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ピックアッププレイヤー 2023-vol.01 〜MF 脇坂泰斗選手

Vamos família

テキスト/高澤真輝(オフィシャルライター) 写真:大堀 優(オフィシャル)text by Takasawa Shinki (Official Writter) photo by Ohori Suguru (Official)

フロンターレにとって特別な背番号『14』。この番号を昨シーズンから背負って戦ったのが脇坂泰斗だ。様々な迷いや壁が立ちはだかったが、信頼している人からの言葉や自分が今まで積み上げてきたことを信じて次第に逞しく、強くなっていった。2023年はさらなる飛躍へ──。脇坂泰斗が高く飛ぶ。

 「14番ってカッコいいですよね(笑)。客観的に見てもフロンターレの14番は本当にカッコいいです。だからすごく不安になることもあるし、僕の中では1年間、よく持ち堪えたなって(笑)。昨年、何も結果を残せないこともあるかもしれなかったですし。それは14番が原因ではなくても全然あり得ること。これはケンゴさん(中村憲剛氏)とも『それが原因じゃなくても仮にヤストの調子が悪かったらそうなるよね』って話になって、僕も『そうなりますよね』って(笑)。調子が悪いと『重圧に負けて』とか言われることもあると思うんです。でも重圧は僕にしか分かりませんから」

 1月15日(土)2022年新体制会見inカルッツかわさき

「14番、脇坂泰斗!」

 そう新背番号の発表でアナウンスされたとき会場はドッと拍手が巻き起こった。14番は中西哲生氏、そしてフロンターレで数々の功績を残した中村憲剛氏が背負ってきた番号。脇坂にとっても自分のサッカーキャリアの中でも最も特別な背番号である。

「フロンターレと言えば14番のケンゴさん。アカデミーに入ってから試合を見る機会も増えると、自然とカッコいいなと憧れていました。阪南大学では監督がヨハン クライフが好きだということもあってエースナンバーが14。だから、その番号を付けたいと思って3年生のときに付けることができました。その頃からフロンターレに帰りたい気持ち、フロンターレの14番に対する憧れがありました。あれからプロに入ってからケンゴさんの背中を見て凄さを感じて、一緒にプレーすることで人間性やサッカー以外の貢献度も含めて、川崎フロンターレと言えば中村憲剛と言われる本当の意味を知ることができました。そこでより強い気持ちが芽生えたんです。“いつかこうなりたい”って」

 伝統の背番号であり、憧れの中村憲剛から背番号14を継承したのが脇坂泰斗だった。もちろん大きなプレッシャーや重圧もある。それならば現状維持でもいい、という考え方もできるだろう。だが、脇坂は違った。

「根本にあるのは自分が憧れていた選手が付けていた番号ですが、プロとしてやっていく中でどう成長していくのかというところで強いプレッシャーを経験することで、成功や失敗を経験することで成長していくものだと思います。そういった意味では大きなチャンスだなと思いました。自分が付けなかったら“誰が付けるんだ”と思ったし、自分しかいないと思っていました。この背番号を付けて成長したい。自分が14番に色を付けたい。色々な経験をしてみたい。同時に自分だけじゃなくクラブや色んな人の思いを背負ってプレーしたい」

 “現状維持は衰退”という言葉があるように、強い思いを胸に新たな挑戦への一歩を踏み出した。その当時のことを脇坂は振り返ると「14番を背負ってメディアの方々に注目をしてもらって、そこの気持ちの整理がその段階ではできていませんでした。背番号が決まっただけで実際に着てもいなかったのでフワフワしているような気持ちでキャンプに入ったのを覚えています」と話すように、脇坂が14番を継承するということで開幕前から各メディアからの大きな期待感が膨らんだ。

「わかっていたけど、それしか聞かれなかった(笑)。それだけ大きなことに挑戦するという強い意志もあったし、それだけのことに自分はチャレンジしていることも分かっていました。注目してもらうのはうれしいことだし、結果を残さないといけないと思っていました。生半可な気持ちで付けていません。その覚悟をもって、自分が成長したい、僕にしかできない経験をしたいと思って日々生活をしていました。今だから言えるけど、この1年間は僕にしかできない経験ができたと思います。それにもっともっと打ち勝っていくというか、結果で示していかないと」

