に成長してトライ、チャレンジしていこうと言ってくれることが、僕にいい影響を与えてくれています。個人的にも、その言葉はすごく正しいなと思いましたし、グラウンドのなかで、常に成長して、トライできるようにしていこう、と思えばそれが実際に行動に出ると思います。それは、自分の中の礎のようなものになりましたし、今後も忘れられないぐらいに自分にとっても柱となっています。そして、チームが毎年優勝できるように、大きなチャレンジをしているわけですが、そのために最善を尽くそうとしています」

 

「チャレンジ」ということで思い起こされるのは、2020年にフロンターレは4-3-3にシステム変更し、それによってDFラインがハイラインになることで、GKとしての役割も増えることになった。そのシーズンでフロンターレは名古屋の「28」に続いて2番目に少ない「31」失点で優勝を飾っており、ソンリョンも2018年に続いて2度目のベストイレブンを受賞するなど文字通り守護神として優勝に貢献している。

「GKとして戦術的に役割が増えました。ビルドアップやDFの後ろのスペースをケアすること。監督、コーチングスタッフから方向性を示されてキャンプから取り組んできましたが、戦術面では攻撃への切り替えの早さはストロングポイントだと思うので、GKとしてもそういうことを意識するようになりました」

 もちろん1対1の場面の強さや安定感、最後の砦としてゴールマウスを絶対に守るという基本姿勢を貫いた上で、鬼木監督から言われたチャレンジする姿勢、チーム戦術の変化に伴うGKとしての適応など、常に前向きな姿勢でソンリョンは取り組んできた。鬼木監督もまた、ソンリョンのそうした姿勢について「安心感や人間性はもちろん、いろんなことにチャレンジし、守備範囲が実際広くなったり、何歳になっても伸びて成長をし続ける姿は、いろんな選手たちに見てほしい」と語っている。

 その期待や要求に呼応するように、2022シーズンの今もソンリョンはさらにトライを続けている。

「今年でいえば、パスをちょっと早めに出して次につなげるため判断を早くするということを意識してやっています。例えばバックパスをもらってもすぐ隣とか横につけるのではなく、素早く展開をする。相手チームも前からプレッシングに来ることも増えているので、短いパスも長いパスもそうするように今年はとくに意識しています」

ルーティン

 コロナ禍が長く続く状況のなかで、とくに2021シーズン以降はACLの一極集中開催により、隔離期間が長く続き、さらには過密日程も加わり、体力的にも精神面でも疲れが増すなかでの戦いをフロンターレは強いられていた。そういう緊張感が続く状況のときに、過ごし方をどう工夫してるのだろうか。

「もう慣れましたし、ポジティブに捉えるようにしています。よく食べて、よく消化して、よく休んで。Netflixを観たり、お茶タイムでリラックスしたりしています。最近では、コーヒーにもはまってアマゾンで人気のコーヒーを買ったりもしましたね」

 確かに、隔離期間の話を聞くときでも疲れた様子はみせず、むしろリラックスして時間を楽しむようにしているようだ。

「慣れているからかもしれません。小学校中学校のときも、城南の自宅に帰れるのは週に1回ということもよくありましたし、高校時代は済州島にある遠い学校だったので、帰宅できるのは1年に1回でした。いまも、韓国に帰国するときの隔離期間もあるので、そういうなかでリラックスして過ごすことは心掛けています」

 また、ソンリョンは、いいものを取り入れて自分のルーティンにすることも積極的に取り入れている。

「例えば食事などは、試合の3日前はお肉中心にして、前日は魚を食べるようにしています。食べる量でコンディションを整えるようにしていて、それは二十歳ぐらいの時から実践していることです。3日前は多め、2日前は普通の量を食べて、試合当日は少な目にしています。午後や夜の試合だったら、お昼は少な目にして、試合が終わってからしっかり食べます。あとは、夕方17時以降の試合の日は、日中にジョギングをして体調を整えるようにしています。最近、トレーナーの方に、麺類の方がエネルギーになりやすいという話を聞いたので、炭水化物を摂る時にうどんとかパスタとかを食べるようになりました」

 他にも体のケアにも入念に気を遣っていて、日々のケアも怠らない。

「練習後のケアのときには、専用の気に入っている枕を持って来て、それで受けています。そうするとリラックスして眠れるんですよ」

 その他にも疲れたら自宅で入浴剤を入れて半身浴をしたり、寝る前にリラックスできるお茶を飲んだり、ヒーリング音楽を聴いて入眠しやすくしたり、いろいろなことを取り入れている。

