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ピックアッププレイヤー〜DF5/谷口 彰悟選手

アップデート ver.2021

アップデート ver.2021

構成/麻生広郷 写真:大堀 優(オフィシャル)edited by Aso Hirosato photo by Ohori Suguru (Official)

2020年からキャプテンとしてチーム全体をまとめ、最終ラインの要として安定したパフォーマンスを見せた。
さまざまな角度からチームを支え、自分自身もさらなる成長を目指す。谷口彰悟の2021年は、
ひとつの転換期を迎えるチームの新しいリーダー像を確立させるシーズンになるかもしれない。

信じてやり続けることの強さ

「チームとしてリーグ優勝を目標に掲げていたので、それを達成できたのは素直に嬉しいですし、評価していいものだと思います。とくに今年はいろいろなことがあって、ただ優勝だけを目指して戦うというシーズンではなかったので」

 2020年は新型コロナウイルスの驚異にさらされ、世界中が苦しんだ1年だった。東京五輪が2021年に延期され、スポーツ界も大打撃を受けた。Jリーグは開幕してすぐに中断期間に入り、7月に再開してから過密日程の約半年間で勝負を決めるレギュレーション、例年とはまた違った壁を乗り越えなければいけない難しさがあった。

「再開初戦は無観客試合でしたし普段のシーズンと大きく違っていたので、チームとしてぶれてしまう要素はたくさんあったと思うんです。そういったピッチ外のことに左右されず、目の前の1試合を大事にしながら勝点を積み上げての優勝なので、いろいろな面で強くなれた1年でした」

 2020年シーズンからキャプテンを務めることになった。1次キャンプが終わり正式にキャプテンに任命された当初は「正直なところ、実際にやってみないとどんな感じになるかわからないんですよね」と話していたが、2次キャンプに入りチームとして新しいシステムに取り組むなかで、キャプテンとしての自分と一選手としての自分との折り合いのつけ方で難しさを感じたという。

「一番はチームと自分自身とのバランスの取り方ですね。チームとして進化していくために新しいシステムにチャレンジして、やるサッカーも少し変わってきました。そこでチームの方向性や選手の空気感を見つつ、自分自身もその輪に入っていかなければならない難しさがあったというか。いろいろなことを考えなければいけない立場だったので」

 期待と不安が入り混じったなかでのシーズン開幕。公式戦初戦のルヴァンカップ清水戦は5-1で快勝したが、リーグ開幕戦の鳥栖戦では得点を奪えず引き分けに終わった。ウイングを置く新フォーメーションの爆発力を示す一方で、相手に守備を固められたときのフィニッシュの精度やアイディアという点で課題を抱えているように見えた。

「はたから見れば立ち位置が変わっただけなんですが、やっている選手からしたらかなり大きな変化でした。最初はみんな戸惑う部分もあったでしょうけど、何かを変えるときに問題が発生するのは当たり前だと思います。ただ4-3-3のフォーメーションではじめて紅白戦をやったときに次から次へと人があふれ出てきて『こっちもフリーだ、あっちもフリーだ』という感覚で、後ろの選手としてはものすごく嫌な攻撃だったんです。これはうまくいくようになったら相当迫力が出るな、絶対点を取れるなって感じました。みんなどこかで不安があったかもしれないですけど、それ以上に希望があったんですよね。だからこそ自分たちの力を信じて、やり続けることができたんだと思います」

 その後、Jリーグは長い中断期間に入る。とくに緊急事態宣言が出てからは、サッカーどころではない状況になってしまった。ただ、外出を自粛しなければならない生活、サッカーができない期間は、谷口にとっては一度立ち止まってじっくり考える時間になった。

「サッカーができないのはすごく辛かったですが、とにかく考える時間があったので頭のなかを整理することができました。まず谷口彰悟個人を主観的に見る視点と客観的に見る視点があって、そこにキャプテン谷口彰悟の立場でチームを見る視点、それからキャプテン谷口彰悟を含めたチーム全体を見る視点が増えた気がします。いろいろな角度からチームや自分自身のことを考える時間になりました。そこからJリーグ再開のめどが立って練習も再開して、みんなサッカーができる喜びがあったし、もう一度やろうっていう意欲に満ちあふれていたと思います。Jリーグが再開するまでの約1ヶ月でチームコンセプトを再確認して、ハードなトレーニングをして体もいちから作り直して、練習試合もやりながら共通認識を深めていきました。今思えば、あの期間はすごく貴重な時間だったと思います」