MF/脇坂泰斗選手 MF/脇坂泰斗選手

 ただ、自分が高みを目指すための1年は順風満帆とはいかなかった。リーグ戦が開幕すると “14番”という数字が大きすぎるが故に自分らしさを見失ってしまうこともあり、思うようなプレーができず唇を噛んだ。そんな中で迎えたリーグ戦4試合目。3月2日(水)に行われた第10節の浦和戦の試合前に鬼木監督からいつもなら戦術的な指示をもらうが、この日は違った声をかけられた。

「今日はお前のプレーをやれ。お前はお前だぞ」(鬼木監督)

 この言葉にハッと気付かされた脇坂は自分らしいプレーで今季初アシストを記録。そしてACLグループステージ第4節のジョホール・ダルル・タクジム(JDT)戦前には中村憲剛氏から一通の連絡が届いた。

「2019年に俺が試合に出ていなかったときは、お前が結果を残していたから。その貪欲さは何歳になっても必要だよ。そうやってお前は試合に出てきた選手なんだから、自分でどんどんやっていけ。チームのことを考えるのも成長だし、変わらずやり続けたほうがいいけど、芯に持つべきものは自分が結果を残してやるという気持ち。それがあったから当時は俺が出番なかったときもあるんだよ」

 この日は、いつも以上に肩の力が抜けてJDT戦で鮮やかなFKを決めた。何度も何度も立ちふさがった壁。それは大きくて1人では到底乗り越えることはできなかっただろう。だが、鬼木監督や中村憲剛氏ら信頼している人たちの言葉の力が支えとなり、自分なりの14番像への答えを導き出していった。

「やっぱり自分が信頼している人たちに言われて気付かされるのは間違いなく多い。僕は人の意見を大事にしていますし、感謝しかありません」

 そう話す脇坂はシーズン中盤から終盤にかけて次第に調子を上げていく。冴えわたる緩急をつけるパスや味方とのコンビネーションからチャンスを次々と創出し、質の高いセットプレーも含めてリーグトップタイの9アシストとキャリアハイタイとなる5ゴールを記録。ピッチ上には14番を自分のものにした脇坂泰斗がいた。

「チームのことも自分のことで『こうしたらいいんじゃないか』『ああしたらいいんじゃないか』と考える回数がプロ入ってからダントツに多かったです。それがときには迷いにもつながることもありましたけど、チームのためにチームが悪いときでも自分のプレーを最優先することが大事だとシーズンを通して気づくことができました。そのことをわかってはいたけど、試合状況やチーム状況によってチームを優先しないといけないこともあります。自分が犠牲になってもチームのためにやらないといけないこともある。1番は自分自身が自分のプレーをすることをブラしてはいけないということに気づくことができました」

「それに、14番を付けてみてやっぱりスゴイなって改めて思いました。これはいいことでもあり、僕にとってはプレッシャーにもなりますけど、それが僕を刺激してくれてもっと高みへと思わせてくれる要因でもあります。そこの戦いを意識していましたし、番号に負けないということを常に意識してきました。それが色んな気負いになるのはあまりよくないので、自分のよさを出して自分というプレーヤーを表現する。サッカー以外なら脇坂泰斗というパーソナルな部分を知ってもらうことが大事だと、この1年間ですごく学んだところです。人から言われることも多かったですし、ケンゴさんやオニさんに言ってもらっている“自分らしく”が本当の意味でわかってきたという感じがしています」

 人は考え、自分にしかできない経験を積むことで成長して強くなっていく。脇坂にとって14番とは何なのか──。言葉を紡いだ。

「僕は14番を、いい意味で塗り替えていくよりは、自分は違う道を行く。自分という道の中に14番があるというイメージです。築き上げてきたテツオさん(中西哲生)やケンゴさん(中村憲剛)の幹の中に僕の14番が枝としてある。その枝が僕の人生の幹となるという感じです」

 この言葉から垣間見えるように、1年を通して様々な迷いもあったが、“自分なりの14番”の形を導き出したことで逞しく成長を遂げていった。

 また、よりパワーアップしたのはプレー面で言うとキックの質。見惚れてしまうほどに最高級なパスやクロスを配球していった。よくキックの調子がいいときに“フィーリングがいい”という言葉を使うことが多いが、脇坂は日々の努力、積み上げてきているものがピッチで体現されていると表現するのが正しいのだろう。