「何がなんでも疲労回復をする、ということが大事なので」とソンリョンは、微笑んだ。

 篠田フィジカルコーチとコミュニケーションをとるなかで、ソンリョンが新たな試みとして試合3日前にコンディショニング調整を目的にトレーニングを始めたのは、2019年シーズン中のことだ。この年は、新井章太(現=千葉)がシーズン終盤に試合に出て、ソンリョンが控えに回ることもあったシーズンだった。

「年齢も重ねてきて、補強やケガ予防の目的もあり、ソンリョンと話し合っていくなかで、やってみましょうとトレーニングを始めました。いわゆるウエイトなど重いものをあげる若手が取り組んでいるトレーニングではなく、刺激を入れながら動作も同時に行うようなもので、全身運動、俊敏性などを意識してやっています。それがソンリョンには合っていたようで、僕がいないときでも、『やっておきますね』と、自主的に取り組んでくれています」

 フィジカルコーチの篠田から見た、ソンリョンの身体能力などは、どのようにうつっているだろうか。

「韓国の選手は、子どもの頃から走り込みをすごくしているし、足腰がしっかりしていて、ソンリョンも重心がどっしりしています。体が大きいけれど、俊敏性があって、さらに日本人選手にはないパワーがある。だから、縦方向の動きもそうですが、横の動きも届かなさそうなところまで届く。それは背が高いからではなく、パワーなんだろうと思います。あとは、メンタルの変化が少なくコントロールができているし、好不調の波が少ない選手ですね」

盟友が語る「ソンさんを助けたい」

 2016年にソンリョンがフロンターレに加入して以来、谷口彰悟は、チームメイトとして、さらに“守備”を担うパートナーとしてお互いに最も多くの試合に一緒に出場してきたコンビだ。

 谷口にとって、ソンリョンはどんな存在なのだろうか。加入してからのソンリョンの変化や、互いにチームを“守る”仲間として感じていること、ソンリョンに対する思いなど、谷口はどんなことを考え、感じているだろうか──。

「最初にソンさんがフロンターレに入ってきたときに思ったことは、シンプルにすごく大きいな、ということでした。この人、“壁”みたいだなって。どしっと構えていて、最後の最後で身体を張ってくれる守護神という印象でした。あとは、フロンターレは攻撃が目立っていましたが、ソンさんは簡単に失点しないことに強いこだわりがあったので、守備や失点に対する意識を変えていこうという部分を植え付けてくれたところがあると思います。

 ソンさんは、僕らに対してあまり細かい要求は多くはなくて、むしろ僕らのやりたいようにやらせてくれて、最後どっしりと後ろで構えていてくれる感じです。相手の特徴を踏まえて、このスペースだけはケアをしてほしいということは言われますが、そんなに多くありません。その分、前で未然に防がないといけないなという気持ちにさせられますね。

 GKとして、一番思う特徴は、“圧”です。ソンさんがちょっと出てくると相手選手にプレッシャーがかかるし、大きいし強いのでコースが見つけられないぐらいの圧力があるんです。それで相手選手が一瞬、判断を迷ったり、時間を使ってしまったりするのを、DFとして対応していて感じることがあります。それによって、コースがずれたり体が逃げたり、ソンさんが触ることができたりする。それでも相手が突っ込んでいけたとしたら、その対応はソンさんは強いですからね。とにかく、迫力がすごい。僕もシュート練習をすることがありますけど、入る気がしません。すごいな、それも取れるのか、と。本当にどしっと構えているけど、いざとなると俊敏。それに驚かされます」

 2020年以降、システム変更に伴いGKやDFのプレースタイルも変化が求められたが、それについてはどんなことを感じただろうか。

「システムが変わりコンパクトになったことでラインが高くなり、空いた裏のスペースを狙ってくるチームも増えたので、GKが飛び出す場面が増え、監督からの要求もあり、それに対応するため守備範囲が広くなっていきました。
ソンさんは、元々はどちらかというとどしっと最後まで動かないタイプの選手でしたが、やりながら積極的にトライしていて、飛び出してくれて助かる場面も何度もありました。GKが前に出てくることで助かることがある一方で、ソンさんが出てこないことで助かることもあります。
例えばソンさんが動かないことで、最後までDFが抵抗できることもあるし、体を投げ出して防げるシーンもあります。とくに、GKが前に出てくる場合、衝突のリスクもあるし、恐さもあるので、スライディングするのが難しい場面もあります。最後までソンさんが動かないことでのソンさんの良さも活かしたいし、僕らDF陣は機動力が良さでもあるので、そういう意味ではちょうどいいバランスでできている、いい関係なんじゃないかと思います。これは、前に来てくれたら助かるな。この場面は待っていてほしいな。そういうことをお互いに感じながら徐々にやってきました」