DF5/谷口彰悟選手 DF5/谷口彰悟選手

さまざまな角度からチームを見る

 チームは再開後から10連勝。連勝がストップしてからさらに12連勝と、1シーズンのうちにJリーグの連勝記録を自分たちで塗り替えた。結果を出すことでチームはどんどん自信を深めていった。いつからか監督や選手の口から「勝ちながら成長しよう」という言葉が出てくるようになった。

「結局すべてはそこなんですよね。もちろん過程も大事ですし地道に作り上げる作業も大事ですが、それがプラスに働くかネガティブに向かうかの判断は結果でしか示せないので。試合で勝てば『これでいいんだ』って気持ちの面でもプラスに働いて、ポジティブに変化していけます。今年は勝ちながら成長するというのが、みんなの合言葉になりました。どんなゲームでもどんな相手でもまず勝つことが一番で、勝って修正していくサイクルを早い段階で作れたのが大きかったです」

 気づけば独走状態でリーグ首位をひた走り、最多勝点、最多得点、最大勝点差といった記録づくめの優勝だった。周りからはJ歴代最強チームという声も聞かれるようになった。だが「目の前の1試合に勝つためにやるべきことをやって、それが勝点につながって、もうこんなに連勝してるんだみたいな感覚でした」と谷口は話す。

「連勝記録を作って、さらに自分たちで塗り替えるって簡単にできることではないので、このチームを誇りに思います。でも実際は一戦一戦の積み重ねでしかなくて、2020年はずっと連戦でしたし、振り返るひまもなくあっという間に過ぎていったのが正直なところです。ただ、この経験はこの先にもつながるのは間違いないです。チームのベースになっているのは麻生グラウンドでの日々のトレーニングであって、試合に出る出ないに関わらず選手全員で勝つための準備を続けてきました。だから突き抜けるチームってこういうものなんだって、みんな肌で感じられたと思うんですよね。チームが強くなっていく変化をみんなで実感しながら取り組めた1年だったと思います」

自然に湧き出る感情を大事にする

 では、谷口自身に何か変化はあったのだろうか。

 キャプテンとして先頭に立つのはピッチだけではない。彼のコメントはチームを代表したコメントとして受け取られるし、普段の練習ではチーム全体の雰囲気、個々の様子を見て、必要であれば選手に声をかけたり監督やコーチと直接話をする。そういった役割を担うことで自分のなかで変化があったかどうかを聞いてみると「基本的なスタンスは変わらないです。周りからもそう思われてるんじゃないですかね」という答えが返ってきた。

「僕自身はいろいろ経験しながら考え方も少しずつ変わってきているとは思いますけど、こうあるべきだっていう固定概念は極力作らないようにしています。自然に湧いてくる感情や思いを大事にしていきたいなって」

 試合翌日のリカバリートレーニングを早めに切り上げたとき、谷口は他の選手たちが練習しているところを1人でじっと眺めていることがある。一体何を考えながら見ているのだろう。ふと気になった。

「もともと練習を見るのはけっこう好きなんですが、人を見ているんです。長い時間試合に出た選手は次の日リカバーですけど、出場時間が短かった選手は普通に練習をしているので、どんなテンションでやってるのかなって。あとは試合のメンバーに入っていなかった選手がどんな姿勢、どんな熱量で練習してるのかを見たり。だからどうこうというわけではないんですが、人の変化ってずっと見ているとわかるものなので。つねに選手のことを見ている監督はもっと細かくわかると思うんですが、僕が見ていてもあの選手調子よさそうだなとか感じることがあって、そういう選手が次の試合のメンバーに入ってきていいプレーをすると、やっぱり練習からしっかりやってるからだなと納得したり。そういうのって面白いなって思いながら見てます」

 いろいろ話を聞いていると、前キャプテンの小林悠が喜怒哀楽を表に出す直情型だとすれば、谷口は本人も話すように客観的な目線で物事を考える理性的なキャプテンのように思える。タイプ的には両極端だが、2人ともチーム内で一目置かれる存在であり、信頼の厚いリーダーであることは間違いない。

 そしてもう1人のリーダー、中村憲剛が現役引退を発表した。川崎のバンディエラと呼ばれた男がピッチにいない。キャプテンということに関係なく、谷口のチーム内での立ち位置も少しずつ変化していくだろう。