「よくフィーリングと言われますが、僕の中ではフィーリングというよりも日々のトレーニングから積み上げて自分の技術としてものになっているなと感じています。調子がいい悪いはあるけど、今日はキックの乗りが悪いなとか、少しイメージと違うなというのがあるけど、それ以前にずっと僕はトレーニングを積んできています。常に試合を想定して、状況を想定しながらトレーニングに励んでいます。それがゲームに出た試合が多かったです。日々のトレーニングがゲームに生きているということなので、自分のものになっているなと。自分が成長しているなと感じています。もちろんフィーリングがいいほうが確率は上がるけど、トレーニングでやっていることが生きているというのは、そこの成果をすごく感じています」

 1つのキックに対しての練習内容は緻密。パスを出す到達地点は1つだが、巻いて蹴るのか、ノーバウンドなのか、ワンバウンドで届けたほうがいいのか。また、スペースがない局面ではバウンドしてボールが伸びてしまうこともあるため、止まるバックスピンを加えるボールなど、試合状況に応じた多彩なパスをイメージしながらトレーニングを励んだ。それだけではなく、シュートからFKまでコツコツと努力を重ねることで脇坂という選手を作り上げきた。

「めっちゃ練習が好きなんです(笑)。ボールさえあればイメージがいくつでも浮かんでくる。それぐらいサッカーが好きなんです」

 昨シーズンの活躍や、14番を背負って自分らしさを表現することができたのは、もちろんメンタル的な強さが培われたことも大きいが、『上手くなりたい』『勝ちたい』と強い思いを胸にフロンターレで積み上げてきた1日1日があったからこそである。

 ただ、チームとしての昨シーズンを振り返るとリーグ戦、カップ戦とタイトルを獲得することができなかったのは悔しさが残る。

「タイトルにもっともっと貪欲にいかないといけない。リーグ戦はもちろん、トーナメントであっさり負けてしまうことがあったので、それをやっているようでは強いチームになれないと思います。よりタイトルへの執着心をもって、優勝を目指さないとそこに届かないと感じています。そこにまた今年もチャレンジすることができるとなるとすごく楽しみです。ACLも昨年と一昨年と違った方式での戦いになるので、そこも含めて楽しみという気持ちが強いです。昨年は悔しい思いをしたので、それをぶつけるだけかなと思います」

 また、逆転優勝まであと一歩届かず涙を呑んだ最終節のFC東京戦。あの日のピッチ、スタンドの光景を見て感じたことがある。

「最終戦が終わって、あの光景を見て来年(2023年)は笑って終わりたいと思いました。このチームならそれができるとも同時に感じました。だから絶対につかみとりたいです」

 昨年はタイトル奪還となるシーズンだ。次なる挑戦へ向けて、脇坂にとってはさらに思いを強くさせる。

「去年の終盤戦のような数字の残し方をシーズン通してやれるとチームとしての数字も上がってくる。それによって順位も上がってくるので大事にしたい。また、今シーズンが始まるとやってやるぞという気持ちが前に出すぎないように昨年の反省を生かしてやりたいです。僕にとってフロンターレは大好きだし唯一無二のクラブ。そんなフロンターレを語るうえで避けて通れないのが14番です。そこに自分も名を歴史に刻めるようにチャレンジしていきたいです」

 2023年もフロンターレの14番がチームを勝利へ導き、最高のプレーでスタジアムを沸かせてくれるだろう。そして、脇坂泰斗はサッカーを楽しみながら力強く高みへと飛ぶ。

profile
[わきざか・やすと]

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柔らかいボールタッチとトラップの技術を駆使して中盤で攻撃の起点となり、自らもゴールに向かいフィニッシュワークに絡むMF。2022シーズンより川崎フロンターレ・アカデミー時代から尊敬していたクラブのレジェンド、中村憲剛氏の背番号14をつけてプレーする。2021シーズン、2022シーズンと2年連続J1ベストイレブンにも選ばれ、川崎の14番の2年目に期待が高まる。

1995年6月11日、神奈川県横浜市生まれニックネーム:ヤスト

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