 一方ソンリョンも谷口のことをこんな風に語っていた。

「毎年、安定感が増して、守備の選手ですが攻撃の起点になっている。ショウゴは、キャプテンにもなって、チームにとって大きな力になっています。日本代表にも呼ばれていますし、ショウゴはまだまだこれからも成長していくと思います。キャプテンとして声を出している部分もそうですが、プレーについても予測をして、危ないところにパッといけるプレーも増えて、そういう危機管理についての反応がすごくよくなったと思います」

 一緒に試合に出続けることで得られるコンビネーションの質の高さもそうだが、勝負に直結する、それも得点ではなく「失点」を防ぐことを担っている選手同士として、他の人とはまた違った感情や共感するものがあるのだろう。

「僕も失点をしたくない気持ちが当然強い。ソンさんもそう。ふたりともに最後までやらせないという気持ちでこれまでやってきました。
ソンさんと一緒に長くやってきて、年齢を重ねてベテランと言われるようになっても、年々、進化しているのを感じます。そういう姿を見てきたので、『ソンさんを助けたい。最後まで抵抗しなきゃいけない』。そう思わせてくれる存在です。どれだけピンチになろうと、最後GKとしてソンさんが体を張ってくれるからこそ、僕らもプレーができている。だから出来る限りの抵抗をしていかないといけないし、1対1を作られようが、どんなにピンチになろうが、抵抗したり、全力で戻ってこなきゃいけない。少しでも相手を止めたり、時間を作ったり、ソンさんの間合いにもっていけるように心がける。
もちろんこれまでいろんな悔しい失点をしてきましたけど、お互いに次は絶対そういう失点をしないという想いでやってきました。守備のポジションは、失点が試合結果につながることもあるし、ミスをしてもやっていかないといけない。反省は必要ですが、弱気ではいけない。考えすぎるのもよくない。そうやっていくなかで、僕自身もひとりの選手としても、ひとりの人間としても強くなってきた実感はあります。ミスをしてもそれを改善してやっていく。そういうことを積み重ねてお互いに高めあいながらやってきたんだな、と思います。守備の選手の宿命だし、そういう気持ちがないとできない。それが成長や責任感になるのかなと思います」

何が、何でも

 ソンリョンは、どんなときでも「安住の地ではない」という危機意識を持って日々を過ごしている、と語っていた。試合に臨む心構えについてはこんなことを話してくれた。

「まず無失点で試合を終えよう。次の試合も絶対に無失点で終えよう。そういう気持ちでやっています。もちろん失点することもありますが、練習のときから絶対に同じシチュエーションでは失点しないようにしようという気持ちで臨んでいます。その強い気持ちを持って続けているだけだと思います。
監督、コーチが求めているものに対して、もちろん選手が100%応えられるのがベストですけど、それに近いぐらいの意識をもって、グラウンドで出し切れるようにやっています。本当に最後の砦なので、どうやってでもチームの力にならないといけないですから。もともとGKとしてそうあるべきというものはありますが、それとチームが求めているプレーというものがあるので、それを自分のなかでリンクさせるというか、消化させるようなことを試合前にして臨んでいます」

 ソンリョンは、試合前のバスのなかで、決まってイメージトレーニングをしている。例えば、こういうボールがきたらこうしよう、とか、前の試合で失点をしていた場合は、練習とその失点シーンをかけあわせて、次に同じ場面になったら、こうしようなど練習のイメージとこれからくる試合とを重ね合わせるように場面を頭のなかでイメージしていくのだという。

「同じ失点をしないように」という話も繰り返しソンリョンが口にする言葉だ。

「例えばクロスが簡単に上がってしまったとしたら、もうちょっと前に行こうとか、ちょっと寄せようとかミドルシュートを打たれてしまった場面があったら、もうちょっと寄せようとか自分自身のプレーもそうですし、連携の面などでもチームメイトと話をしたりしています」

 2021年、フロンターレは2連覇で4度目の優勝を飾り、失点は「28」と最少だった。2022シーズンも、5月22日のサガン鳥栖戦にて5試合連続無失点とクラブ記録を更新した。

フロンターレと共に

 今年加入7年目となるソンリョンは、外国籍としてフロンターレに在籍する選手として、ジュニーニョ(2003年~2011年在籍)の9年に次いで、2番目に長くなった。ソンリョン自身にとっても、浦項スティーラース、水原三星ブルーウィングスに、ともに5年間在籍していたことがあるが、単独チームで最長のシーズンを過ごしていることになる。ソンリョンにとって、“フロンターレ”はどんなクラブになっているだろうか?