「そう思いますよ。でも、まだ想像できないんですよね。ただ、ケンゴさんの引退の話を聞いて、いろいろ考えました。自分にもいつかそういう日がくるし、あと何年サッカーができるんだろうとか。僕もキャリアが長くなってきて来年30歳になりますけど、身体的にまだまだできると思っていますし、もっと進化していきたいっていう気持ちも強いです。自分がイメージしていた30歳よりは頑張れている思いはあるんですけどね。でもケンゴさんは40歳までバリバリの戦力で、それって本当にすごいことだと思います。僕もそういう選手になりたいですし、なっていかなきゃって思っています」

自分なりのリーダー像を作り上げる

 2020年は圧倒的な成績を残してのリーグ優勝だった。となれば当然、連覇に期待がかかる。だが、そう簡単なことではない。2017年、2018年とリーグ連覇を達成しているが、順風満帆かといえばそうではなかった。どのチームもディフェンディングチャンピオンに対して、並々ならぬ覚悟を持って挑んでくるだろう。

「それぞれのチームが変化して、進化して、フロンターレ対策を練ってくるのは間違いないです。だからこのチームもつねに変化していかないと。継続することが現状維持になってしまったら、それは後退と同じだと僕は思っています。変化を恐れない先に進化があるというのは、2020年の結果でみんなわかったはずです。  このチームはまだ伸びしろがあると思っていますし、その一方で若い一面もあると思っています。2021年のレギュレーションがどうなるかわからないですが、うちのメンバーも変わりますし、またみんなで方向性を合わせていかないと。まだ横綱相撲ができるほどの強さはないですし、チャレンジャー精神で挑んできたからこそ結果を残すことができました。そこは忘れずに、自分たちがどうやって勝ってきたかを頭に入れて新しいシーズンに臨みたいです」

 フロンターレで8年目のシーズンを迎える。30歳といえば社会人ならばようやく仕事の要領をつかみ、自分自身の方向性が見えてくる年齢かもしれない。だが、サッカー選手は1年1年が勝負の年。「ここからどれだけ第一線でプレーできるかどうかの戦いになる」と気を引き締める。

 谷口がプロ入りした2014年は、中村憲剛は32歳になる年だった。「そう考えたらまだまだいけるのでは?」と聞くと、「いけるのかなぁ。ケンゴさんは特別ですからね」と笑いながら答えてくれた。

「もちろんそれぐらいの気概はありますよ。ユウさん(小林悠)やアキさん(家長昭博)も30歳を超えてからまたぐんと上がってMVPを受賞しましたし、まだまだ進化できるぞっていう姿勢や結果を見せてくれる先輩たちがチームにいるのは非常にありがたいです。僕自身、勉強することはまだまだあるし、下の選手たちからは『ショウゴさん、まだまだ全然できるな。俺も頑張ろう』って思ってもらえるような存在になりたいですよね。さっき変化を恐れないっていいましたけど、ケンゴさんが中心になって残してくれたものは受け継いでいくべき大事なものだと思っています」

 さまざまな角度から自分自身を見つめて可能性を探る。軸となる部分がぶれることはない。だが、さまざまな経験がプレーヤーとしての幅を広げ、人間としての深みとなり、どんどんアップデートしていく。いいものは継承しつつ、柔軟に構える。そんな谷口彰悟なりのリーダー像を作っていけばいいと思う。

「年齢や立場に関係なく自分自身も進化して、成長していきたいです。周りから見る谷口彰悟の印象を、いい意味で裏切りたい気持ちがあるので。これまでも自分はこういうプレーヤーだという決めつけず、壁を作らず、あれもできるんじゃないか、これもできるんじゃないかと欲張ってやってきました。その姿勢は続けていきたいと思います。キャプテンということで周りは型にはめたがるかもしれないですが、そこはうまいことやりながら(笑)。求められることはきっちりやっていけばいいですし、そのなかで自分は自分だという部分を大切にしていきたいです」

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[たにぐち・しょうご]

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周りを動かしながら最終ラインをコントロール。組織と個の力を融合させて対戦相手のエースを封じ込めるセンターバック。昨シーズンはジェジエウとのコンビでハイラインを保ち、前線からプレッシャーをかけて全体で連動するチームディフェンスの要となった。キャプテンとしての2年目のシーズン迎え、新チームリーダーとしての自覚と責任は日に日に強まっている。

1991年7月15日、熊本県熊本市生まれニックネーム:ショーゴ

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