「家族みたいな気持ちです。それは最初から今までずっとそうです。サポーターと一緒にイベントをやったり、楽しいこともたくさん経験させてもらいました。個人的にも成長できましたし、まだまだ勉強していけることもたくさんあります。このクラブに呼んでいただいたことを、感謝しています」

 “家族のような”フロンターレの好きなところを聞くと、しばらくの間、考えを巡らせてからソンリョンは、落ち着いたいつもの口調で話し始めた。

「サポーターの方たちが、どんなに悪天候でも、勝っても負けても拍手を送ってくれる。待っていてくれる。本当に素晴らしいと思います。そういうことがあるから、みんなで成長できるチームとしてビッグクラブになったと思います」

 2017年の初優勝。そこから5年間で4回のリーグ優勝を一緒に経験してきた。リーグ戦で200試合を迎えた長い積み重ねの中において最も印象深いのは、フロンターレにとって初めてとなるリーグ優勝を決めた2017年12月2日の等々力での試合だ。

「何よりチームにとっての初優勝であり、私にとっても日本に来て初めての優勝でした。
2017年は、簡単に優勝できたわけではありませんでした。鹿島が最終節に勝っていたら優勝できなかったし、最後に逆転しての優勝でした。ケンゴさんも泣いていましたし、その姿を見て、私自身にとっても、本当に感動した出来事でした。監督、スタッフ、選手全員がひとつになり、もちろんサポーターの存在もそうです。それまで優勝できるだけの力もあるチームでしたけど、まだそれを叶えることができずにいて、2017年に強い思いが重なり合って、優勝することができました。その経験が次の優勝につながり、さらに次の優勝につながってきていると感じます。
 優勝するために必要なことなどの感覚を掴み、力がついたと思います。監督が求めていることを元々いる選手も新しく加入する選手も理解して、ピッチで力を発揮できるようみんなで最善を尽くしてきました。それをやっていくうちに毎年、いい結果が生まれていると感じます。また、それだけでなく、川崎市の皆さん、サポーター、スポンサー、様々な人たちの協力や応援があるからこそ、選手たちの力になり、それがひとつの大きなものになって、いい結果が生まれていると思います」

 2022シーズンも、タイトル獲得をめざし、日々トレーニングに取り組んでいる。

「そのために、ケガなく、チームのために身を捧げて、チームのためになれる選手になりたい。それだけです。言葉はいらないです。選手はグラウンドでみせるだけです。それもひとつの言葉です」

 そうキッパリとした口調で告げた。

 今年は新たにGKコーチとして高桑大二朗氏が加わり、丹野、安藤、早坂とともに充実したトレーニングを送っている。

「コロナの影響もまだ続いているなか、新しい選手も加入して、そのなかでみんながいい準備をしてグラウンドの中で100%の力を出し切ってやれています。GKチームとしても、楽しい雰囲気のなかで、新しいメニューにも取り組みながら、全員で最善を尽くしてトレーニングをしています」

 現在、37歳のソンリョンだが、この先、どのような未来像を描いているだろうか。

「10年ぐらい前までは漠然と40歳まではやりたいなと思っていました」

 その考えは現在ではどのような変化があっただろうか?

「今は、やれるところまでやりたいと思っています。そのためには努力もしなければいけないし、コンディション管理もしなければいけないので、いつまで、というのは決めていないです。周りの引退した人たちに話を聞いても、やれるならずっとやり続けたほうがいいという話を聞くことがあります。長くやっているベテラン選手の姿もみてきたので、やれるところまで自分もGKとして選手を続けたいと思います」

 そこまで話してから、柔らかい表情を浮かべて、最後にこんな話をしてくれた。

「子どもたちもサッカーをやっているのですが、本当に個人的な話ですけど……、いつの日にか、大きくなった子どもたちと対戦相手としてプレーしてみたいです」

 2022年5月25日(水)J1第15節vs湘南ベルマーレ戦で、ソンリョンのJ1リーグ通算200試合を記念して、サプライズ演出があった。

 3人の子どもたちから「パパ、200試合おめでとう」とメッセージのプレゼントが贈られ、旗手怜央(現セルティック)から花束贈呈。スタジアムは、温かい拍手に包まれた。

 ソンリョンは初心を忘れず、フロンターレの勝利を貪欲に求めながら、チャレンジを続けていく。

今日までも、これからも──。

profile
[ちょん・そんりょん]

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恵まれたフィジカルと鋭い反応、そして長年のキャリアで培ってきた経験を生かし、ビッグセーブでチームを救う守護神。韓国代表として多くの国際大会に出場し、2016年よりフロンターレに加入。Jリーグでプレーするようになってからビルドアップやロングフィードの精度、相手のカウンターに対する判断力も大きく向上した。来日7年目となる今シーズン。現役選手最年長となるが、まだまだ進化は止まらない。

1985年1月4日、大韓民国 城南市生まれニックネーム:ソンリョン

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